消えた初恋 ―邪推しつつも、キュン
正直に言えば、当初はほとんど期待していなかった『消えた初恋』。
昨今のBLドラマ人気に乗っかってるんでしょ?
大手事務所のトップアイドル二人のプロモーションみたいなものなんでしょ?
そんな風に斜に構えていた私だったのに。
ちょっとだけ見てみたら、予想外にも想像以上に引き込まれ、毎週次回を楽しみにながら、とうとう最後まで完走してしまいました。
最近の日本のBLドラマは侮れなくなったなぁ……!
“BLドラマ”と書いたけれど、そもそもこの作品、原作は別冊マーガレットにて連載中の"少女マンガ"。大変恐縮ながら私は原作未読なのですが、どうやら原作の登場人物たちは初々しく、一生懸命に恋をしているらしい。
BLマンガの登場人物たちだって一生懸命に恋をしているけれど、BLマンガよりも少女マンガの方が(しかもあの別マ!)抵抗なく受け入れやすい、という人はまだまだ多いだろう――と思うと、トップアイドル主演で”BLドラマ人気に乗っかる”には、『消えた初恋』はうってつけの原作だったのではないか――と、密かに勘繰っています。
”BLドラマ人気に乗っかる”意図があったかどうかは、本当のところ、知るよしもないけれども。
そして毎回印象的だったのが、LGBTQを非常に意識していたこと。
さりげないけど細かなところまで考え抜かれたんだろうなぁ、と想像させられるセリフやシチュエーションに、いつも感心させられていました。
例えば2話の文化祭でのお芝居のエピソード。急遽シンデレラを演じた青木を冷やかすクラスメイトをたしなめる井田とか。
4話で、井田のことを好きだと橋下さんに打ち明け、「やっぱ変だよな、オレって」と自嘲する青木に、「おかしくないよ」と断言する橋下さんとか。
なかでも、青木と井田が付き合っていることを知って、急によそよそしい態度をとる教育実習生・岡野が登場する8話は、シリーズの中でも白眉の回だったのではないかと思っています。
岡野の態度に傷ついた青木を思って怒る橋下さんとあっくん、「たいしたことない」という青木に、「それはたいしたことだよ」と告げて「オレが岡野と話そうか?」と問いかける井田。
終盤に、岡野に放つ青木のセリフ「オレは最初から変わってないよ」は、岡野の偏見を見事に炙り出すセリフだったなぁと思います。というか、青木が自分の憤りを岡野にぶつけられてよかった!
最終話の最後の最後、井田が青木にチョコレートを渡しながら「いいだろ、みんなと一緒じゃなくったって」と言うセリフも、井田とつきあっていることがバレるのを不安に感じていた青木へのアンサーみたいで、実にいろいろな意味が含まれているんだろうなぁ……と思わずにいられません。
このドラマ、クレジットにLGBTQ監修者の記載があることに驚いたのですが、こうした印象的な数々のセリフを思うにつけ、「納得」と深くうなずくとともに
ここ数年、LGBTQという言葉が広く知られて関心が高まっているなか、ドラマがこんな風にLGBTQを意識した作品に仕上げられたのも、トップアイドルが主演する所以ではないか――と、これまた密かに勘ぐっているのでした。
私の下衆の勘繰りはさておき。
それにしても、目黒蓮と道枝駿佑が演じる井田と青木は、とてもとても魅力的でした。2人のウブくて、ちょっと鈍感で、感情の振れ幅が激しくて、必死で、そういういろいろな表情や仕草や佇まいに、毎週キュンとさせられていました。
ドラマを見るまで、斜に構えて色眼鏡で見ていて申し訳ない(こういう偏見を、このドラマでは「それでいいの?」と問いかけていたというのに)。
もちろん、テキトー男っぷりが妙にカッコいいあっくん(鈴木仁)と、おとなしげな雰囲気と思い込みの激しさのギャップが可笑しい橋下さん(福本莉子)のサブカプも、素晴らしかったです。
いや本当に、こんなに毎回"キュン"を感じさせられるとは思ってもみなかったなぁ……!
クラスの委員長&副委員長や、いつもベッタリひっついている弘夢&るみのカップル、担任の谷口先生など、クセが強いけど"いい人"なキャラも、このドラマの雰囲気にいかにもピッタリとハマっていたと思います。
個人的には、一度だけ登場した松下由樹演じる井田の母親と、井田が所属するバレー部部長(石田泰誠)の、ちょっとキザっぽい「井田よ」と呼びかけるのが私のツボでした。あの言い方も、キュンとしたなぁ……。
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