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#283 「ティーエムピーワールドワイド事件」東京地裁

2011年4月13日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第283号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【ティーエムピーワールドワイド(以下、T社)事件・東京地裁判決】(2010年9月14日)

▽ <主な争点>
集団的いじめ等の存否、勤怠不良等を理由とする解雇等

1.事件の概要は?

本件は、身体、精神の障害により業務に耐えられないことなどを理由として解雇された(以下「本件解雇」という)Xが、社長や社員による集団的いじめや嫌がらせを受けて多大な精神的苦痛を被り、さらに本件解雇は解雇理由が存在せず、もしそうでなくても合理的相当性を欠き無効であると主張して、T社に対し、雇用契約上の地位確認、不法行為に基づく慰謝料および未払い賃金の支払いを求めたもの。

これに対し、T社は集団的いじめや嫌がらせの事実をXが業務上の指導をいじめ等と曲解しているという理由で否認し、また、本件解雇は解雇理由が存在し、合理的相当性も認められると主張して、Xの請求を争っている。

2.前提事実および事件の経過は?

<T社およびXについて>

★ T社は、電話帳、新聞等の広告に関する情報の収集、市場調査等を目的とする会社である。同社の代表取締役は本件解雇当時はAであり、現在はBである。

★ X(昭和54年生)は、平成20年11月、期限の定めのない雇用契約を締結してT社に入社し、郵便物管理、業務の進行管理、備品発注等の一般事務に従事して、同年12月からはテレアポという電話による営業活動もするようになった。

▼ T社は21年1月、本来であれば3ヵ月間であった試用期間を短縮して、Xを本採用にした。

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<T社の就業規則、本件解雇理由等について>

★ T社の就業規則には次の定めがある。

第20条(服務心得)
社員は服務にあたって、次の事項を守らなければならない。
(1)会社の方針及び自己の責務をよく認識し、その業務に参与する誇りを自覚し、会社及び役員の指揮と計画の下に、全員よく協力し、秩序よく業務の達成に努めなければならない。
(2)業務組織に定めた分担と会社の諸規則に従い、執行役員の指揮の下に、誠実、正確かつ迅速にその職務にあたらなければならない。

第30条(解雇)
社員は次の事由により解雇されることがある。
(1)身体、精神の障害により、業務に耐えられないとき
(2)勤務成績が不良で、就業に適さないと認められたとき
(6)その他、第4章の服務心得等にしばしば違反し、改悛の情がないとき

▼ Xは21年4月9日、T社に対し、「うつ状態の治療のため、4月6日から5月6日までの間、休職する」という休職願を郵送したが、同社はこれを受理せず、同月10日、Xに対し、4月6日付で本件解雇通知をした。なお、解雇予告手当は支払われていない。

▼ T社は同年6月、本件解雇の撤回を求めていたXに対し、次の解雇理由(以下「本件解雇理由」という)を挙げて、Xの言動が、就業規則20条(1)、(2)に反し、就業規則30条(1)、(2)、(6)に該当すると回答した。

1.上司の度重なる注意勧告にもかかわらず、業務と関係のないウェブサイトを閲覧する、積極的に接客をしない、ゴミの回収を手伝わないなどの業務怠慢が継続したこと

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