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改善を阻む反対意見を軽減する、スクラムマスターのための賛同の得方

スクラムマスターをやっていると、スクラムマスターの改善のための準備や、チームでの改善の取り組みに対して、反対してくる人に出会うことはありませんか? 多くの現場を見てきましたが、このような反対意見がチームの改善を阻んでしまうことも少なくありません。さらに、反対する人が、マネージャーや、スペシャリストといった発言権が大きな人、いわゆるキーマンであれば、大きな影響力を持つため無視できません。

私も、新米スクラムマスターのときには、このような反対意見を上司から頻繁に言われて改善が進まず、とても悩んでいました。改善しようと、チームのためになることを提案しているはずなのに、これまでのやり方とは異なる新しい挑戦をすることに対して失敗を恐れる上司はなかなかOKしてもらえず。

このようなとき過去の未熟な私は、つい強引に言いくるめようとしたり、現状に対して否定的な正論を振りかざして、さらに上司の私に対する反感を、大きくしてしまっていました。こうなると、通る意見も通らなくなってしまいます。

しかし、そんなとき社内の先輩から質問されました。「反対してくる相手は、何を望んでいるのか知っている?」そして、「反対してくる相手は、その活動を誰に説明しないといけないのか知ってる?」と。

そこで私は、相手が何を望んでいるか、どういったことを恐れているのか全く知らずに、自分のアイデアを強引に導入することや正論しか話してないことに気づきました。

改善を阻む反対意見を軽減するための最も重要で即効性のある対応は、「反対者の課題を解決する」ことです。詳しくやり方については後ほど説明します。

こちらの方法は、スクラムに関係なく、提案の方法の基礎となる方法で一般的にもよく使われているものです。私は、スクラムマスターを支援するときに使い方をレクチャーすることで、多くの問題解決に役立っていることを確認しています。

今度はあなたが問題を解決する番です。私や他の人が問題を解決した方法の使い方をこれからお伝えします。

この方法は、この記事を読むだけでは使えるようになりません。自分で何度か試してみることが重要です。

改善を阻む反対意見にさらされて、チームの挑戦がしづらい状況になっていると、放置することでチームのやる気を削いだり、自分たちの組織に対する無力感を生んでしまいます。こうなってしまうと、今度は反対者がいなくなったとしてもチームが改善できなくなってしまう場合もあります。

そのため、そうなる前に是非一度試してみてください。

「反対者の課題を解決する」方法

やっと本題です。

改善を阻む反対意見を軽減する方法は、「反対者の課題を解決する」ことです。
この方法は、反対意見を出されてから使うだけではなく、反対される前から使うことができます。本来、そのほうが効果が高かったりしますが、今回は、反対意見を出された場面を想定してご説明します。

この方法は、反対者が解決策を考える場に参加しているか、参加していないかによって少し解決策が異なってきます。前者の、場に参加している場合は、チームのスペシャリストがふりかえりの場で出たアイデアについて反対しているような例です。後者の、場に参加していない場合は、チームでの決定にマネージャーから反対をされたり、スクラムマスターからの提案に対して、反対されるような例です。

解決策を考える場にいる人が反対する場合

前者の解決策を考える場に参加している場合であれば、その解決方法の懸念点や不安点など、本音でデメリットになることを挙げてもらえると、そこを踏まえた解決策をみんなで考えられるので問題は解決したようなものです。その懸念や不安点などを一緒に解消できるようなアイデアを参加者で考えることができます。

しかし、本音でデメリットを挙げてないとすると、一気に問題は難しくなります。
例えば、それが組織のためにはなるが個人的な事情で反対していて、デメリットをその場で言い出せないこともありますし、本音が言えず思っていることとは違うデメリットを指摘する場合もあります。例えば、副次的な効果として残業時間が減るアイデアだったときに、残業を減らしたくない人は反対意見を言う事になるでしょう。こうなると解決がかなり難しくなります。

こういった場合は、反対意見を言う人の本音の課題感や懸念を引き出す必要があります。今回は、長くなるので、本音を引き出す方法については次回以降の記事で紹介するようにします。

