プロジェクトに必要なのは“体験設計”。複雑化するプロジェクトをまとめあげるポイントとは|開発Opsチーム
「“誰と、どこで、何をするか”を、もっと自由に。」をミッションにかかげ、3000名以上のフリーランスと企業をつないできたエルボーズ。
2020年3月にリリースしたサービス「ATTEND biz」では、デジタルプロダクトを開発したいさまざまな企業へPMをアテンドしてきました。
PMはプロジェクトを成功させるために重要な役職であり、PMの技量がそのままプロジェクトのクオリティに関わってくると言っても過言ではありません。
そこで今回は、これまで多くのプロジェクトにPMをアテンドしてきたエルボーズのエンジニア兼PMである久保田さんと、PMの小笠原さんにプロジェクトを安定させるためのコツや取り組みについて聞いてみました。
プロフィール
久保田 薫さん/エルボーズ 開発Ops
ゲーム会社でプログラミングや音楽制作を担当したのち、デザイン会社へエンジニアとして転職。その後アプリエンジニアとしてのキャリアをスタート。2016年に独立してフリーランスになり、主にアプリ開発兼PMをサポートする仕事を行う。2022年にエルボーズに業務委託としてジョイン。
小笠原 智さん/エルボーズ 開発Ops
EC会社のアルバイトでWebデザインを学んだのち、デザイナーとして制作会社へ入社。その後、転職しWebディレクターやデザイナーを務め、3年ほど前からPMのキャリアをスタート。2022年6月からPMとしてエルボーズにジョイン。
プロジェクトを安定させるポイントは「体験設計」にあり
ーープロジェクトを安定させるには、どんなことが必要なんでしょうか?
久保田:
PMが「プロジェクトの体験設計」を意識することが必要だと考えています。
ーー「プロジェクトの体験設計」とはどういうことでしょう?
久保田:
プロジェクトの体験設計とは、メンバーやクライアントなど関わるすべての人たちに、そのプロジェクトが“どんなストーリーを持っているのか”体験させることです。
たとえば、ディズニーランドはアトラクションに乗る前や最中に、そのアトラクションがどんなストーリーで生まれたのかを案内してくれる人がいますよね。ストーリーの初めから終わりまで、全員がついて来れるようにしっかりと導いてくれる。
PMがプロジェクトを進めるときも、そのプロジェクトをどんなふうに体験させるのか、設計しながら進めてほしいと思っています。その“体験設計”が標準化できれば、プロジェクトの進め方や完成するサービスのクオリティが統一できるはずです。
ーー体験を設計することが、クオリティを安定させることにつながるんですね。
小笠原:
久保田さんとミーティングを重ねるうちに「PMに必要な視点は体験設計なのではないか」と考えるようになって、開発Opsチームでもそこにフォーカスするようになりました。
ーー体験設計にフォーカスするようになった理由は何でしょうか?
久保田:
プロジェクトの体験設計を意識すると、複雑なプロジェクトがより単純になり、チームをやる気にさせるための環境づくりができるからです。
最近のプロジェクトは求められることが多く、とても複雑なんですよね。予算やスケジュールが決まっている中で、独自の機能を考えて、人をアサインして、タスクを割り振らなければいけない。
さらに、最近は流行の流れがとても早いので、プロジェクトが立ち上がってから終わるまでのスピードも速いし、頑張ってプロダクトを出してもすぐに廃れてしまいます。
正解がない中で、いかに複雑なものを単純化できるかが今のプロジェクトには求められているんです。
ーーそのために体験設計をするんですね。
小笠原:
さらに言えば、「プロジェクトという“体験”をどう提供できるのか」をチームで共有することで、メンバーの取り組み方も変わってきます。誰が何をするのか、誰に何を確認するのか、全員がプロジェクトにしっかり取り組める環境も作れるのです。
とくに、弊社のサービス「ATTEND biz」はクライアントと伴走しながらプロジェクトを進めていくので、チームのメンバーだけではなく「クライアントも含めて“ワンチーム”」という意識が大切になってきます。
ATTEND bizを通してプロジェクトに関わるPMのメンバーには、ワンチームの意識を持ってもらいたい。その上でどう仕事を振るかが「体験設計」になってきます。
プロジェクトのクオリティを安定させるために立ち上がった「開発Ops」
ーーPMに体験設計の意識を持ってもらうために、エルボーズで取り組んでいることはありますか?
久保田:
2022年の8月に開発Opsというチームを立ち上げました。私と小笠原さんは開発Opsに所属しています。
ーー開発Opsではどんなことをしているんですか?
