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#192 「青葉運輸事件」東京地裁

2007年10月3日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第192号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【青葉運輸(以下、A社)事件・東京地裁判決】(2007年3月13日)

▽ <主な争点>
採用時に期待した事務処理能力を有していなかったことを理由とする解雇

1.事件の概要は?

本件は、採用に際し期待した事務処理能力を有していなかったことを理由に、A社を解雇されたXが当該解雇は無効であるとして、同社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、賃金の支払いおよび不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<A社およびXについて>

★ A社は、貨物自動車運送事業等を業とする会社である。

★ Xは成18年2月、A社から以下の約定で期間の定めなく(同年4月末日までは試用期間)、雇用された。
(1)職務内容  船橋営業所での事務
(2)賃  金  月額25万円(試用期間中は月額23万円)
(3)支払時期  月末締め、月末払い

★ Xは船橋営業所(従業員数約44名)の事務が繁多となったため、事務を専門的に担当するただ一人の従業員として雇用され、A社は採用にあたって、配送員が作成した運転日報に基づき、パソコンから出力した配送記録表に各車の出庫時間等を記入したり、積載重量表、給油記録表、ハイウェイカード管理表などをパソコンで作成したりする作業を担当させる予定であった。

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<本件解雇に至った経緯>

▼ 採用後間もなく、Xにはパソコンを活用する技術がないことが判明したため、A社は差し当たり、当初予定していた作業については他の従業員が行うこととし、Xは入社から約2ヵ月経過した頃から、パソコンで積載重量表や給油記録表を作成する作業をはじめた。

▼ 18年5月26日、A社はXに対し、同月31日付で本採用にしない(留保解約権を行使する)旨通知し(以下「本件留保解約権の行使」という)、同日以降、Xの就労を拒否している。なお、A社は第三回弁論準備手続期日で、本件留保解約権行使の主張を撤回した。

▼ 同年6月5日、Xは東京地方裁判所において、A社に対し、本件留保解約権行使の無効を理由として、雇用契約上の地位保全と賃金等の仮払いを求める仮処分を申し立てた。

▼ 同年8月15日、同裁判所はA社に対し、18年8月から19年7月まで、毎月23万円の仮払いを命ずる仮処分決定をした。

▼ 同月31日、A社はXに対し、同日付で解雇する旨通知した(以下「本件解雇」という)。

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