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「強いリーダー」も「弱いリーダー」も、状況適合理論においては矛盾しない

だいぶ前置きが長くなってしまったが、ようやく状況適合理論のお話ができる。ただし状況適合理論そのものの解説には重点は置かない。あくまで主な関心は「相反する海千山千のリーダー論はどうやって理解すればいいのか?」という点にある。ここまでの経緯は以下。

What's 状況適合理論?

まず、ごく簡単にゴールドマン氏の研究成果をお伝えするとこんな感じになる。

  • リーダーシップの発揮の仕方には様々な形がある

  • 置かれている状況に応じて有効なリーダーシップ行動は異なる

  • リーダーシップ行動の型は、6つの類型に整理される

    1. 強圧型:「私の指示に従え」

    2. 先導型:「私が範を示すから、私がやっているようにやってくれ」

    3. ビジョン型:「こんな未来を一緒に実現しないか」

    4. 民主型:「私がファシリテートするから、話し合って決めていこう」

    5. 親和型:「あなたのことをいつも気にかけているよ」

    6. コーチ型:「あなたの想いはどうしたら実現できるだろうか」

  • 優れたリーダーは、状況に応じてゴルフクラブのようにこれらの類型から適するものを選択し組み合わせて用いることで、様々な場面でリーダーシップを発揮することができる

生じがちな疑問に勝手に答えてみると

突然こう言われても飲み込みにくいと思う。よくある疑問を4つとそれに対する回答を以下に示したい。

「なぜこの6つの類型になると言えるのか?」
これは自然な反応だと思う。この理論は様々なリーダーシップ行動を整理した結果たどり着いた帰納的なものなので、そこに「なぜ」はない、というのが答えだ。

「これはなぜリーダーシップなのか?親和型は仲良くしているだけのように思えるし、コーチ型はコーチしているだけのように思える」
各類型の文字だけ見ているとそういう気がしてくるのは分かるが、これはあくまで「リーダーシップの発揮の仕方の類型」であるという前提で見てほしい。親和型もコーチ型も、その行動の目的はあくまでリーダーシップの発揮だ。親和型は、相手を大切にする姿勢を通して相手に影響力を持ち、「この人となら一緒に歩んでいこう」と思ってもらえることでリーダーシップを発揮する。コーチ型は、個人の想いを引き出し、その個人の想いと組織/チームの想いを繋げていくことでリーダーシップを発揮していく。

「自分が知っているリーダーシップはこのどれにも当てはまらない」
それはそのとおりだ。なぜなら現実の場におけるリーダーシップとは、6つの類型のうち1つだけをピュアに発揮するわけではなく、複数の類型の組み合わせで発揮されるものだから。組み合わせとして見ていけば、あなたが知っているリーダーシップの例も、この6つのどれかに当てはまっていくだろう。もし本当にこの6つで解釈できないリーダーシップがあるとしたら、あなたはゴールドマン氏の理論を発展させることができる大発見をしたことになるかもしれない。

「6つを組み合わせて自在に使いこなすのが素晴らしいリーダーだというのならば、やはり結果として『リーダー』にパターンは存在せず、唯一のキャラクターになるということなのでは?」
理論的にはそうなるかもしれないが現実は異なる。理由は3つ。

①6つの類型全てを自在に使いこなすリーダーは基本的にはいない。生まれ持ったキャラクターやこれまでの経験に基づき、使いやすい型(得意技と言ってもいい)を3,4個でも持っていればかなりのレベルのリーダーだと言われている。

②1つの事象に対処する方法はたくさんある。例えばレストランでステーキを注文したのにハンバーグが届いた場合、「これは違う、ハンバーグをもってこい」(強圧型)ということもできるし、「この料理は注文と合っているのだろうか、確認してみるのはどうだろう(コーチ型)」ということもできる。どれを選ぶかはその人次第だ。

③一つの類型をとっても、発揮の仕方にはかなりのバリエーションがある。レストランで運ばれてきた料理が異なる上記の例に強圧型で臨むとしても、「ぜんぜん違う、注文したのはハンバーグだ」と怒ってもいいし、「確認しろ」と冷たく突き放してもいいし、「あ、これは違いますね!頼んだのはハンバーグなんです」とにこやかに返しても良い。どれであってもやっていることは「指示に従え」(強圧型)だ。(誤解されることも多いが、強圧型は決して怒鳴り散らすことではない。明るい雰囲気を維持しながらテキパキと物事をさばく有能なホテルコンシェルジュのように、にこやかに強圧することもできる。避けるべきリーダーシップと思われがちかもしれないが、正しく使いこなせば有効な類型の一つだ)

リーダーシップはどこまでも多様だ。しかし整理できる。

ということで、現実のリーダーシップの発揮はかなり多様に見えるし、その組み合わせの結果うまれる「リーダー」も非常にカラフルな個性をもつことになる。

6つの型それぞれの詳細を説き起こすのはここでの意図ではない。深めたい方は検索してみていただければかなりの情報を得られると思う。ここではこの6つの類型を組み合わせて、様々なリーダーシップを解釈してみたい。

わかり易い例から行こう。世界的に著名な人物を取り上げてみる。例えばこういう人物はどうだろう。ガンジー。マザー・テレサ。ネルソン・マンデラ。または、よくある3人セットはどうか:織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。次回は彼らの個性あふれるリーダーシップを、状況適合理論で整理してみようと思う。

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