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ペンギン調査日記 2016/17

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2016年12月〜2017年2月に南極フランス基地でアデリーペンギン調査をしたときの日記
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フランス基地でアデリーペンギン調査

フランス基地でアデリーペンギン調査

(バイオロギング研究会会報 2017年6月号より)

2016年12月から2017年2月まで、南極Dumont d’urville基地(なかなかつづりを覚えられない)でアデリーペンギン調査をしてきました。ここはフランスの観測基地で、なんと基地の中に18000ペアものアデリーペンギンが繁殖しているという素晴らしい調査地です。ただし例外的なシーズンに当たらなければ、ということだったのだと今回思い知った

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2017.02.23 Day 78『とにもかくにもなにはともあれ』

帰国だ〜
やっと着いた…。船は揺れ飛行機も揺れ、基地を出てからの消耗が思いのほか激しかった。へろへろで帰宅。

行きの船では最初の2日を過ぎたら全然酔わなかったので、帰りは若干...だいぶ油断していたことは否めない。んで、アネロンまだまだあるし!ってな気持ちでひょいと乗り込んだ結果、丸5日間ベッドで屍暮らしだった。私の内臓において、アネロンと船の揺れが力比べをしているのがありありと感じられて、「ア

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2017.02.11 Day 66『アデリーペンギン調査記』

帰りに乗る船もやってきたので、そろそろ調査のまとめメモを。

基地を出る日はまだはっきり決まってないんだけど、噂によると何の前触れもなく出発の数時間前に突然「もう出まーす」って言われることもあるらしい。かといって、荷造りがっつりして待ってたとしても1週間くらい出発しないパターンもあるしで、スケジュールに関しては常に半々の姿勢でいるべしってのが、このフィールドトリップにおける大切な学びのひとつである

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2017.02.09 Day 64『台風レポートのアナウンサーってこんな感じ?』

これまでは気温も風も穏やかな日がほとんどだったのだけど、今日はもっっのすごく風が強い。朝一の見回り時は、平均風速90km/h、最大風速150km/hという表示で、その後さらに、平均110km/h、最大190km/hまで...おわぁ。どこかにつかまってないととても立っていられず(つかまってても危うい)、双眼鏡もぶれぶれガタガタだった。空飛べそう。

こういうとき、野生動物にはなりたくないなってつい思

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2017.01.28 Day 52『えっ、そうなの…?メモ』

不意に遭遇して「えっ...?」ってびっくりしたことメモ。

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氷の上を歩いていたらふわっふわしたものが現れたので、「キツネ!?...いやいや、いないいない...誰かがコートについてるファー的なの落としちゃったんだなー」と思って拾い上げたら、エンペラーペンギンのヒナのフリッパーだった。こんなにもみっちりふわっふわなのか!

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ものすごい強風の日、アデリーペンギ

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2017.01.21 Day 45『デュモンデュルビル基地情報』

基地に到着してから今日でちょうど1ヶ月だ。共同研究者の1人が明日基地を去るので、残りの調査は2人体制で、私は早朝係に異動。ちゃんと朝起きれるだろうか。

デュモンデュルビル基地では夏のあいだ、R0からR4まで合計5回、ホバートと基地の間を船が行き来するらしい。私はR1で来て、R3で帰る。共同研究者の2人はそれぞれ、R0〜R2とR0〜R3。生物調査をしているグループは他にもいくつかあるのだけど、今年

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2017.01.14 Day 38『ザ・バイオロギング』

ロガーの回収がピタリとやんで5日目の夜、ひっさしぶりのロガー個体捕獲!

フィールドワークにおける心構えについて最近よく考えていたのは、一つ一つのできごとに対して一喜一憂しないことがとても大切かもしれないなぁということだったのだけど、ロガー個体見つけた瞬間そんなのふっとんでいたな...。

私:「….はっっ!!」
→ 共同研究者を呼びに最速早歩きスタスタ(走ってはいけないから)

私:「GPS!G

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2017.01.09 Day 33『アデリー調査生活について』

「私はアデリーペンギンの研究をしています」
→ ジェテュディ ル モシュ アデリー

確かキングペンギンは、「モシュ ソタハー」かなんかだった気がする。発音できないけど。

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今は3人で調査をやっていて、朝の6時から夜中の3時まで誰かしらがコロニーにいる体制になっている。早朝・深夜・中間担当にわかれて、滞在時間は1人あたり14~16時間くらい。私は中間担当で、7時〜8時にコロニーへ出勤、

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2017.01.01 Day 25『アデリー vs 私』

今日、調査地を歩いてたら、ヤンキーみたいなアデリーが突進してきてしつこく絡まれ、ふくらはぎをバシバシ猛打連打されて、えげつない色のあざができた。なんだったんだろういったい...。

出国前、アデリーに負けないために筋トレや柔軟をしていたものの、そんな付け焼き刃は船に乗ってる間にすっかり砕け散った感。どうなることやら不安に思っていたのだけど、私でも片手で持ち上げられる分、エンペラーやキングよりはだい

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2016.12.31 Day 24『DDUとは関係ないけど』

ホバートを出航した日にキングペンギン論文がパブリッシュされていたみたい。4年ぶりのバイオロギング論文だー(ううむ...)。

Shiomi K, Sato K, Handrich Y, Bost CA (2016) Diel shift of king penguin swim speeds in relation to light intensity changes. Marine Ecolog

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2016.12.27 Day 20『アデリー見習い』

基地到着から約1週間、共同研究者の大先輩たちにいろいろと教わって、毎日見回りをする巣の場所もようやく全部わかるようになってきた。50個以上もある巣を3時間おきにチェックしているのだそうだ。オオナギの巣でもそうだけど、最初はこんなん絶対覚えらんないよって思うのに、しばらくするとちゃんと覚えられるから不思議だ(まだちょっと怪しいけど)。

+ロガーの回収や装着もぽつぽつと。今日は、初めてアデリーペンギ

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2016.12.24 Day 17『ふふふふ...』

今回のデュモンデュルビル基地行きについて、密かにずうっと楽しみにしていたことがあって、それは、コウテイペンギンのヒナを見ることでありました。私は8年前に(もう遠い昔じゃないか...)マクマード基地でコウテイペンギンの研究をしたのだけど、その時は非繁殖個体で実験をしたので、繁殖地やヒナは近くで見たことがなかったのだよね。飛行機から黒い点々を見ただけ。

やっぱりあのヒナを生で見てみたいよなぁ、けども

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2016.12.20 Day 13『なんやかんや言いつつ』

ちょっと早起きをしてデッキに出てみると、ついに浮氷帯?に到達していた。最初はまばらだった氷の量がどんどん増えてって、昼頃には四方を氷に囲まれている状態に。そんでもって、それまでほとんど見られなかったなんちゃらペトレルや、ペンギンや、アザラシがいるよ!イキモノ!!服装を完全防備モードに切り替えて、ひさしぶりに一眼レフでバシャバシャ。

いや、正直言うと、つい昨日までは「南極じゃなくって日本でコタツで

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2016.12.19 Day 12『動物目線考』

今回の調査ではビデオロガーも使う予定。

以前、知り合いの研究者さんと話していた流れで判明したのだけど、キングペンギンの視野には水中では前方にもblind areaがあるらしく(Martin 1999 Ibis)、ビデオロガーの画角っていうのはちょうどそのblind areaにぴったりくらいなのだよね...。他のペンギンもそうなのだとすると、ビデオロガーはペンギン本人が見ていないものを撮っている可

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