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テキストカバレッジ:レガ鯖杯 準決勝 なかみ VS kuro

(筆:サカイ)
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レガシーというフォーマットにおいて、主役となりがちなカードタイプは得てして「スペル」・・・即ち非クリーチャー呪文だ。
環境定義色である青だけでとってみても、《思案》《渦まく知識》を筆頭にした軽量ドロースペルがゲームの再現性を高め、《意志の力》《否定の力》が相手のマストカウンターをマナのない状態からでも阻む・・・といった光景は普段からレガシーをやっていない人でも容易に想像しうるほどの知名度を誇る。

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レガシーといえばこいつら

「レガシー」と称されるだけあり、こういった古今東西の強力スペル達が飛び交うのがこのフォーマットの特徴・魅力の一つだ。

ただ逆に「クリーチャー呪文」という点でみると、クロックパーミッションの顔である《秘密を掘り下げるもの》や、今やアーキタイプ名に冠される程の活躍を見せる《戦慄衆の秘技術師》、《王冠泥棒、オーコ》と共にMTGのあらゆるフォーマットをシミックカラーに染め上げた《自然の怒りのタイタン、ウーロ》等があげられるものの、こういったクリーチャー達にスポットライトが当たるようになったのはこのフォーマットの長い歴史上ではかなり最近の方だろう。

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レガシー新顔です()

突き詰めればスペルの強力さ、ひいては「妨害(除去・打ち消し)の強さ」という点が大きなハードルとなり上記のような並外れたコストパフォーマンスを持つクリーチャー呪文の登場に至るまで中々主役カードタイプたりえなかった、というのが実情だ。
「クリーチャーが強すぎる」と称される令和マジックの時代の流れにおいても、レガシーは未だ「スペル>生物」のパワーバランスが(個人的にはかなりギリギリで)成立している稀有なフォーマットだといえる。


さて、無駄に長い割に内容の薄いレガシー語りをしたのは他でもない。
今回テキストカバレッジとして取り上げる第2回レガ鯖杯準決勝第1試合が、まさに「呪文VS生物」の様相を呈する両極端なマッチアップ故である。

先にプレイヤーとデッキの紹介をさせて頂こう。

まずはスイスラウンド2位通過、プレイヤーネーム「なかみ」だ。
使用デッキは「スノウエムリー」。

耳慣れないアーキタイプかもしれないが、その中身はデッキ名に冠された《湖に潜む者、エムリー》の能力をフィーチャーしたBUGカラーのコントロールデッキだ。
今や氷雪コンの定番となった《アーカムの天測儀》はもちろん《ミシュラのガラクタ》《虚無の呪文爆弾》に至るまでキャントリップ付の軽量アーティファクトを投入し、これをエムリーで使い回していくことでアドバンテージを狙うのが主戦術となる。アーティファクト主軸ということもあって、《氷牙のコアトル》ではなく《悪意の大梟》の採用も特徴的。
稀代のパワーカードである《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と《王冠泥棒、オーコ》の姿も勿論見られる。特にウーロに関してはエムリーの墓地肥やし能力とのシナジーもある等、とかくアドバンテージ面に関しては抜かりがない。
レシピだけのパッと見だとイロモノデッキにも見えるが、積極的な軽量ドロースペル連打からさらなるパワースペルにつなげていくコンセプトの再現性は高い。

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引くぜ~超引くぜ~

使い手たるなかみ自身はこのデッキを「柳澤style」と称しており、なんでも一部界隈ではよく名の通っているデッキだとか。「柳澤」氏が一体何者なのか興味は尽きないが、それだけ確立された戦術だということだろう。
スペルを墓地から手札から、ガチャガチャと絶え間なく唱え続ける様はある種レガシーの青らしいといえる。

これを迎え撃つのはスイスラウンド3位通過、ハンドルネーム「kuro」。
使用するのはレガシーを代表する単色デッキ・・・そして同時にレガシーでは珍しくクリーチャースペルを主軸とする「デス&タックス」だ。

