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#297 「三菱重工業ほか事件」長崎地裁(再掲)

2011年11月2日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第297号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【三菱重工業(以下、M社)ほか事件・長崎地裁判決】(2010年4月13日)

▽ <主な争点>
ガス流し作業による火傷と会社の安全配慮義務違反等

1.事件の概要は?

本件は、派遣会社(L社)で配管職として勤務していたXがN社に派遣され、M社の造船所において、ガス流し作業中に火傷を負った後死亡した事故について、N社およびM社には安全配慮義務違反ないし不法行為責任があるとして、Xの相続人であるYらが両社に対して、その損害賠償を請求したもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<M社、N社およびX等について>

★ M社は、船舶・海洋構造物・原動機および工作機械の製造等を目的とする会社である。

★ N社は、M社の下請会社であり、M社長崎造船所内において、船舶・陸上機器の製造修理等を目的とする会社である。

★ Xは、平成17年5月、L社(派遣会社)に入社し、配管工(船内のパイプや手すり等の艤装品を取り付ける作業を行う職種)として勤務していた。同社はN社へ従業員を派遣していた。なお、XはYおよびZの長男であって、Yらは亡きXの法定相続人である。

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<本件事故等について>

▼ Xは19年5月10日、M社長崎造船所香焼工場構内、トモドック建造船NO.1ウォーターバラストタンク内(以下「本件現場」という)において、同タンク内の上端部に仮付け溶接された空気抜き管貫通パイプの位置調整をするために行う、ガス流し作業(以下「本件作業」という)中に発生した火花によって作業服が燃え、上半身に火傷を負い、同月30日、広範囲熱傷による急性呼吸不全を原因とする低酸素脳症により死亡した(以下「本件事故」という)。

3.派遣社員Xの遺族Yらの言い分は?

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