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#48 「カンタス航空事件」東京高裁(再掲)

2004年7月28日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第48号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【カンタス航空(以下、Q社)事件・東京高裁判決】(2001年6月27日)

▽ <主な争点>
有期雇用契約更新者(客室乗務員)の雇止め

1.事件の概要は?

本件は、客室乗務員で雇用契約期間一年としてQ社に雇用され、毎年更新が繰り返されてきたSおよびKらが同社の雇用期間満了を理由とする雇い止めは無効であるとして、労働契約上の地位の確認ならびに未払い賃金の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Q社について>

★ Q社はオーストラリアに本店を置く国際航空運送業等を営む外国株式会社であり、日本支社を有している。

★ Q社が客室乗務員として雇用している日本人には、オーストラリア本社で管理されている者(以下、「豪州ベース客室乗務員」という)と日本支社で管理されている者(以下、「日本ベース客室乗務員」という)がある。

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<SおよびKらの雇用契約をめぐる状況等について>

★ 昭和62年頃から日本路線に対する乗客の需要が急増したため、Q社では日本ベース客室乗務員の増員を検討したが、正社員の客室乗務員を直ちに増員することは労働組合との関係で困難であった。そこで、同社は日本ベース客室乗務員を正社員ではなく、一定の期間を契約期間と定めた契約社員として配置することにした。

[以前に豪州ベースでの勤務経験のなかったSら6名について]
★ 日本ベース客室乗務員のうち、以前に豪州ベースでの勤務経験がなかったSら6名の雇用契約をめぐる状況は、次の通りである。

(1)Sらは、62年8月に行われた面接試験を受けた上で、Q社に雇用された。
(2)Sらは、上記面接の際に、同社の面接担当者から「豪州ベースに配属される者は正社員であるが、日本ベースは契約社員で5年の期間の定めのある雇用契約である」旨の説明を受けていた。
(3)Sらは当初、期間5年として、その後は契約期間を1年として平成8年まで毎年更新することを合意して雇用された。

▼ SらがQ社の人事・総務部長であったHに対し、このまま日本ベースで勤務を続けた場合、5年後にはどうなるかと質問したところ、同部長は「日本人客室乗務員の重要性と日本ベースの必要性は確固たるものであり、雇用に関しては何の心配も要らない。5年の契約満了時には正社員になれるであろう」と答えた。

[以前に豪州ベースでの勤務経験があったKら5名について]
★ 日本ベース客室乗務員のうち、以前に豪州ベースでの勤務経験があったKら5名の雇用契約をめぐる状況は、次の通りである。

(1)Kらは、63年から平成元年にかけて豪州ベース客室乗務員として、Q社に雇用された。
(2)Kらは平成3年9月から4年1月にかけて、Q社に対し、豪州ベースから日本ベースの客室乗務員に移ることを申し込み、同社との話し合いの結果、順次日本ベースに移った。
(3)Kらは、日本ベースに移った際に契約期間1年として、平成8年まで毎年更新することを合意して雇用された。

★ Q社からSらに対して交付された契約書は、必ずしも期間満了時にその都度直ちに交付されていたものではなく、10日から2週間も遅れて交付されたものもあり、また契約書の作成日自体が契約期間の始期より遅い場合もあった。

★ SらがQ社から8年11月に交付された契約書には9年11月20日をもって期間が満了すると明記されていた。

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<本件雇止め、第一審の判決等について>

▼ Q社は9年7月10日付けで、Sらを含む23名に対し、「契約客室乗務員の新労働条件について」と題する書面を配布したが、Sらはこれに応募しなかった。この書面には、次のような記載があった。

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