小笠原:
直近では誰でもプロジェクトを体験設計しながら進められるように、プロジェクトキット(仮)を作っています。「プロジェクトフローの円滑化」を目的とした社内共通フォーマットです。
たとえば、プロジェクトキット内にあるリストのタスクをこなすことで、体験設計を抑えつつプロジェクトを進められるようになり、クオリティが一定に保てるような仕組みなどがあります。リストやフォーマットの内容は試行錯誤しながら作っているところです。
今は社内の声を聞きつつ、PMのクオリティを標準化するためにやるべきことをリスト化していますが、あくまで目的はプロジェクトの安定。実際にプロジェクトを動かしていくのがPMなだけであって、重視しているのはプロジェクトの進め方です。
ーー体験設計がプロジェクトにおいて当たり前になるように、開発Opsが立ち上がったんですね。
久保田:
いえ、実はそうではないんです。当初の課題は「PMの方向性やクオリティを統一すること」でした。
開発Opsが立ち上がる前は経営陣がPMを務めていたのですが、ATTEND bizが拡大するにつれてプロジェクトが増え、少しずつ他の社員もPMを務めるようになりました。
プロジェクトの細かい部分などはPM任せにしていたので、今のまま人を増やしたらやり方や方向性がバラバラになってしまう。それを統一するために開発Opsが立ち上がりました。
小笠原:
わざわざ独立した組織として立ち上げたのは、開発しながらだと開発Opsの仕事を進めるのが難しいからです。今は私も久保田さんも他の案件を担当しているのですが、案件が終わったら開発Opsだけに注力する予定になっています。
ーー開発Opsの最初の仕事は何だったんですか?
久保田:
経営陣から「開発の安定と標準化を目指したい」と言われたものの、具体的に「これをやってくれ」という指示はありませんでした。なので最初は、何をするべきか考えるところから始まりました。
まずは経営陣に「開発の安定化って何ですか?」「実際に安定化できますか?」など、「開発の安定と標準化」が何を指しているのか問い直して、解釈を合わせるところからスタートしたんです。
最終的には「プロジェクトの品質を安定化するのは無理だけど、やり方を安定させることはできる」という結論に至りました。それから課題の解決に向けて壁打ちを繰り返していたとき、ふと「今のやり方に対してPMは困っているのだろうか?」という疑問が湧いたんです。
そこで簡単な仮説を立てて、これまで複数のプロジェクトを担当してきたPMやエンジニアを対象に「複数のプロジェクトを担当して困ったことはありますか?」とヒアリングしてみました。今まさにその質問を集計したところで、これからどんどん実践していく予定です。
エルボーズは組織として次のフェーズへ
ーーどんな意見が多かったのでしょうか?
小笠原:
株式会社エルボーズは、今ちょうど組織として次のフェーズに入ろうとしています。開発OpsやCTO室など、これまでひとつにまとまっていた組織の機能が独立した組織として分かれ、役員がプロジェクトから外れていく。
その影響で、これまで役員が属人的にしてきたことを明確にしなければいけなくなりました。
誰がどの範囲を担当して、誰がどの部分に対して責務を負うのかなど、役員が担当していたからこそ不明瞭な部分があったんです。今回のヒアリングで改めて課題が表面化しました。
久保田:
プロジェクトが拡大すると、「ツール」「ルール」「役割」の3つが大きく変わるので、ヒアリングをする前から何となくその3つに関して意見が出てくるだろうなと考えていました。
ですが、実際にヒアリングしてみたら「役割がバラバラになっていて、誰が何をやるのかわからない」という意見が出てきたんです。
聞いてみないとわからないことではありますが、想定とは違う要素を変えるべきだと気づけたのはヒアリングしたおかげです。
ーーヒアリングした意見の中で、何か印象的なものはありましたか?
久保田:
採用に関しての意見ですね。以前はプロジェクトに人が足りなくなっても、役員がそのまま人を採用して追加できました。
今のPMは採用に直接関わらないので、人が足りなかったときにすぐ採用して人員の追加はできないですし、どういうフローで人を追加すればいいのかはっきり決まっていません。
面接までしなければいけないのか、自分たちでエルボーズ内の人に声をかけるのか、お金周りのことはどうするのか……PMにどこまで求められているのかわからないという意見が印象に残っています。
小笠原:
「誰がどの部分を担当して、最終的なOKは誰が出すのか」についてコミュニケーションが取れていないという意見は多かったですね。
特に「誰がどの部分を担当するのか」においては、仕様書が書けるエンジニアもいれば、仕様書を書くのが苦手なエンジニアもいます。一歩前に出て何かを決められる人がいないのはちょっと怖いですね。
ーーなるほど。そんな課題もあるなかで、これからはどんなことに取り組んでいく予定ですか?
久保田:
ワンチームを作るための仕組みづくりをしていきたいですね。
たとえばBtoBのプロジェクトであれば、実際に働いてる方を訪問してみる。実際に見ることでチームの見解が統一されて、同じ意識を持つことができます。
目線を合わせて同じゴールイメージを持つことができるようになれば、それはワンチームと呼べるのかなと。
小笠原:
私はチームビルディングや心理的安全性の部分に取り組んでいきたいですね。
最近少しずつ経営陣のマインドが変わりつつあるので、「PMがこう言ってますよ」「エンジニア、実はこうですよ」など、会社を大きくするのに削らないといけない部分を出していくのが楽しいです。
経営陣が思い描いている理想と現実にはまだ少しギャップがあります。そこを伝えたときに、相手の感情や思考が働いているのを見るのは面白いですね。
ワンチームと体験設計が、プロジェクトをうまく導くカギ
今回は「プロジェクトを安定させるためのコツや取り組み」について開発Opsの久保田さんと小笠原さんにお聞きしました。
プロジェクトに複雑性が求められる時代だからこそ、体験設計を意識したプロジェクトづくりや、クライアントも含めたワンチームでの取り組みが必要になってきます。
これからプロジェクトを立ち上げる方や、今後プロジェクトを立ち上げてみたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
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