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肩書きのない関係を築きたい。スクールディレクターが考える保護者とのつながり

こんにちは。ラーンネット・あーるnote編集部です。

入学してみないとなかなか見えてこない、スクールと保護者の関係。ラーンネット・あーる(以下、あーる)では日常の中でどのようなやり取りがあり、スクールディレクターの齊藤勇海さんは保護者とのつながりをどのように考えているのでしょうか。

今回の記事では、保護者交流会の様子とともに、あーるが大切にしている保護者とのコミュニケーションについてご紹介します。


あーるの日常から、理念を伝え続ける

—— あーるの保護者の方とは、日常的にはどのような関わりがありますか?

スクールに送り迎えをしてくれている方もおられるので、登校時と下校時に保護者の方と顔を合わせることもあります。そのときに、家やスクールでの様子についてお互い話をすることが多いですね。毎学期の終わりには個人面談があります。

あとは、あーるの保護者だけに向けて子どもの様子を文章や写真、動画で共有できるクラウドシステム「ストーリーパーク(Storypark)」を使って、口頭ではお伝えしきれない日常の様子を投稿しています。

ストーリーパークの編集画面

—— 保護者会や保護者が参加する行事などもあるのでしょうか?

あーるの校舎で行う保護者交流会は学期に1回あって、オンラインでのおしゃべり会は月に1回あります。行事はあまり多くはないのですが、年1回行われる「のびフェス」は文化祭のような感じで、保護者の方も自由に参加できます。

※のびフェス:のびのびフェスティバルの略称。さまざまな出店など、子どもたちが主体で運営するイベント。ラーンネット・グローバルスクールが運営している「フルスクール」や「ラーンネット・エッジ」に通う子どもたちも参加する。

—— 交流会やおしゃべり会は、どのような思いでやっているのでしょう。

あーるに関する情報はホームページやSNSを見たり、説明会に参加したりすることで知ることができますが、それだとまだ解像度が低いと思っています。大切なのは、子どもたちの姿をベースに、あーるで何が起こっているのかを入学後も伝え続けることではないかなと。私自身がどんなマインドで子どもたちに接しているのかもお伝えすることで、子どもの生活を通してあーるの理念を知ってもらうことにつながると思っています。

学期に1回の「保護者交流会」の様子

筆者は先日、あーるでの保護者交流会にお邪魔してきました。そこでの様子をご紹介します。


新年を迎えて数日がたった1月のある日、あーるの校舎で保護者交流会が行われました。集まったのは、オンラインでの参加を含めて8名の保護者。一つのテーブルを囲み、円になって座ります。

約1時間半行われた交流会の中では、半分以上がそれぞれの家庭の近況をシェアする時間でした。冬休みに訪れた場所や子どもの様子を話す一人ひとりのお話に、全員が丁寧に耳を傾けます。

交流会の後半は、スクールディレクターの勇海さんから3学期の行事やスクールでの新たな取り組みのお話が。話し終えたあとには、「何か質問はありますか?」と保護者の方に問いかけます。開校して1年も経っていないあーるでは、どの保護者にとってもあーるでの取り組みは初めてのことばかり。不安なことはここでシェアすることで、安心感が生まれていくように感じます。

最後は勇海さんからおすすめ書籍の紹介がありました。テーブルの上にずらりと並んだ本を手に取る保護者。中には写真を撮る方や、「借りていいですか?」と勇海さんに声をかける方も。本のタイトルに目を向けると、「ゆっくり」「ゆるめる」「プレイフル」「豊か」というワードが目立ちます。本の紹介も、あーるの価値観を伝えるための手段の1つなのかもしれません。

大切なのは、情報伝達よりもお互いを知ること

—— 保護者交流会では、勇海さんからの情報伝達よりも、保護者の方がお話しされている時間が多かったように思います。何か意図していることがあるのでしょうか?

私が今日の保護者交流会の後半にお伝えしたことって、情報伝達だけであれば文章を作って共有してしまえばいい話なんですよね。保護者交流会は、私から情報を伝えることよりも、保護者の方からそれぞれの話をしてもらう場にしたいと思ってやっています。情報伝達はもちろんどうでもいいわけではありませんが、あくまで交流がメインです。

—— 最後は勇海さんからおすすめ書籍の紹介がありましたね。

保護者の方と集まる機会がある度に、お互いに最近読んでいる本やおすすめの本を紹介しているんです。それを行うのは、本を通して私自身の世界観を知ってもらいたいという思いもあります。もちろんそれができるのは保護者の方が「もっといさみんのことを知りたい」と言ってくださっているからです。

交流会で冬休みのことをそれぞれが話す際には、私自身も家族や趣味のことを話しました。どうしてもプライベートのことには踏み込みにくいと感じてしまう方もおられるかもしれませんが、私はもっとオープンにしたいと思っています。「保護者」と「ナビゲータ」という関係である前に、私たちは同じ人間ですよね。自分のプライベートの話やおすすめの本を紹介する中で、相手を感じられるような距離感をつくれたらいいなと思っています。

肩書きが取り払われた関係へ

—— 保護者との関わりの中で、どのようなことを意識していますか?

共通言語をつくることは意識しています。例えば、あーるにはSEEラーニングというカリキュラムがあります。私(自分自身)の身体感覚をつかむことからはじまり、他者や社会との相互依存的な関係を感じる時間です。

家に帰ってから、その体験を子どもから保護者の方に話すときに、事前に私からその日の出来事をストーリーパークで共有していれば、あーるの意図を汲み取った上で子どもの話を聞いたり問いかけたりできますよね。それが、保護者との共有言語をつくるということなのかなと思います。

—— 保護者との関わりで印象に残っていることはありますか?

学期の終わりに実施している個人面談では、家庭での様子をじっくりと聞くことができます。そのときに「友達の悪口を言わなくなった」「自分の状態や感情を言葉で伝えられるようになった」など、具体的なエピソードを交えて子どもの成長過程を話してくださいます。その話にすごく感動してしまって。スクールで起こっていることや取り組んでいることが、子どもたちの日常にどうつながっているのかを感じられる時間だなと思います。

—— 今後、保護者とはどんな関係を築いていきたいですか?

保護者やスクールディレクター、ナビゲータと言った肩書きを、お互いが気にせずに関わり合えるような関係でいたいですね。それは子どもたちに対してもそうです。あーるに関わる人たちが立場によって「こうあるべき」という考えに縛られることなく、一人の人としてお互いのことを尊重し合えるといいなと思っています。

先日、あるお母さんが「子どもの表現の仕方が変わった」と話してくれました。以前はお母さんの発言に反発することがあったそうですが、最近は「ママはそう思うんだね。でも私はこう思うよ」と返すようになったそうです。あーるではSEEラーニングの中で、自分の気持ちも相手の気持ちも大切にすることを学びます。もしかしたらその体験が、家での振る舞いにつながったのかもしれません。なので、それを聞いて私自身が子どもの変化に驚きました。お母さんも、自分と子どもの視点は違って当然だと気づいたそうです。

私も含め、肩書きや立場に囚われているのは、子どもよりもむしろ大人の方かもしれません。あーるは、「子どもは」「保護者は」という括りではなく、「〇〇さんは」と、その人自身を主語にして関わり合えるような場所にしたいですね。


スクールディレクターの齊藤勇海さんが配信するVoicy「とあるオルタナティブ校長の子育てRadio」でもスクールの様子がわかります。


取材・文:建石尚子

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