非青系のフェアデッキでありながら、《スレイベンの守護者、サリア》《不毛の大地》《リシャーダの港》を筆頭にしたマナ拘束戦術で相手の行動を抑制し、自身は《霊気の薬瓶》でもって展開力を保つビートダウン。
軽量スペルやピッチスペルが飛び交うレガシーでこそ輝くヘイトベア戦術でもって、古き時代から環境に存在し続けているデッキだ。
現代においてもいわゆる「奇跡コントロール」のような全体除去を積極的に採用するデッキの減少や、《紅蓮破》《夏の帳》等の強力な色対策カード達が飛び交う中でそれらに引っかかりにくい色という環境的追い風もあってポジションアップの呼び声が高い。

加えて、新セット「ゼンディカーの夜明け」で登場した待望の万能除去《スカイクレイブの亡霊》により今まで苦手としていた盤面脅威への対処手段も手に入れた。今回の使い手kuroもこのカードを今大会でのベストカードにあげている。

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強すぎる。1000枚買います。

大別すればコントロールVSビートダウン、といった形でこそあるが「せわしなく手を動かしてはアドを稼ぐコントロール」のなかみに対して、「静かに縛りあげていくビートダウン」のkuroという色々と相反する性質のマッチアップ。
なかみ、kuro両者共にスイスラウンドを3-1と同成績で通過していることもあって好勝負を期待できそうだ。
「動」と「静」の対決に注目しよう。

●G1


お互いマリガンなしの7枚キープ、先攻は順位が上のなかみから。
まずは《冠雪の森》→《アーカムの天測儀》で口火を切る。レガシーでは親の顔より見飽きた人もいるであろう鉄板スタートだ。
対するkuroは《平地》を置くだけで静かにターンを終了、《霊気の薬瓶》や《ルーンの母》キープというわけではなさそうだ。

なかみの第2ターンは《霧深い雨林》を切って《冠雪の島》、そして《思案》。淀みなく迷いなく手を進めていく。トップ3枚をシャッフルすることなくドローすると、続けて《ミシュラのガラクタ》。ゲーム開始からわずか2ターンだが既に4枚ものカードを引こうかという構え。
なかみの手はまだまだ止まらない、残る緑マナをアーカムで青に変換。2枚のアーティファクトの存在によるマナコスト軽減からキーカードである《湖に潜む者、エムリー》をキャスト。ライブラリの上から4枚を落として《思案》で見えていたトップをリフレッシュしつつ、《ミシュラのガラクタ》を使いまわしてのアドバンテージにつなげていく構えだ。
エムリー着地後に一旦なかみはターンを返すが、アップキープで即座にkuroを対象にガラクタを起動。むべなくトップをペラリとめくると、無造作にカメラへとカードを向けるkuro。そこに鎮座していたのは。

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なかみ「えーと・・・なんだあれ」
kuro「バイアルです」

所謂「マスターピースあるある」だが、これがwebカメラ越しに発生するのもリモート対戦ならでは。なかみも「ああ・・・」と納得するとそのままドローステップへ進ませた。

(※厳密には《ミシュラのガラクタ》で対象のトップを確認できるのはガラクタを起動したプレイヤーだけですが、この後のゲーム進行上で特に問題は発生していませんのでご了承ください)

気を取り直して、kuroは先程見せた黄金に輝く《霊気の薬瓶》をドローするなり小考する。
エムリーの召喚酔いが解けるとガラクタを使いまわしてのアドバンテージエンジンが回りだす都合、放置というわけにもいかないだろう。
しかしクリーチャー展開の起点となる《霊気の薬瓶》は置くタイミングが遅れるほどに効力が薄れる。1ターン目に行動できていないkuroに対して、なかみは既に2手3手と手を進めていることを考えれば攻め気も出していきたいところでもある。早くも悩みどころなのは確かだ。

