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#184 「アンダーソンテクノロジー事件」東京地裁

2007年6月6日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第184号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【アンダーソンテクノロジー(以下、A社)事件・東京地裁判決】(2006年8月30日)

▽ <主な争点>
取締役兼部長の労働者性/内部告発を理由とする懲戒解雇

1.事件の概要は?

本件は、A社の取締役で本社営業部副部長および東京支店営業部長であったXが、株主総会で取締役を解任されたことから、解任当時は従業員兼務取締役であったことを前提に、従業員としての地位確認および取締役解任後の従業員給与の月額の支払いを主位的に請求し、正当な事由なくされた解任が無効であることを前提に、商法257条1項但書による損害賠償を予備的に請求したもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<A社およびXついて>

★ A社は、昭和54年10月に設立され、東京を本社とし、橋梁工事に広く用いられているプレストレスト・コンクリート製品に関する調査、企画・立案、設計、監理指導等の事業を営むとともに、特定建設業の許可を得て、土木、とび・土工、鋼構造物、塗装工事等の工事施工を行っている。平成16年の売上は約65億円で、本社のほか、主な営業所として6支店、1機材センターを有している。

★ 同社は代表取締役社長であるBが筆頭株主で、その家族で計40パーセント相当の株式を占め、B代表が絶大な支配力を有している。

★ Xは平成12年7月、A社へ入社し(雇用期限の定めなし)、本社資材部副部長、中国への赴任、本社総務部副部長を経て、15年4月には本社営業管理部長になり、16年3月、取締役に選任され(任期2年)、同年6月から本社営業部副部長および東京支店営業部長をしていた。なお、Xは平取締役であり、業務執行権限が定款上付与されているわけではなかった。

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<本件解任および本件懲戒解雇に至った経緯>

▼ 16年9月、XはB代表から静岡支店への転勤を打診されたが、家庭の事情もあり、転勤に難色を示し、結果的には上記打診を拒否した。その後、XはA社に対し、書面で上記転勤が場当たり的なものであるなどと批判するとともに、弁護士を通じ、取締役会の法的不備等に関する疑問点・問題点を申し入れるなどした。

▼ これに対し、A社は同年12月、Xに対して、本社営業部副部長および東京支店営業部長の任を解くとともに自宅待機を命じた。

▼ 同月末、XはフリールポライターであるCにA社の内情に関する情報を提供するなどし、後日、週刊誌に同社に関するスキャンダル記事が掲載された。

▼ 17年3月、A社は定期株主総会を開催し、Xの取締役解任が承認可決された(以下「本件解任」という)。その際、Xから解任理由を明らかにするよう申し立てがあり、A社からは「会社の委任の趣旨に反し、会社が日本道路公団と共同申請した特許に関し、社外のマスコミに道路公団との癒着疑惑があるかのごとく情報提供したことに基づくものである」との説明があった。

▼ A社は本件訴訟において、Xによる情報漏洩行為が就業規則の懲戒解雇事由に該当するとして、同年6月をもって懲戒解雇の意思表示をおこなった(以下「本件懲戒解雇」という)。

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