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#73 「JR東日本大宮支社事件」東京地裁

2005年2月2日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第73号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【JR東日本(以下、J社)大宮支社事件・東京地裁判決】(2003年12月1日)

▽ <主な争点>
金銭紛失事故による担当業務変更、就業制限の効力など

1.事件の概要は?

本件は、J社大宮支社のO駅で営業係「出札」の業務に従事していたXが、同業務から外されたので、同社に対し、同業務に従事する地位にあることの確認を求め、金銭紛失事故についてY駅長らから自認を強要されたなどと主張して、不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償を求め、就業制限の効力を争い、当該期間中における未払給与の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xについて>

▼ Xは、平成11年1月以降、J社大宮支社のO駅において、営業係「出札」の業務(注:駅構内の出札窓口で乗車券の発売、払い戻し、自動券売機の管理等を担当する業務)に従事していた者である。

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<金銭紛失事故、本件就業制限に至った経緯等について>

▼ 14年2月9日、O駅の締切作業において、自動券売機の売上金約7万円が不足していることが判明した。同駅のY駅長はXを含む当該時間帯の勤務者から事情聴取したものの、原因を特定できるような供述は得られなかった。

▼ Y駅長らは券売機の稼動状況を記録したデータを入手し、Xを除く社員3名に対して再度事情聴取を行ったが、これらの者の説明はデータと一致しており、その供述内容に不自然、不合理な点は認められないと判断した。

▼ Xは同月14日午前11時頃からY駅長らによる事情聴取を受け、当日の券売機操作について質問された際、2度にわたって自己の操作についての説明を変えた。Xの態度に不審を抱いたY駅長が「X君、着服したのか」と尋ねたところ、同日午後9時頃、Xは券売機から現金7万円を盗み、競艇に使ったことを認め、その旨を記載した「自認書」を作成し、これをY駅長に提出した。

▼ Xは同月16日、Y駅長のもとを訪れ、「やっていません」と興奮した様子で繰り返した。同駅長らはXをなだめて事情を聞こうとしたが、なぜ自認書を書いたかという問いにも、興奮しつつ「分からない」と答えるのみであったため、Xの妻を呼び出し、就業制限(以下「本件就業制限」という)を通知して帰宅させた。

★ 本件就業制限は、J社就業規則に定められた懲戒処分が決定されるまで就業を停止させる措置であり、当該期間中は平均賃金の6割の給与が支給される。

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<その後のXの処遇等について>

▼ その後、Xは代理人弁護士を通じて「自認書は任意に作成されたものではない」旨をJ社に対して通告し、以後、同社からの事情聴取の指示に対しても、出頭には応じたものの、話すことはないとして、聴取自体には応じなかった。

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