なかみの手札が現状4枚であることを確認すると、《平地》を追加。
意を決して繰り出すのは《迷宮の霊魂》

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そのドロー消えるよ

デッキの大半のカードに「カードを1枚引く」と記されているなかみのデッキにとっては致命的すぎるシステムクリーチャーだ。
「いやそれはすごい困るな・・・」と、すぐさま重ね引きしていた《意志の力》2枚でこれを打ち消す。さすがにマストカウンターすぎた故かkuroも半ばWillがあるなら仕方ないといった雰囲気、素直にターンを終了した。

なかみの3ターン目。ガラクタのスロートリップからの通常ドロー。
まずは《虹色の眺望》をセットし起動、《冠雪の沼》をサーチするとすぐさま3枚の土地をすべて寝かせて《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を手札からキャスト。3点ゲインしつつのドロー。
追加のセットランドはなく、脱出ではないのですぐさま生贄となるがエムリーの能力も手伝って墓地の枚数はすでに潤沢。基本土地しかサーチしていないがアーカムのおかげで色マナの不足もない。
なかみはまだまだ手を止めない、続けてエムリーをタップし能力を起動すると《ミシュラのガラクタ》を墓地よりキャスト。どんどんライブラリーを掘り進めていく。

kuroへとターンが返るが、すぐさまアップキープの優先権で先のターン同様になかみがガラクタを起動。マナがかかっていないとはいえ、アクション数の差が大きすぎる。
稼がれたリソースを盤面に還元される前になんとかしたいkuro、ガラクタで見せた《平地》をセットすると《聖域の僧院長》をプレイしてX=0を宣言。
ひとまずはエムリー&ガラクタによるマナのかからないアドバンテージを封じにかかる形だ。

しかし先に述べた通りすでになかみの墓地リソースは潤沢が過ぎる状態、ターンを受けると《冠雪の森》を追加し再びエムリーの能力を起動。
ガラクタがだめならとばかりに既にエムリーのCIPで落とされていた《悪意の大梟》を墓地からキャスト。さらに手札から《アーカムの天則儀》と《虚無の呪文爆弾》を追加する。「カードを引く」ことへの飽くなき探求心しか感じない圧巻のキャントリ乱舞、何枚引けば気が済むのか。

kuroの第4ターン、置けていなかった《霊気の薬瓶》と《ルーンの母》を戦線に追加するが既に物量で押され気味な感が否めない。そしてようやくデスタクの代名詞が一つ《リシャーダの港》をセットしてターンエンド。
早速返すなかみのターンでアップキープに《冠雪の森》を寝かせにかかるが、これもアーカムによる色フィルターから《虚無の呪文爆弾》のドローに変換されてしまう。

メインに入ると《致命的な一押し》で《ルーンの母》を除去、3枚目の《アーカムの天則儀》を追加、更には《虚無の呪文爆弾》をエムリーの能力によって釣り上げる。アクションが途切れる気配は一向にない。

劣勢が否めないkuro、《悪意の大梟》のアタックを受けて残りライフ19。
なんとか切り返せないものかと思考に耽って固まっているようだ。
手が動いていない。

・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・いや流石に長くない?

なかみも見かねて「もしもーし?」と呼びかけるがkuroの返答はない。
というよりもこれ、固まっているのはプレイヤーではなくて画面の方だ。
聞けば回線落ちで弾かれてしまったとのこと。

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機材・回線トラブルによる中断も「リモートあるある」のひとつ

皆さんもリモート対戦の折には自身の機材・回線環境のチェックは十分に。そしてお相手のトラブルには極力寛大に対処頂きたい。

約6分ほどの中断を挟んで試合再開。
kuroの第5ターンからだ。とはいっても先ほどからの劣勢に変わりはない、ひとまずバイアルのカウンターを1つ貯めると《スレイベンの守護者、サリア》を追加するに留まる。《リシャーダの港》と合わせてある程度のマナ拘束がかけられるようにはなったが・・・。

