AWSでの割引適用について

AWSのコスト削減方法には、「利用していないリソースを停止、削除する」、「想定よりワークロードが少なければ、スケールイン、スケールダウンする」といった手法のほかに、利用する予定のリソースを予約して料金を前払いする(しない場合もありますが…)Reserved InstanceやSavings Plansといったディスカウントプランがあります。
この記事では、AWSにおけるディスカウントプランについての解説を行いたいと思います。
分かりやすくするため、それぞれのディスカウントプランの細かな品目については、この記事では解説していません。ディスカウントプランとして、AWSでどのようなものが選択できるかを理解いただくことを優先していますので、詳細を知りたい場合は、AWSの公式ページをご確認ください。

Reserved Instanceについて

Reserved Instance(以下、RI)は、その名が示す通り、利用するインスタンスを予約して、料金を前払いすることでオンデマンドインスタンスより安い料金で利用できるディスカウントプランです。
料金を計算する場合には、1年または3年の利用期間を決め、料金の全額前払い、一部前払い、前払いなしの支払いオプションを決定し、RIを購入します。割引率はリージョン、利用するインスタンスタイプ、OS、テナンシーによって異なりますが、オンデマンドインスタンスに比べ最大72%の割引が適用されます。
これはSavings Plansを利用する場合も同じですが、一括請求設定がされている場合、同じ一括請求アカウントに関連付けられている複数のアカウントでRIを共有することができます。

Savings Plansについて

Savings Plans(以下、SP)は、2019年11月に登場した比較的新しいディスカウントプランです。SPもRIと同様に1年または3年の利用料金をコミットすることで割引されるサービスです。支払方法についても、RIと同様に全額前払い、一部前払い、前払いなしの3パターンが選択できます。
ここまでの解説だとRIと何が違うんでしょう。前述の通り、RIはその名前の通り、指定したインスタンスタイプ、OS、テナンシーを予約することで、料金をディスカウントするものです。そのため、購入時に指定した内容以外には、原則ディスカウントは適用されません。(一応、コンバーティブルRIならインスタンスタイプの変更はできます)
完全に塩漬けにするパターン以外、3年分を前払いしするのは、ある意味リスキーといえますよね。
そこで登場したのがSPです。SPは1時間当たりの利用料金をコミットメントすることでディスカウントされます。利用料金をコミットメントする以外に特に条件はありません。これでEC2やFargate、Lambdaの利用料金がディスカウントされます。RIの場合には、FargateやLambdaのディスカウントはできませんから、これらのサービスを割安に利用するのであれば、SPは必須といえます。
ただし、SPは特定のサービスに対してディスカウントを適用させるということができません。EC2やFargate等をひっくるめたSP適用可能なコンピュートサービスの中で、最も割引率が良いものから順番にSPを適用していくという計算をしますので、例えば、EC2の値引き率が20%でFargateが14%のような場合、割引率の高いEC2から優先的にSPが適用され、SPでコミットしている残高があればFargateにも適用されるという動きをしますので、その点は注意が必要です。

一括請求設定をしている場合

AWSには、複数アカウントの請求をひとつのアカウントに集約することのできる一括請求(コンソリデーティッドビリング)というサービスがあります。この場合、RIやSPを複数のアカウントで共用して利用することが可能になります。
通常、RIやSPを購入する場合、常時稼働しているRDSやWep/APサーバとして稼働するEC2のようなワークロードが存在しているので、購入したRIやSPは使い切ってしまう気がします。しかし、RIやSPが複数のアカウントで共有できることで、例えば平日の9時~17時しか稼働させないようなワークロードが複数のアカウントにまたがって存在している場合、通常ならRIやSPを購入すると支払い損が発生しますが、複数のアカウントを束ねてディスカウントできます。
請求代行を行っている会社が割引できるのは、こういったRIやSPを一括請求アカウントが同じアカウント内で共有できるためでもあります。(実際には、これ以外にクラウド事業者との間でのボリュームディスカウトのような契約もあるだと推測されます)
ただ、何でもかんでも割引されれば良いかというとそうでもないです。特定のアカウントに対しては、ディスカウントを有効にしたくないというパターンもあると思います。その様な場合には、割引の共有の有効、無効を制御することができますので、同じ一括請求アカウントに関連付けられていますが、共有化されたディスカウントを適用されず、そのアカウントが購入したRIやSPのみが適用されるようにすることができます。


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