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地域を豊かにする場所をつくろう!「コワーキングスクールキャンプ」が描く未来とは?

働き方改革、副業・複業、ノマド的な働き方…こうした言葉がを代表するように、近年日本ではフリーランス的な働き方が注目されています。

自由な働き方が進む中で求められるようになったのが、会社や自宅以外で仕事ができる場。
なかでもコワーキングスペースは、カフェのような落ち着いた空間で、多様な人と接点を持てる場として期待され、2020年には世界で3万件を超えると言われています。

その中でコワーキングスペースの利用者に留まらず、自ら運営者としてコワーキングスペースをつくりたいという声も増えてきました。

彼らを対象として、2018年1月から開講されているのが「コワーキングスクールキャンプ」。なぜ開催するのか。なにを学べるのか。そして、コワーキングスペースが身近になることでどのような未来が待ち受けているのか?

一般社団法人ローカルコワークアソシエーション代表の坂本大祐さんと、鈴木哲也さんにお伺いしました。

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左:鈴木さん、右:坂本さん

「コワーキングスクールキャンプ」がつくりたい未来とは

ーー坂本さんは奈良で「オフィスキャンプ東吉野」を、鈴木さんは茨城でコワーキング&カフェ「yuinowa」を運営されています。他にもそれぞれ本業がある中で、コーワキングスペースを立ち上げたい方対象にした講座「コワーキングスクールキャンプ」を立ち上げられたのはなぜでしょうか?

鈴木:2017年に地元・茨城県でコワーキングスペースを立ち上げました。もともと横浜でよく利用するシェアスペース「BUKATSUDO」が好きで、地元にも人が集まる場があればいいなと思ったんです。
でも、誰に何を聞いたらいいのかわからなくて。wi-fiはどのくらいの強さが必要か?どの椅子が座り心地が良いか?そうした細かいことを相談するところがなかったので、コワーキングスペースを運営する先輩方に話を聞きに行ったんですね。
押さえておくべき共通項も見えてくる一方で、運営者や場所、コンセプトによって大切にするべきことが異なることがわかりました。僕が設立時に必要とした情報を体系化したら、これからコワーキングスペース運営をはじめる人の役に立てるのではと思ったのが始まりです。

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「yuinowa」のコンセプトは、仕事をする、くつろぐ、学ぶ、参加する。ここから地域に必要な仕事やコミュニティが広がっている。

ーーコワーキングスペースと一言で言っても、様々なタイプがありますよね。

鈴木:そうですね。10席ほどの小さなコワーキングもあれば、2000席を超える大型タイプもある。また都市型なのかローカル型なのかなど……そうした違いもスクールの中で伝えられたら、受講生がつくりたいコワーキングスペースづくりを後押しできるのではと考えました。

坂本:僕は人口約1,700人の奈良・東吉野村で「オフィスキャンプ東吉野」を運営しています。そこは行政が出資をして、僕たちが企画・運営する仕組み。ローカルのコワーキングスペース運営は、利用者の母数が少ないため運営が厳しい面もあります。だから行政と民間が一緒になって作り上げる場所は、今後もっと求められるようになるのではと考えました。そのような背景から、スクールがローカルでコワーキングスペースをやりたい人と、ローカルエリアにコワーキングスペースをつくりたい行政をマッチングするような媒介にもなればいいなと期待しています。

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遊ぶように働くをコンセプトにした「オフィスキャンプ東吉野」。ここを目的に東吉野村に足を運ぶ人もいる。

各地域で熱い想いを持ったメンバーが集う、キャンプ形式

ーー2018年4月に1回目となるスクールを横浜・関内で、2018年7月に福岡で2回目を開催されました。スクールでは、どのようなことを学べるのでしょうか?

