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#581 「F-LINE事件」東京地裁(再掲)

2023年2月8日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第581号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【F-LINE(以下、F社)事件・東京地裁判決】(2021年2月17日)

▽ <主な争点>
営業所内トラブルを契機とした配転命令の拒否を理由とする懲戒解雇など

1.事件の概要は?

本件は、F社に雇用されていたXが2019年1月1日付配転命令(本件配転命令)および同年3月1日付懲戒解雇の意思表示(本件解雇)は無効であると主張して、同社に対し、(1)労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づく賃金請求として、(2)本件配転命令後の2019年1月分・2月分の賃金および本件解雇後の3月・4月分の賃金として、181万9460円および遅延損害金、ならびに(3)同年5月分以降の賃金として毎月25日かぎり45万4865円および遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<F社およびXについて>

★ F社は、貨物自動車運送事業、倉庫事業等を業とする会社である。同社は2018年4月に甲社ほか5社を吸収合併し、さらに2019年4月に複数の会社を統合した上で、現在の商号に変更した。

★ Xは、2011年12月に甲社の契約社員として雇用された後、2015年6月に同社の正社員として採用され、合併によりF社の正社員となった者である。


<本件配転命令、本件解雇、懲戒理由等について>

★ F社の乙営業所においては味液輸送業務と食油輸送業務が行われており、味液輸送業務は同社の従業員のほか協力会社の従業員が運転士として稼働していた。

▼ Xは乙営業所において乗務員として勤務していたところ、F社はXに対し、2019年1月1日付で丙営業所への異動を命じた(以下「本件配転命令」という)。なお、Xは初出勤日であった同月9日以降、一度も丙営業所に出勤しなかった。

▼ F社は同年2月28日、Xに対し、即時解雇通知書を送付して、3月1日付で懲戒解雇する旨の意思表示をするとともに、解雇予告手当を支払った(以下「本件解雇」という)。

★ F社が本件解雇に関する懲戒理由としたのは、次の3点である。

(1)Xは2017年4月に協力会社Aの乗務員Bに対する不適切な言動を理由に譴責処分(以下「本件譴責処分」という)を受けたが、その後も言動を改めず、F社の配車担当者Cに配車に関する不満を述べる際にCを睨みつけながら怒鳴るなどの言動を繰り返した(以下「懲戒理由1」という)。
(2)XはBに対し、2017年4月以降も無視する、聞こえよがしに批判する発言をする、複数回の嫌がらせを行って業務遂行に支障を生じさせ、A社からF社に対し、Bの体調が悪化しているとしてクレームが申し入れられるという事態を招いた(以下「懲戒理由2」という)。
(3)F社はXに対し、本件配転命令を出したが、Xはこれにしたがわない姿勢を示し、上記異動を内示した支店長らに対し「あんたをつぶす」などと発言した上、2019年1月9日以降、正当な理由なく会社を欠勤し始め、同日のF社からの電話に出て「納得できないので業務命令にしたがわない」と述べた以降は会社からの電話にも出なくなり、2ヵ月近くにわたって無断欠勤の状況が継続した(以下「懲戒理由3」という)。

3.元社員Xの主な言い分は?

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