黄色信号で停ること

助手席で凍える私に「おいで」と言って貴方は両手を広げた。私はそれにつられて、貴方の腕の中で小さく踞る。外は雨風が激しい。此処はと言うと、全く別の世界かの如く静かだった。安心で安全なこの場所で、私はいつの間にか眠りにつく。
貴方の温もりと鼓動が、まるでいつかふたりで見た夜の海のように穏やかだった。

目を覚ますと、私は貴方の服に涎を付けていた。
ごめんねと謝ると、そのシミを見て貴方は淋しそうに微笑んだ。

「愛おしいよ」

そう言って、私の頭をそっと撫でた。

ごめんね。愛してあげられなくて。
ごめんね。貴方の恋人になれなくて。
左様なら。

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