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今日覚えたい発音(かな?)

どっち?
Il a une femme [ki.lɛm]

後半の [ki.lɛm] を文字にしてください。

できましたか?
実は、可能性が2種類あります。

えっ、

Ce qui n'est pas clair n'est pas français.
明晰ならざるものはフランス語ではない。

詠み人知らず

と言われているのに?

そんな「完全な」自然言語はありません。不可思議なことはすべての言語に存在しますよ。

Revenons à nos moutons.
(本題に戻りましょう)

[ki.lɛm] という発音記号を目にしてしまうと、1種類のつづりしか浮かばなくなってしまったんではないでしょうか。
[ki] と [lɛm] の間に音節区切りを示す [.] が入っているから、そこで文字も切れると思ってしまった可能性が高いですね。

その場合は
[ki.lɛm] = qui l'aime

Il a une femme qui l'aime.
彼は一人の女性に愛されている。
女性が一人いて、その人が「彼」を愛しているのです。「彼」がその女性のことを好きかどうかはわからないし、問題ではありません。

では、「逆の意味になる」もう一つの可能性とは?
つづりの切れ目が変わります。

Il a une femme qu'il aime.

il と aime は続けて発音すると当然 enchaiement(アンシェヌマン)が起こり、qu'il aime は qu'i / l-aime のように発音されます。これは il est を「イレ」と発音するのと全く同じ現象ですね。

Il a une femme qu'il aime.
彼には愛している女性がいる。
彼は誰か一人の女性を愛している。

Il a une femme qui l'aime.
Il a une femme qu'il aime.
全く違った景色が見えますね。

愛されている男と、愛している男。

「ややこし!」と思ったそこのあなた!

ヒロが気に入った女性には彼氏がいる。

女性がたくさんいるパーティーの後で、ヒロに聞いてみましょう。
「あの Cathy という女性が気に入った」
「Cathy ? 彼氏がいるよ」
「大丈夫、ぼくの魅力でこっちを振り向かせるから」
→ヒロが気に入った女性には彼氏がいる。

イケメンフランス語教師を集めた会の後に、女性に聞いてみましょう。
「みんな素敵だけど、ヒロが特に気に入った」
「そうなの?あなた彼氏いるよね」
「でもヒロが気に入ったの。彼氏とは別れるから」
→ヒロが気に入った女性には彼氏がいる。

自然言語とはそういうものです。
ご参考まで



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