#102「大和銀行事件」大阪地裁
2005年9月7日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第102号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【大和銀行(以下、D社)事件・大阪地裁判決】(2000年5月12日)
▽ <主な争点>
会社の承諾を要件とした早期転職支援制度の適用の有無等
1.事件の概要は?
本件は、XがD社に対し、同社を退職するに際し申し込んだ早期転職支援制度の適用を求め、同制度による割増退職金等を請求し、またD社が不当にその割増退職金等相当額を利得したとして、その返還を請求したもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<D社の早期転職支援制度について>
★ 8年5月、D社は人員削減、人件費削減を行い、同社の業務の円滑な遂行・発展を図るとともに転職や独立を希望する従業員への支援を図るべく、早期転職支援制度を設けることになった。
★ 10年9月、D社は「早期転職支援制度(ニューライフプラン支援制度、以下「本制度」という)第3回募集について」と題する下記内容の通達を全店に配布した。
(1)対象者 10年9月30日現在、勤務15年以上かつ満40歳以上の総合職職員
(2)募集期間 10年10月1日~11年1月29日
(3)支援内容
(a)ニューライフプラン支援金 定例給与の18ヵ月分
(b)フレッシュアップ準備金 定例給与の3ヵ月分
(c)キャリア開発準備金 20万円
★ 本制度の規定には、以下のような内容の定めがあった。
・4条2項 「D社は、・・・対象者の転職予定先あるいは銀行の業務の諸事情等を勘案して、本制度の利用を承諾するか否かを決定する」
・4条3項 「D社の承諾の是非が決定される以前であれば、部長宛に書面にて申し出ることにより、撤回することができる」
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<XがD社を退職するまでの経緯>
▼ Xは昭和56年4月、D社との間で労働契約を締結した。Xは当初支店にて一般的な行員としての業務を行っていたが、62年以降、社団法人日本経済研究センター等に出向し、エコノミストとしての研修・研究を行うようになった。
▼ Xは平成10年4月からD社本店の信託財産運用部の所属となったが、株式・債券の市場動向の分析、マクロ経済の分析といった業務ではなく、資金の委託者に対する運用実績報告書の作成等を命ぜられた。
▼ 10年9月末、Xは直属の上司である公的資金運用部のA次長に同年12月末付での退職の意向を伝えた。Xは同年11月、本制度の利用申込書を提出したが、D社の人事部は「Xは今後D社の強化部門である信託財産運用部におけるスペシャリストとして期待していた人材である」として、不承諾を決定し、その旨をXに通知した。
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