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#49 「第一生命保険事件」東京地裁(再掲)

2004年8月4日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第49号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【第一生命保険(以下、D社)事件・東京地裁判決】(2000年2月25日)

▽ <主な争点>
成績基準を満たさない営業職員の労働契約から委任契約への移行

1.事件の概要は?

本件は、D社は成績基準を満たさない営業職員との労働契約を終了させて、委任契約である外務嘱託契約に移行(同社ではこれを「編入」と呼んでいる)する制度を設けていたところ、D社は営業職員であったSが成績基準を満たさないとして、Sを外務嘱託に編入した。これに対し、Sが編入は無効であるとして、元の職員の地位の確認を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Sについて>

▼ Sは、昭和54年9月にD社の研修職員補として採用され、55年1月からは同社と労働契約関係のある営業職員として、生命保険契約の募集業務に従事していた者である。

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<D社における外務嘱託編入制度等について>

★ D社は、営業職員の成績に応じて資格を変動させているが、その一環として、成績基準を満たさない営業職員との労働契約を終了させて委任契約である外務嘱託契約に移行し、編入後6ヵ月以内に成績基準を満たし、営業職員に復帰できない場合には外務嘱託をも解嘱する制度を設けている(以下「外務嘱託編入制度」という)。

★ Sが研修職員補としてD社に採用された際に取り交わされた契約書には、「研修職員補契約条項により、研修職員補を委嘱すること、契約締結後の身分変更は別に定める会社の内規によって行い、変更の都度会社が本人に通知すること、身分変更をした場合には、契約条項によって変更した身分に従い、その後の契約を継続し、別に契約書を更改しないこと」等が記載されていた。

★ D社の職員資格選考規程は、職員の資格の昇降格、編入・維持および外務嘱託との間の編入に関する事項を定めている。また、同規程には「職員のうちそれぞれの資格への編入・維持の月から各資格維持期間経過後において勤務基準、成績基準のいずれかを満たさない者については、選考の上、それぞれの基準に基づき、対応の資格または外務嘱託に編入する」、「選考にあたっては成績基準未達であっても勤務状態、活動実態等を総合的に判断し、資格を維持させることが適当であると認められる者については、資格を維持させる」と定められている。

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<Sの成績、外務嘱託への編入、解嘱に至った経緯等について>

▼ Sの資格は平成5年4月から営業主任補となり、成績は、営業主任補資格維持基準に6年4月の判定では件数で、同年10月の判定時には件数および継続率(注:一定期間に成立した保険契約のうち一定期間経過後も有効に継続している契約数の割合)で不足があったが、Sの所属部署のEオフィス長の陳情により、営業主任補の資格維持が認められた。

▼ 7年3月にD社から示された概算資料による判定において、Sの成績は営業主任補より下位の資格である養成職員の資格維持基準にも不足していた。同月、Eオフィス長はSと相談の上、Sが養成職員にとどまれるようD社本社あてに2度にわたり陳情を行ったが、同社はSの新資格を外務嘱託とするとの最終的な判断をし、同オフィス長は口頭でSにその旨を伝えた。

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