読書記録『山の人魚と虚ろの王』
『山の人魚と虚ろの王』山尾悠子/国書刊行会
風変わりな妻を迎えた男の新婚旅行。
そして山の人魚と呼ばれた舞踏家の叔母の弔問。
旅は〈夜の宮殿〉に始まり電車に揺られやがて機械の山へと至る。
浮遊する妻、語りかけてくる亡き母。
宮殿のシャンデリア、机に並べられた食物、妻の髪、踊り子たちが履く既製品の靴、眠らない群衆等々、男による旅の追想は描写につぐ描写からなる。
文章から溢れ眼の前に現前せんばかりディテールにも関わらず、個々の出来事が本当にあったことなのか男の妄想なのか夢なの