解決策を考える場に居ない人が反対する場合

解決策を考える場に居ない人が反対する場合は、マネージャーなど、スクラムチーム外の人が該当することが多いです。そして、解決策を実施しているところで反対意見を述べてくる場合があります。例えば、「ふりかえりの時間がもともと30分しか確保されていなかったので、60分に変更する」とチームで決めて実施していたような場合です。

例をもとに説明します。マネージャーがチームメンバーのカレンダーの予定を見て、反対意見を言ってきました。「ふりかえりの時間が長くなって、開発のための時間が短くなっているではないか!」と。

そのマネージャーは、「スクラムイベントは仕事のために仕方なく許可しているだけで、エンジニアにはできるだけ長くソフトウェア開発をして技術を高めてほしい」と考えている場合、これに対して「ふりかえりを30分伸ばすことでプロダクトへ与えるメリット」の合理性を説明したとしても、反対されるわけです。

なぜなら、マネージャーはエンジニアのスキルの軸を優先して考えているにもかかわらず、それに対してプロダクトへの貢献を説明しているからです。例なので、この場では「マネージャーとして、プロダクトの成果を軽視しているとは何事だ」などの論点は考えないで進めましょう。

では、どのように反対意見を軽減すればよいのでしょうか。それは反対しているマネージャーの課題感を解決するような説明に変更したり、アイデアを変更する必要があります。

もう少し具体的に言うと、今回の場合、マネージャーが「エンジニアのスキル」を重視していて、そのためには「開発時間を確保する必要がある」ということが事前にわかっていたとします。すると、次のように話すことが良い例です。『「以前話していたエンジニアスキルを高めるために開発時間を確保したい」って件ですが、いまルーチンワークが多くて開発時間が削られているんですよね。だから、開発時間を十分に確保するためにふりかえりの時間に作戦を立てようと思っているのですが、そのための時間が足りずでして。ふりかえりの時間を60分に増やしてもいいでしょうか?』これなら、かなりOKしてくれやすくなります。

方法論としてやることを説明すると凄くシンプルで、単純に相手が大切にしている価値観、課題と思っていることを解決するための提案をしましょう、ということです。

ここまで読んだ方で、このように考えた方はいませんか?「ちょっと待ってくれよ。マネージャーが反対している理由が分からない場合の方が多いから、その方法は使えないよ」

そうなんです。この方法は、反対者が何に困っているか、何を重視して仕事をしているか、どんなKPIを持っていて、上司からどんなことを言われているか、などを知らないとできないんです。

「じゃあ、聞けばいいの?」と思った方もいらっしゃるでしょう。そうなんですが、そこに実は一苦労あります。

反対者の方からあなたへの信頼があれば、反対者の方の持っている課題をスムーズに教えてもらえたりします。しかし、信頼がなければ本音で話してもらえないので課題を知ることすらできないんです。だって、訪問販売でいきなり来たセールスマンに、自分が今どんなことに困っていてって話すのはよほど優しい方しかいないでしょう。だって、何かを売りつけられるかもしれないわけですから。

はい、信頼が大事なのです。あなたが、課題を教えても悪用するような人ではないという信頼が。なので、今後、次回以降の記事で必要な信頼の得る方法を紹介していきたいと思います。次回の記事も読んでいただけたらと思います。

まとめ

- 改善を阻む反対意見を軽減するためには、反対する相手の価値観を満たしたり、課題を解決するような提案をすると良い。
- そのためには、相手の価値観や課題を事前に知っておく必要がある。
- そのためには、相手との信頼関係を構築する必要がある。

今回、ご紹介した内容は万能な方法ではなく、即効性に振り切った方法になります。
次回は、即効性は劣るが多くの場面に適応できる方法をお伝えします。

この方法が合わない方へ

もし、この方法を学んで

  • これをやっても駄目だった、やろうとしたけど駄目だった

  • 難しそうでできる気がしない

  • やってみて大変だったから、次はもう少し楽に意見が通るようにしたい

のように感じた方、別の方法もあります。今回の方法ほど即効性のある方法ではありませんが、もう少し多くの場面で使える方法を次の記事で紹介したいと思います。ぜひ、また読んでみてください。


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