なかみはリシャーダに島を寝かされつつターンを受けると「サリアか・・・」と呟き小考、ややあって《Underground Sea》をプレイ。《悪意の大梟》2体目を追加しつつ、1体はアタックに向かわせエンド。

kuroの第6ターン。バイアルのカウンターを2にしつつ、メインに入るとう~んと唸る。
そしてやはりというべきなのか、カードゲームプレイヤーならば聞かずにはいられないあの質問を繰りだした。

kuro「そちら手札何枚ありますか?」

素早く手札を裏向きに広げつつ答えるなかみ。

なかみ「5枚あります」

kuroは「ありがとうございます」とだけ返答して思考に戻ったが、筆者が観戦者として率直に述べるなら「なんで?」が正しい返答だったと思われる。
その後kuroは何もすることなくターンエンド。展開できないのか、しなかったのか・・・。

なかみはターンを受ける前に《渦まく知識》を挟み、アンタップからリシャーダにアンシーを寝かされつつターンを始める。
そしてメインステップ、サリアとリシャーダのマナ荷重をも乗り越えてついに現れる「ヤツ」。

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ゲロ

着地後、さっそく+1で展開の起点である《霊気の薬瓶》を鹿へと変えにかかる。
流石にただでバイアルを失うわけにはいかないkuro、対応で起動して《石鍛冶の神秘家》を戦場へ送り出す。CIPでサーチする装備品は《火と氷の剣》。

これにはやや唸りを上げるなかみ。
なかみの盤面の生物はすべて青、3/3の鹿となったバイアルに返しのターンで剣を装備させれば5点アンブロッカブルでオーコは落ちる計算だ。しかしオーコをキャストするための4マナは流石に重かったか、ここでせわしなく動いていたなかみの手が止まりターンを返さざるを得ない。

kuroの第7ターンはもちろん石鍛冶の能力メイン起動から、すぐさま上記の通り鹿に剣を装備してのアタックで忠誠度5のオーコを撃破する。バイアルこそ失ったが、ひとまず盤面はプロテクション青で抑え込んだか・・・?

しかしなかみはターンを受けると、更なる脅威にしてこのゲームを決めうるフィニッシュを送り出す。
その名も《練達飛行機械職人、サイ》。

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そぷたーとーくんいっぱいでるよー

1/4のスタッツもさることながら、この盤面では「無色」のトークンを出せる点が非常に重要だ。《火と氷の剣》のプロテクションをかわすチャンプブロッカー生産職人である。
着地後早速エムリーの能力で墓地の《虚無の呪文爆弾》をキャストし、トークンを生成するなかみ。毎ターン最低でも1体ずつはトークンが出てくる計算だ。

青赤剣による盤面への活路を見出したばかりのkuroにとっては非常に大きな脅威、
ターンを受けたのち早々に《剣を鋤に》でご退場願う。
・・・が、直後映像が乱れカメラがオフとなったなかみが画面上から本当に退場してしまうトラブルが発生。おいおい。
そしてカメラが復旧するなり、飛んできたソープロに《意志の力》を切るなかみ。おいおい。
ともあれひとまずはサイが戦場に定着してしまうことに。

こうなると苦しいのは当然kuroだ。
1ターン2ターンと時を重ねるごとになかみの増えるソプタートークンと手札。
kuroも《石鍛冶の神秘家》から《梅澤の十手》や《ルーンの母》を戦線に追加していくものの、圧倒的物量の前に脅威値が足りていない。
サイを直接的にどうにかしてくれる《スカイクレイブの亡霊》が駆けつけた時には、既に盤面は半ば手遅れに近かった。

手遅れだよ

スカイクレイブの亡霊「俺何かやっちゃいました?」

充分量のソプタートークン、そして3体の《悪意の大梟》に上空からしばかれ続けたkuroのライフは、ほどなくして底をつくことになった。



なかみ WIN! 1-0


先手の利を活かし初動からとめどなくスペルを連射し続け、終始優勢にゲームを進めたなかみ。
対してその初動での遅れからなかみを縛り上げるに足りなかったkuroがじわじわと盤面・アドバンテージの両面を押されての敗北という結果になった。

