見出し画像

#263 「高嶺清掃事件」東京地裁

2010年7月7日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第263号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【高嶺清掃(以下、T社)事件・東京地裁判決】(2009年9月30日)

▽ <主な争点>
不採算を理由とする部門と解雇、雇止め等

1.事件の概要は?

本件は、T社とそれぞれ労働契約(以下「本件各契約」という)を締結し、不採算を理由に廃止された特定部門(公社部門)で労務を提供していたXらが、T社による解雇ないし雇止めが権利の濫用にあたり無効であると主張して、同社に対し、労働契約上の権利を有する地位の確認および賃金等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<T社、XおよびYについて>

★ T社は、一般および産業廃棄物収集運搬処理業等を営む会社で、その業務は平成20年2月時点では、(1)公社部門(財団法人東京都環境整備公社からの委託を受けたゴミの収集業務および清掃工場の水質検査のための検体収集業務)、(2)産廃部門(民間企業等の委託による産業廃棄物の回収、運搬業務および中間処理業務)、(3)局収部門(傭上部門。東京23区清掃協議会から委託を受けた一般廃棄物の回収車の運転業務)の3部門に分かれていた。

★ 同社の従業員数は、正社員34名(運転手他21名、事務職13名)、嘱託社員6名(運転手)、アルバイト社員43名(運転手22名、作業員20名、事務職1名)であり、その他に派遣社員29名(運転手19名、作業員10名)、労働者供給事業からの労働者5名(運転手)が稼働していた。そのうち、公社部門で稼働していたのは、正社員5名、アルバイト社員9名(Xらを含む)、派遣社員3名である。

★ Xは、平成10年5月、アルバイト社員としてT社に雇用され、以降、産廃部門で産業廃棄物の収集運搬業務に従事していたが、19年9月以降、公社部門の水質検査の検体回収業務に従事するようになった。

★ XとT社は、18年3月31日付で労働条件通知書(雇入通知書)と題する書面(以下「X通知書」という)を取り交わしたところ、同書面の契約期間として記載された「期間の定めなし」の記載には○印が付されており、「期間の定めあり(18年4月1日から19年3月31日)」には○印が付されていない。なお、同書面に記載されたXの従事すべき業務の内容は運転手である。

★ Yは、12年4月1日、アルバイト社員としてT社に雇用され、以降、公社部門の水質検査の検体回収部門に従事してきた。

★ YとT社は、18年3月31日付で労働条件通知書(雇入通知書)と題する書面(以下「Y通知書」という)を取り交わしたところ、同書面の契約期間として記載された「期間の定めなし」の記載には○印が付されており、「期間の定めあり(18年4月1日から19年3月31日)」には○印が付されていない。なお、同書面に記載されたYの従事すべき業務の内容は運転手である。

--------------------------------------------------------------------------

<Xらが解雇されるに至った経緯等について>

★ T社の公社部門については、平成10年頃以降、発注先の東京都の財政悪化から、報酬の値下げ等を余儀なくされる一方で、19年以降は燃料費の高騰によって経費が増大し、利益が減少するのみならず、損失を計上するに至っており、13年度に2億711万円であった売上げも降下の一途をたどり、19年度には1億2975万円程度まで減少していた。

▼ T社は20年2月末頃、同年3月末日をもって公社部門を廃止することを決め、同年3月15日以降、公社部門の従業員14名のみを対象に再就職の斡旋を行うとともに、アルバイト社員に対し、1.5ヵ月分の給与相当額の金員の支給を条件とする希望退職の募集を行ったところ、正社員2名とアルバイト社員のうちXらを除く7名がこれに応じて退職したが、T社は希望退職に応じなかった正社員3名の雇用を継続した。

▼ T社は同年2月28日、Xらに対し、公社部門を廃止することおよびXらの働きぶりが公社に評価されていることを告げて再就職の斡旋を提案し、同年3月5日には公社部門の正社員に対し、同月14日にはXらを含む公社部門のアルバイト社員に対し、同月17日には組合に対し、それぞれ公社部門の廃止を決めた経緯や希望退職を募ること等について説明した。

▼ T社は同年3月31日、Xらに対し、公社業務からの撤退に伴い、同日をもって公社部門の業務が終了するため、同日付でXらを解雇する旨および解雇予告手当を支払う旨が記載された解雇通知書を交付し、同年4月1日以降、XらをT社の業務に従事させていないが、Xらに対し、解雇予告手当相当分をそれぞれ支払った。
--------------------------------------------------------------------------

<T社の就業規則の定めについて>

★ T社の就業規則には、以下の定めがある。

第4条 従業員に準ずる者(臨時従業員、嘱託、顧問)に対してはこの規則の全部または一部を準用する。

ここから先は

2,973字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?