鈴木:スクールでは、コワーキングスペースを運営する先輩方から、日々の運営を通して得たノウハウを学ぶ場を提供していきます。VISIONづくりや人材育成、広報、運営ノウハウ、地域連携、そしてコワーキングを活かした地域活性のあり方についての対話など幅広く学べるよう設計しています。

坂本:僕たちは教える立場ではありますが、たまたま受講生よりも先にコワーキングスペースを開いただけ。教える・教えられる関係というよりも、対等な関係で一緒に進んでいく姿勢を大切にしています。

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ーースクールには、どのタイプのコワーキングスペースをつくりたい人が向いているのでしょう。

鈴木:地方に特化した場づくりを応援しているので、ローカルでコワーキングスペースを立ち上げたい方、地域とのつながりを大切にした場づくりをしたい方が対象です。僕たちはローカルコワーキングと定義づけています。

坂本:東京=都市型と思われるかもしれませんが、東京の中にもローカルはあります。ローカルは局所とも言い換えられると思っていて、そうした価値観を共有できる方を増やしていきたいですね。

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ローカルコワークアソシエーションが考えるローカルコワーキングの定義。

ーー1回目、2回目に参加された方からの反応はどうでしたか?

坂本:昨年春の横浜開催の時は、首都圏の受講生が中心になるかと思いましたが、鳥取、長野など全国から受講してくれました。

鈴木:僕たちは講座が終わってからがスタートだと思っていて、受講生だけが参加できるFacebookグループがあるのですが、そこはお互いのことを応援しあうコミュニティに育っています。「オープンしました!」という嬉しい報告もありますし、「スペースの施錠の運用はどうしていますか?スマートロックですか?」といった業務レベルでの相談もあります。スペースの大きさや入居者の層によって課題や悩みも変わってきますから、同じ立場の人に気軽に相談できる貴重な場になっています。

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横浜関内にあるコワーキングスペース&シェアオフィス「mass×mass 関内フューチャーセンター」。横浜の水源の1つである酒匂川上流の山北町の間伐材でつくられたブースを見学する参加者のみなさん。

ローカルコワーキングが働き方とまちを変える

ーー2019年1月には坂本さん、鈴木さん、そして「mass×mass 関内フューチャーセンター」の森川正信さんの3名で、一般社団法人ローカルコワークアソシエーションを設立されました。設立に至った経緯を教えていただけますか?

鈴木:「地域の未来をつくるコワーキングスペースを全国につくりたい」という僕たちの思いを、きちんと表明したかったからが一つ。
もう一つは、ローカルコワークアソシエーションが、ローカルの仕事の受け皿になることで、働き方の選択肢を増やせたらと思ったからです。

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鈴木:コワーキングスペースをご利用になる方々はフリーランスが中心ですが、個人では行政や民間企業の仕事を直接受けづらい。どんなに実力はあっても、法人ではないからとの理由でチャンスがなくなるのはもったいないなと思って。
今後は、会社員の方が複業で別の企業と取引をすることも増えるでしょう。そうした際に、一緒にプロジェクトを組みやすい環境を整えられたらコワークする相乗効果を高められるのではと考えています。

坂本:ローカルは仕事がないのではなくて、受け皿がないために仕事が漏れているんです。ローカルコワークアソシエーションでまとまった規模・額の仕事を受けて、僕たちからスクールの受講生やつながりのあるフリーランスに仕事をお願いする仕組みをつくることで、お金を回していけたらいいですね。

ーー人が集まる場やコミュニティをつくりたいのであれば、コワーキングスペース以外の選択肢もあったはず。コワーキングスペースにこだわる理由はどこにあるのでしょうか?

鈴木:僕たちにとってコワーキングスペースは、地方を元気にする表現方法の一つ。人と人がつながる場、集まる場をつくりたいのであれば、公民館や寄り合い所、カフェでもいいんです。
ただ、ローカルで暮らしたいと思っても、都市に比べて自分がやりたい仕事ができる会社は見つかりにくいもの。だからローカルでは仕事をつくることが求められている。その役割をコワーキングスペースが引き受けられたらいいなと思っています。

坂本:ローカルコワーキングは、人との距離感が近く、顔が見えやすいので、報酬を得るための仕事以外も生まれやすい環境にあります。まちに日常的に立ち寄れる場所があって誰かがいる状態ができると、どんどん情報が蓄積されていくんです。
「オフィスキャンプ東吉野」では、運営者である僕が人と人をつないだり、同じ場に居合わせた人同士が意気投合したりして、一緒にイベントをやろうとか遊びに行こうとか、小さなプロジェクトがたくさん生まれています。思いもよらなかった仕事や遊びが生まれる可能性があるところが、ローカルコワーキングの魅力です。

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地域内外の人が集まる「オフィスキャンプ東吉野」。

ローカルコワーキングで起こる偶然性をもつまち、京都

ーー2019年3月には京都で3回目を開催されます。京都を選ばれた理由はありますか?