サイド後は入れ替わる先後の差を両者どのように埋めていくのかがポイントとなるだろうか。
黙々とした緊張感あるサイドボーディングが終了し、セカンドゲームの準備が始まる。


●G2

両者共キープ、kuroの先手番から。
《カラカス》から黄金の《霊気の薬瓶》、デスタク黄金スタートで口火を切る。

対するなかみは《虹色の眺望》を置くだけでエンド、動いてこない。

kuroの第2ターン、《不毛の大地》をセットして特殊地形を牽制しつつカウンター1つのバイアルを構えてのターン終了。
お互いの「静」の構え、先のゲームとはかなり違った立ち上がりだ。

しかし返すなかみのターンからゲームは大きく動き出す。
《冠雪の島》からフェッチを起動すると、《魔術遠眼鏡》をプレイする。
クリーチャー戦術主体のデスタクには効果的なカード、何より見えているだけで《霊気の薬瓶》を止められる単純な回答である。

もちろんkuroは着地前にバイアルを起動し、《ルーンの母》を戦場に出しつつこれを解決。
それによって公開された手札4枚とは・・・。

ですたくやん

ドン☆


なかみ「めっんどくさい手札だなァ~!!!!

そう呻くのも無理はない、中々の強ハンド。クロック・防御・除去と一通りそろっている上に今置かんとしている《魔術遠眼鏡》にも《スカイクレイブの亡霊》での対処が可能だ。
少しばかり迷いはしたものの、とりあえず起動型能力の封印はバイアルを指定。これをひとまず止められるだけ僥倖といえるだろう、それだけのハンドだ。

kuroの第3ターンは、引いてきた《リシャーダの港》を置いての《石鍛冶の神秘家》から《殴打頭蓋》をサーチでターンエンド。バイアルを止めていなければこれらが打ち消せないインスタントタイミングで行われ、加えてリシャポでのマナ拘束までかかっているはずだったのだから恐ろしい。


3ターン目を受けたなかみ、フェッチランドを置いてからの《ミシュラのガラクタ》をキャストすると即座に自分を対象に起動。トップを確認するなり迷うことなくフェッチを切る。ガラクタによるいわゆる「疑似占術」テクニックだ。
《冠雪の沼》をサーチして3マナから飛び出すのは当然、《王冠泥棒、オーコ》!

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劣勢でも優勢でも強いものは強い。

既に2体のクリーチャーを展開しているkuroではあるが、着地後すぐに+2を起動したこのオーコの忠誠度は圧巻の6。つくづく忠誠度設定を間違いすぎているPWだ。

ターンを受けて、ひとまずバイアルのカウンターは一応増やしてからドローするとやや考えるkuro。眼鏡で見せている《スカイクレイブの亡霊》を使えばオーコは対処可能・・・なのだが彼の使用できる土地は《カラカス》《リシャーダの港》《不毛の大地》と白マナ不足。バイアルは起動できず、出す手段がない。ひとまずはターン終了を宣言する。

なかみは第4ターン、「・・・ドローしていいですか?」と《リシャーダの港》の起動有無を確認するがkuroはこれに「どうぞ」と返答する。
どうやらマナは石鍛冶の起動に充てて、《殴打頭蓋》をルーンマザーで守りながらのプランのようだ。

なかみはドローすると《カラカス》をセット、「難しいな」とぼやきつつもあまり迷いの見受けられない手つきでオーコの忠誠度を示すサイコロに手を触れる。
宣言は+1、先のターンで出した食物トークンを鹿に変えてブロッカーを立てるとこちらもエンド宣言。

kuroのやることはもちろん一つだけ、石鍛冶の能力を起動し《殴打頭蓋》を出していく。
そしてターンを受け、メインで《剣を鋤に》で鹿トークンを除去。
ここまでは手札を見ていたのでお互いの予定調和だろう、コンバットに入って石鍛冶と細菌トークンでオーコにアタックする。5点。

なかみ「残り忠誠度2です」

いや硬すぎるだろ!!!!!

