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チクタクバンバン的キャリア論

ソフトウェアが食べ尽くす前のゲームの思い出

カセットを入れ替えれば色々なテレビゲームができる魔法の箱が子供の遊びを食べ尽くすのはあっという間だった。だけど幸い、ソフトウェア化される前の時代のゲームを多少は経験できた。

そんな時代に、チクタクバンバンというゲームがあった。当時の私はちょっと小さすぎてあまりうまく行かなかったけれど、今でも記憶に残るほどオリジナリティある楽しいゲームだった。

キャリアについて考えるとき、よくこのチクタクバンバンが頭をよぎる。と言っても多分伝わらないので、そこを説明したいのが今回のお話。

まずチクタクバンバンとはどの様なゲームか。以下のYouTubeを観ていただけるとだいたいわかる。

目覚まし時計に車輪がついていて、チクタク言いながら少しずつパネルの上を進んでいく。プレーヤーはその時計の進行方向を、パネルの軌道によってコントロールする。パネルをどんどん入れ替えていくことで時計の足を止めないようにするのがこのゲームだ。行き止まりになってしまうと目覚まし時計がジリリリ!と鳴ってゲームオーバー。

キャリアのタイルを動かし続ける

で、これがキャリアとなんの関係があるのかというと。このパネル一つ一つがジョブだと思ってほしい。目覚まし時計があなただ。まず、キャリアのはじめにあなたは何かしらのジョブに就く。そして、時間の経過とともにそのジョブの経験値が上がっていく。パネルの端まで進んだとき、次のパネルに移動するわけだが、その次のパネルがどのようなパネルなのか、選択肢は一つではない。今のジョブの上位ジョブかもしれない(例:アナリストからコンサルタントへ)し、今のジョブの経験を活かしつつ異なるタイトルを持つジョブかも知れない(例:広報から新卒採用担当へ)。そして次のタイルでまたしばらくの時間を過ごすうちにまた次のタイルへ移動する時がやってくる。次のタイルでは、また更に複数の選択肢が出てくる。

ここで3つポイントがある。

  • 最終的にたどり着きたいタイル(ジョブ)があるとしても、いきなりそこに行くことはできない。そして、必ずしもまっすぐそこに向かう事ができるわけでもない。いくつかのタイルを経由して辿り着くことになるわけだが、次のタイルも自在に選択できるわけではない。右に曲がるタイルか、左に曲がるタイルかは選べるかも知れないけど、まっすぐ進むタイルは選べないかも知れない。

  • 上記の事情により当初想定しなかった寄り道をすることになるわけだが、実は意外とその寄り道に新しい発見が潜んでいることも多い。この新しい発見は二種類。①目指したい場所に行くために実はこの寄り道こそが重要だったと気づくことがある。②もしかしたら目指したい場所は一つではないのではないか?と気づくこともある。

  • もしある程度戦略的に目的地に辿り着きたいとしたら、現実的に取り得るタイルの選択肢の先を読んで、どうやって行きたいタイルに辿り着くかの作戦を考えていくことができる。ただし必ずしもそのとおり行かないこともある、というかそのとおり行かないことが普通なので軌道修正し続けなければならないのが実態だけれど。

と考えて行くと、もはやこれは「プランド・ハプンスタンス・セオリー」とほとんど同じことを言っている。そう、実はそのとおり。もともとは、プランド・ハプンスタンス・セオリーをわかりやすく伝えるためにはどうしたらいいかを考えているうちにチクタクバンバンが降臨した、というのが本当のところなので。でも昭和過ぎて結局あまり伝わらなかったのだけれど。。。(当時私が伝えたかった相手はチクタクバンバンを知らなかった)

違うのは、フィールドの大きさ

ともあれキャリアをチクタクバンバンになぞらえることはなかなか気に入っているので、口頭ではなくnoteでならその説明は可能かもしれないとおもい今回お蔵から出してみた。正確に説明するためには少し補足も必要だし。

でその補足とは、キャリアとチクタクバンバンの違うところだ。チクタクバンバンはゲームなので、うまくやらないとすぐに行き止まりにぶつかってしまう。だけど実際のキャリアは幸いにしてそうではない。フィールドはほぼ無限で、行き止まりがないところが大きな違いだ。私達は飽きるまでひたすらパネルを組み替え続けることができる。目指したいところまで徹底的にこだわりたかったら、そこにたどり着けるまでずっと続けることができる。ちょっと遠回りしてしまうかも知れないけど、時間が経てばまたチャンスは巡ってくる。もちろん飽きたらそこで止めても構わない。もしくは一旦時計のスイッチをオフにして、休憩してからまた戻ってきたって構わない。そう考えると、キャリアはチクタクバンバンよりも「勝てるゲーム」と思えなくもない。

ところでチクタクバンバンはもちろん「ゲーム」だ。そしてゲームとは、ゴールが全てではない。プレイしているその過程を通してずっと楽しむものだ。ゴールにたどり着けたかどうかだけが喜びのすべてのようなゲームなんて面白くない。ゾーマを倒すのを目指して旅を続けるとしても、その途中でスライムと戦うのだって楽しんでいる。キャリアもそうあっていい。今いる場所がどうであれ、そして行きたい場所への道がまだ見切れていなくても、どうやってそこに近づいていこうか、新しい可能性を探り続けるその過程も楽しまないと、働くのがつまらなくなってしまうだろう。

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