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#542 「東京都(交通局)事件」東京地裁

2021年7月21日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第542号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【東京都(交通局)事件・東京地裁判決】(2019年12月2日)

▽ <主な争点>
年次有給休暇の取得と時季変更権の行使など

1.事件の概要は?

本件は、都営バスの乗務員として勤務するXが持病である冠攣縮性狭心症について主治医の診療を受けるため、労働基準法39条に基づき年次有給休暇の取得を申請したにもかかわらず、同条に違反してこれが認められなかったため、主治医の診療を受けられず、その結果、手元に処方薬がなくなってしまったことから、冠攣縮性狭心症の発作を発症して約3ヵ月間の病気休暇を取得せざるを得なくなったと主張して、東京都に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として、慰謝料等の合計199万4560円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<東京都およびXについて>

★ 東京都は、地方公共団体である。東京都交通局は都が経営する地方公営企業の一つであり、自動車運送事業を営んでいる(地方公営企業法2条1項4号)。

★ Xは、平成4年7月、都交通局に都営バスの乗務員として任用された企業職員であり、当初は渋谷自動車営業所に配属されたが、12年12月に北自動車営業所(以下「本件営業所」という)に異動した。なお、29年8月9日当時の本件営業所の所長はAであった。

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<Xが年次有給休暇を取得できなかった経緯等について>

▼ Xは平成21年3月、冠攣縮性狭心症(心臓疾患の一種)と診断され、都の健康管理室において診察を受けた結果、ジルチアゼム塩酸塩徐放カプセルを服用すること等がバス乗務の条件とされ、この点は29年8月9日当時も同様であった。

▼ Xは本件営業所における夏休みの取得に関する事前調整を行う労働組合(以下「本件組合」という)に対し、「検診予約のため」を理由として29年8月9日の年次有給休暇の取得を申請したところ、本件組合のB副支部長は同年6月26日、Xに対し、(1)夏休期間中は、夏休取得日が確定した後は個人的理由による休暇の取得については、個人で夏休同士または週休同士の交代によって対応することとなっているため、8月9日に年次休暇を取得することはできない旨、(2)Xにおいて週休同士を交代する相手を探すことが困難であれば、本件組合において探すので、同日の代わりに出勤できる日を教えてほしい旨の回答をした。

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