筆者の心中でのツッコミはさておいても、この王冠泥棒はなかなか戦場からご退場願えない。加えてkuroはいまだ白マナを引き込めず、このままターンを明け渡すしかないようだ。
なかみの第5ターン、アップキープにリシャーダに《冠雪の島》を寝かされつつドロー。そして《疫病を仕組むもの》をクリーチャータイプ:人間を指定してプレイ。

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ホロビヨニンゲン

タフネス1を多く用いるデスタクに刺さっているのはもちろんだが、ただ単純に対ビートダウンカードとして厄介すぎる生物だ。おそらくサイドカードだろう。
kuroは一応スタックで石鍛冶にプロテクション青を与えるが、即座に《ルーンの母》が蒸発。そしてオーコの+1で《殴打頭蓋》が鹿になり更にクロック減退。接死ブロッカーも立たせて防御面に抜かりがない。

なんとか盤面を押し返したいkuro、返す第6ターンでのドローは待望の白マナ《無声開拓地》だ。白マナダブルから満を持して登場する《スカイクレイブの亡霊》が《疫病を仕組むもの》を取り払い、オーコ撃破への道をこじ開ける。さらに《不毛の大地》でなかみの《カラカス》も破壊。
これでなかみの盤面の要対処牌は未だバイアルを縛る《魔術遠眼鏡》1枚のみとなった。

だがなかみも当然次の手を放ち簡単にはマウントをとらせない。
《毒の濁流》X=3でクリーチャーを一掃すると《スカイクレイブの亡霊》の置き土産、3/3のトークンを手に入れる。

盤面優位が崩れると苦しいkuro、なんとか展開の起点を取り戻すべく2枚目の《スカイクレイブの亡霊》で今度こそ《魔術遠眼鏡》の排除にかかるも、これは《意志の力》に阻まれる。

更に返す刀でなかみは再度《王冠泥棒、オーコ》!!!

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聞けば4積みだとか。そらこのカバレッジだけで3枚も貼る羽目になる。

3/3のイリュージョントークンと合わせ一気にクロックを加速する構え。
凶悪的なボードの掌握率だ。ここまでゲーム通してあまり感情が声に出ていなかったkuroだったが、このオーコの返しのターンに《ルーンの母》を戦場に出すに留まるに終わってしまっては、流石に声にならない声が漏れるというもの。

なかみは《致命的な一押し》でマザーを退けると、自ターンで食物トークンを鹿に変えての6点パンチ。さらに自身の《不毛の大地》でkuroの《無声開拓地》を破壊しライフだけでなくアクションも奪いにかかる。

このままでは終われないkuro、引いてきたカードを見て小考するとおもむろに《カラカス》からマナを捻出。そして2枚目の《カラカス》で白ダブルを無理やり確保すると、握っていた《ちらつき鬼火》で《魔術遠眼鏡》を一時的に退け《霊気の薬瓶》を目覚めさせる。
そしてその起動からもう1体《ちらつき鬼火》を繰り出して、3/3トークンを飛ばしつつ飛行6点クロックを確保し逆転を狙っていく。
このエンド時に戻ってきた《魔術遠眼鏡》で見えたkuroの残りのハンドは《聖域の僧院長》1枚。当然なかみはバイアルを再指定する。

なかみの第8ターン、鹿ではアタックを仕掛けつつオーコで食物トークンを増やすとそのコスト軽減により1マナで《湖に潜む者、エムリー》をキャスト。このCIP4枚ではウーロが墓地へと送り込まれる。土地もマナもまだウーロのキャストには不十分かつkuroには《カラカス》があるとはいえ後詰となりえる脅威の登場には変わらない。

