天は粟を雨降らし、

ジュラルミンの棺桶と汗ばんだ君の手と
混ぜ合わせた絵の具のように道徳は滲んでく
この儘ぼくらはどこにでも行けるだろうか
それとも死体になるまでここで
無味の幸福を愛でるのだろうか

酩酊と悪夢のあわいの束の間の現実が
だらしなく垂れる長針をことさらに光らせる
騎馬の嘶きがやっとの眠りを妨げて
不快を顕にした儘で君は左の口角を上げた

髪の長い友人がこの程甘味を口にしないのは
痺れの中に焦燥の味を聴くからだと謂う
その白い腕と剃刀の刃との番う地点こそ
永遠であれかしとぼくらは譫言に笑う、
「ユーリカ!」

ぼくが君を愛しているとそう気付いた刻には
既にこの白昼夢は痩せ細ってしまっていた
無造作に焚いた緋色に希望は宿らないのだし
まして絶望などはぼくらの誰もしらない事だ
汗ばんだ君の手と懈い会話が消失する迄
どこへでも行けるぼくらはまだ生きている

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