見る抗うつ剤【リョーマ!】

テニスの王子様といえば、超次元的なテニヌの描写とミュージカルのイメージが強い平成最高のエンタメ作品である。

そしてそのテニプリが3DCGアニメとして映画化するのだ。見ないわけには行かない。

ということで劇場に向かい、本作を鑑賞したわけだが、まず簡単に結論だけ言おう。

今年見た映画で一番面白かったまである

それくらい良かったし何より笑えた。ある程度テニプリ沼に足を踏み入れた経験がある諸君は絶対見た方がいい。

とりあえずどういう映画だったのかをネタバレ抜きにして語るとすれば、本作は「ミュージカル映画」だった。

最初の場面が全校大会の決勝で幸村と越前が試合しているところからはじまるわけだが、なぜか急に歌い出す。

そして他のキャラが歌い踊る中サムライドライブで勝利する。

この時点ですでに面白かった。気づいたら試合していた越前と幸村も歌っている。いったいこの空間はなんなんだ。

そしてその後武者修行にアメリカへと飛び立った越前リョーマ。なんやかんやで現地のバッドガイとテニスをすることになるのだが、試合が始まった瞬間急にラップバトルも始まる。

もちろん越前が負けるわけもなく、テニスの技術で圧倒するばかりか「ラップって簡単じゃん」とか言い出す。ここまで約十数分。序盤からエンジンのかかり方が半端じゃない。

その後試合中にボールがぶつかることでタイムスリップし、父親の南次郎の全米オープン決勝前まで時が巻き戻る。

ここからはしばらくまだ常人にも理解できる展開が続く。急に歌い出すが。

問題はストーリーが終盤に差し掛かり、なんやかんやで越前が父に電話をかけるシーン。

過去にタイムスリップしているため、中学生メンバーはまだ児童くらいの年齢のはずだがなぜか現代の部長たちにつながる。

ちなみにここでの電話の相手がバージョンによって異なり、幸村・手塚と白石・跡部の違いがある。僕が見たのは白石・跡部のパターンだ。

白石との通話はわりとあっさり終了するが、跡部との通話ではなぜかミュージカルが始まる。

完全に不意打ちだったが、越前と跡部様の美しいユニゾンを存分に堪能することができたので満足だ。

個人的に一番笑いを堪えきれなかったシーンは、全米オープンの決勝を終えた父南次郎と息子リョーマの試合中に空中から中学生たちを次々と召喚するシーンだ。

文章だけではなにを言っているかわからないかもしれないが、本当に空中から手塚や跡部たち中学生メンバーを召喚して歌わせるのだ。こればっかりは劇場で見て確かめてきてほしい。

総じて本作は大変素晴らしいエンターテイメント作品であった。

隙あらば歌い出す。テニミュでは基本的に前奏があるので、「ここから歌パートだな」という気持ちの切り替えを行なって鑑賞することができるが、本作での劇中歌は待ってくれない。

何気ないセリフからしてすでに旋律を奏でている。"歌っている時間>テニスしてる時間"くらいにはミュージカル要素の比率は高い。

シュガーラッシュ2でヴァネロペやプリンセスたちに揶揄されていたように、感情が昂るとすぐに歌う。そして踊る。

曲がいちいち素晴らしいのもまた逆に悔しい。

もはや我々観客は嘲笑することすら許されないのだ。唐突な展開と美声、耳障りのいい音楽に襲われて、その顔には笑顔しか残らない。まさに笑いの大災害のような映画だ。

わりかし冗談抜きで今年一番面白かった映画になり得るポテンシャルを秘めているので、まだ見ていない方は是非映画館の迫力の音響とスクリーンでこのミュージカルを楽しんでほしい。

ときに、テニスの王子様の原作者である許斐剛大先生は、自らのことを漫画家ではなくハッピーメディアクリエイターと称しているらしいが、彼のその言には一片の誤りも無いだろう。

少なくとも僕という人間を一人は幸せにしているのだから…

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