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Until We Meet Again ~運命の赤い糸~

作品の評判も良く、熱いファンが多い『Until We Meet Again』。アマプラで見られると知ってから約1年。ようやく見ました。

"悲劇の結末を迎えたカップルが、転生してまた出会い恋に落ちる"
という、作品の大まかな概要は知っていました。転生――恋愛もののみならず、いろいろなジャンルで取り扱われ、これだけでドラマチックになりそうなモチーフです。

だからこの作品も、そこそこドラマチックでロマンチックな内容なんだろうなぁ……恋愛ものだしBLだし……と漠然と思っていたのですが、私のこの思い込みは、見終わってみればあまりにも平たくてペラペラでした。

前世と現世の描き方が素晴らしい

まず、冒頭でいきなり前世カップルのコーンとインが自殺。どうしてそんなことに……!? と見ているこちらに思わせておいて、場面は現世に移ります。

そう、作品では基本的に、現世カップル・ディーンとパームの出会いから少しずつ関係を深めていく様子を描きつつ、ちょこちょこと前世カップルの様子が差し込まれるのです。前世の場面になると、冒頭で二人が自殺していることはこちらは知っているので、幸せそうな二人を見ながら、どうしてあんな結末に……!? とソワソワしてしまう。

同時に、現世では現世カップルが少しずつ距離を縮めていく様子がもどかしくも初々しい姿に、かつ、夢などで二人ともが前世での記憶にうなされたり戸惑わされたりする姿に、別の意味でソワソワさせられます。

この、現世に時おり差し挟まれる前世の様子がミステリアスだし、前世カップルの死の真相が徐々に明かされていく匙加減が、非常に絶妙な塩梅。

わかっているのです。前世の出来事が現世にリンクしていたり、前世で愛し合っていた二人が現世で出会った時にビリビリと運命を感じたり、そんなことは"転生"モノなら鉄板でお約束です。でも、見せ方が巧みで目が離せない。

特に、前世シーンで絶望的に料理がヘタなインがコーンに呆れられているシーンと、現世で料理が得意なパームが何かと手作りの料理やお菓子をディーンに食べさせて喜ばれるシーンの対比は、見ているこちらに前世と現世のつながりを感じさせる婉曲的な見せ方だなぁと思います。

そして、「転生して前世の記憶や因縁を持ちながら現世で生きるのって大変そうだし、それってせっかく生まれてきたのに現世での人生を生きる意味はあるの?」といった、転生モノをちょっと斜めに見てしまいがちな私のような視聴者も納得の、"前世への決着のつけ方"に、最後、唸らされます。うん、一度リセットするの、現実的だと思うな。

主人公二人の恋愛物語だけでなく、家族の物語でもある

ディーンとパームの現在の家族は、コーンとインに微妙にリンクしているのですが、それが転生モノの安易な設定ではなく、必然だと思わせるのが家族とのシーンです。

同性同士だからとそれぞれの親に許されなかった前世のコーンとインでしたが、二人を失った両家の家族は、自分の孫や子供の恋人が同性だと知っても、なんなく受け入れます。それはきっと、あんな形で愛する子供や兄弟を失ったからだろうなぁ……と、想像せずにはいられません。

そして、コーンとインを失った家族がどんなにその痛みに耐えながら生きてきたのかが少しずつ明らかになり、私はもう主人公二人の恋愛より、この家族の描写に心を打たれまくり。さらに、痛みを抱えている家族に、ディーンとパームが前世のコーンとインに成り代わって謝ったり、許したりするシーンに涙腺が緩みっぱなしでした。

コーンとインの死によって、バラバラになった二つの家族は恐らく再び結束することでしょう。ディーンとパームが、二人の関係を再び構築していくように。

脇キャラも魅力的

ディーン&パーム、コーン&インは、それぞれ違う俳優が演じているのだけど、なんとなく雰囲気が似ている感じ。そういう演出をされているのと同時に、キャスティングも考慮されたのかなぁと思います。

ディーン(ティティワット・リトプラサート:Ohm)とコーン(ノッパカーオ・デーチャーパッタナクン:Kao)は、寡黙で、時折表情ににじみ出る何とも言えない"影"がセクシー。二人とも視線がめちゃくちゃ色っぽい。というか、タイの俳優は視線の色っぽい人が多い気がするのだけど気のせいかしら?

パーム(ナタット・シリポントーン:Fluke)とイン(カッサモンナット・ナームウィロート:Earth)はどちらもタイBLドラマの俳優の中では小柄でキュートな雰囲気は似ていますが、Earthの方は天真爛漫な明るさが、Flukeの方はほんわりとした柔らかさが特徴のように思えます。

そしてドラマを見る前から、ディーンと同じ水泳部の、ウィン(ノッパナット・ガンタチャイ:Boun)とティーム(ウォルート・チャワリットルティウォン:Prem)のカップルが人気なのは知っていましたが、実際見てみて「これは……人気なのもわかる!」と納得。あんな"To be continue" みたいな雰囲気でドラマが終わったら、そりゃぁ二人の話を見たくなるってもんでしょう。

パーム、ティームの同級生で親友のマナウ(サマンサ・メラニー・コーツ)は、お菓子をねだったり、ディーンとパームの写真を勝手にSNSにアップしたりと、厚かましいところはあるけど憎めないお茶目さん。最終話で興奮してすっ転ぶところ、思わずフキ出しました。

大人たち、特にコーンとインの家族を演じる俳優もみなさん、演技とあいまって素晴らしかったなぁ……! 個人的には"現世"のコーンの弟・クリット(フォンラワット・マヌープラサート)と、インの姉・アン(タリカ・ティダティ/現世、サウィットゥリー・スティチャノン/前世)が素敵でした。

これまで見たドラマに出演していた俳優もちょこちょこ出演していて、「あ、〇〇くん!」などと発見するのも楽しかったことの一つ。というか、パームのお隣さん・シン(パチャラ・スアンシー:Ja)は、事前にJaが演じていると知っていたからわかったけれども、そうでなかったら絶対わからなかっただろうなぁ……!

個人的には、シン&ソーン(ナパット・ウィカイルーロー:Na)カップルのお話も見てみたいですが、ともかく、こんな風に気になる脇キャラがたくさん登場するのは、良いドラマの証拠なのかもしれません。

"転生"をモチーフにしたラブロマンスだけど、ただのラブロマンスではなかった、『Until We Meet Again』。厚みも深みもあって、今もちょっとその余韻に浸っています。


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