坂本:まず僕たちが、よく京都に来ていて、どんなコワーキングスペースがあるかを知っていたからです。人づてにいくつかコワーキングスペースを紹介してもらったご縁もあり、運営者の顔も知っていて。
京都のコワーキングスペースは、数も多いですよね。西陣エリアのクリエイターが集まる「385place」やクリエイティブエージェンシーであるロフトワークが運営する「MTRL KYOTO」、個人でビル一棟を改装して運営している「GROVING BASE」など、それぞれ個性豊かで、運営者のやりたいことが明確です。

鈴木:コワーキングスペースがもつ偶然性を、京都のまち自体も持っていると感じています。コンパクトゆえ、まちを歩いていると知り合いに会うことも多く、そこから生まれる人とのつながりもあります。

坂本:まちの魅力は大きいよね。京都は自治体としてのブランディングが一番できていると僕は思っていて。大阪よりも京都、神戸よりも京都を選ぶことで、シンパシーを感じやすい人が集まっている気がします。その上で、ローカルコワーキングがテーマに沿ったコミュニティをつくっている。だから利用者は自分に近いところを選んで、そこについていくことができるんです。

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ーーローカルコワーキングは、これからどんな役割を果たしていけるでしょうか?

鈴木:昔はあったと思うんですよ、世話焼き役がいてここに行けばなんとかなるって場所が。でもネット社会になり、それが見えづらくなってきている。だからこそ、ローカルコワーキングが、仕事を発注したい人と仕事をしたい人を結びつけるプラットフォームになればいいですね。
また僕たちが全国各地のローカルコワーキングがつながり、ゆくゆくは人を紹介しあったり仕事をお願いしあったりできる関係性を、ローカルコワークアソシエーションでつくっていけたらと思います。

坂本:うん。スクールの卒業生が運営するローカルコワーキングを、僕たちもキャラバンみたいに回りたいですね。

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第二回 福岡開催の様子 写真提供:小金丸 和晃

コワーキングスペースが日本に生まれて約10年。今では全国各地で見られるようになりましたが、その分コンセプトや運営者の魅力をきちんと発信することが必要になってきています。また利用者にとっても、それぞれのコワーキングスペースの特徴を把握することは、居心地の良いコミュニティを見つける上で欠かせないこと。ローカルコワーキングのように、ローカルに根ざした空間が、これからの働き方とまちを変えていくのではないでしょうか。

ローカルコワーキングをつくりたい人にとって、同じ志をもつ仲間と出会い、共にローカルコワーキングに必要なノウハウを学べるコワーキングスクールキャンプは貴重な機会になるはず。気になる方は詳細はご覧ください。

第3回 コワーキングスクールキャンプ 開催情報

日本を代表する古都・京都を舞台に、コワーキング運営の極意を学ぶ二日間!暮らし方・働き方の最前線で、未来のワークライフバランスを体感しよう。

日時:2019年3月9日(土)・10日(日)
場所:mumokutekiホール
   〒604-8066 京都府京都市中京区伊勢屋町347
講師:坂本大祐 (OFFICE CAMP HIGASHIYOSHINO/奈良県東吉野村)
   森川正信 (mass x mass/神奈川県横浜市)
   鈴木哲也(yuinowa/茨城県結城市)
   タナカユウヤ (KRP町家スタジオ385PLACE/京都府京都市)
   篠田拓也(GROVING BASE/京都府京都市)
詳細:https://coworkingcamp.massmass.jp/

※第4回は2019年5月に横浜開催予定!詳しくはHPにて

(聞き手・文/北川由依

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