デスタクとしては勝負を急ぎたいところ、kuroはターンを受けてエムリーにはひとまず《カラカス》でお帰り頂くと2体の鬼火でオーコに6点のアタック。

なかみ「残り忠誠度3です」

硬ぇ。
未だマナベース面も苦しいkuroはエンドしかできない。

なかみは当然、食物トークンを鹿に変えて再びの6点クロックで殴りかかる。既にkuroの残りライフは4にまで追い詰められているが、負けじと殴り返してようやく2体目のオーコを撃破。
更に引き込んでいた《剣を鋤に》で鹿トークンの内1体を排し、次のターンへの望みをつなぐ。アタックを受けてもライフは1残る、ウーロもエムリーもカラカスでの対処が可能だ。ようやく《平地》も置くことができ、ここから攻めに転じられるか。

なかみはターンを受けひとまずアタックでライフを1にこそするが、追加のアクションは土地を置いてやはりエムリーを出すに留まる。

ほぼ無傷だったなかみのライフを、ようやく鬼火が攻め立て始め・・・たいところだが鎮座する鹿トークンに殴られればその場でゲームエンドとなる以上、鬼火で殴るわけにもいかない。除去があれば即アウトである。
もちろんエムリーにはカラカスを当て仕事をさせないが、コンバットはできずにターン終了。

除去2枚で勝てるというこのターン、なかみが意外な手を放つ。
それは確かに除去ではあった。しかし当人曰く「おしゃれ枠」だというそのカードとは《ゴルガリの女王、ヴラスカ》

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色々と予想外すぎる

ともあれこの盤面では単純に除去というだけで非常に強力だ。
即座に-3で鬼火の1体を破壊すると、鹿をアタックに向かわせる。残りライフ1である以上、もちろんマストブロック。鬼火と相打って盤面の生物がいなくなる。

もちろん更地でPWに居座られるなど問題外、kuroはトップしたであろう《護衛募集員》をキャストし《スカイクレイブの亡霊》をサーチ。対処の目途を立てつつ一応のブロッカーも用意して希望を繋げる。懸命な粘りだ。

しかしなかみは攻め手を緩めない。
「あー・・・」とある種得心がいったような声色で差し出されたのはもちろん、3枚目の《王冠泥棒、オーコ》。
このターンこそ食物を作るだけだが当然看過できるわけもなく、すぐさまkuroは《スカイクレイブの亡霊》を差し向けこれを追放する。
本当にギリギリのラインで命をつないでいる。

そして、なかみのラストターン。
《渦まく知識》から提示した最後のカード。

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ある意味、このマッチの引導にふさわしいかも

飛行1/1。
たかが1点、されど1点。
kuroがこのゲーム繋ぎ続けてきたわずかな希望、最後のライフ1点を刈り取るフィニッシャー、《悪意の大梟》への対処手段は彼の手に残されていなかった。

なかみ WIN!2-0


3枚のオーコをも乗り越えたkuroの不屈の粘りは見事だったが、やはり《魔術遠眼鏡》にバイアルを阻まれた上にマナベース面でも四苦八苦し、ゲームを通してアクションが苦しかった中では流石になかみの手数を上回って攻めに回るのは厳しいものがあった。

1ゲーム目共々、なかみの行動をかみ合わせたキャントリップ呪文の数々を制限しきれなかったこと。そしてマナトラブルによって虎の子《スカイクレイブの亡霊》を思うようなタイミングでキャストできなかったのは大きな要因だろう。
そこ含め、ドローの多さで戦略の「再現性」を担保していたなかみのデッキ、「柳澤style」が持つ特性が光ったマッチだったといえるかもしれない。
終始じりじりとした追い立てで、ゲーム展開の割には長時間のマッチとなったがその分見ごたえある攻防だと感じられた。改めて両名の健闘を称えさせていただきたい。


そして勝者であるなかみは決勝戦のビデオマッチへと・・・。

なかみ「えーとすいません」

ん?

なかみ「ちょっと予定より早く抜けないといけなくなりました」

え?

なかみ「申し訳ない!kuroさんにトスします!」



kuro WIN!!!

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