埼玉県の虐待禁止条例の改正案がおかしい
わざわざ言わないといけないことなので、わざわざ言おう。おかしいことにおかしいと声をあげないと、ウチの自治体でもいけるんじゃね?と思うろくでもない議員がわいて出てくるから。
問題になってる条例はネットにも原文が上がっている。
というのが、改正案らしい。
立法者が育児したことがないか、シングル家庭の現状とかそういうのへの想像力や配慮が全く感じられない、そして何より社会の不備を個人の責任に転嫁している、とても酷い条例案だ。
問題点はいくらでもあるのだが、少しでも想像力を働かせてみてほしい。
個人これだけ制約を求める一方で、埼玉県にて学童に入れていない待機学童数は現段階でも約1500人。それを解消するだけでも大変なのに、もし条例が可決されれば、ほとんどの家庭でもっとニーズが増える。いま以上に保育園や学童保育で預かってもらうことになるが、そのための人員も予算も無いだろうし、仮に親が付き添うならそのぶんだけ仕事ができず、経済的に困窮する家庭が増える。
子どもにとっても決して望ましいものではない。子どもだけで遊べない時間が増え、子どもの行動にも大きな制限がかかる。全ての公園、全ての通学路に大人の警備員でも配置してくれるのだろうか。
同じ理屈なら、先生のいない休み時間の教室やグラウンド、職員室に忘れものを取りに行く間、子ども達だけで過ごす時間も放置で虐待なのか。いまの倍近い人員配置になるが、そんな予算が埼玉県にはあるの?
子どもの留守番や一人での外出は虐待、というのは海外(アメリカなど)ではよく聞く、という話もある。ただ、アメリカの犯罪率を比較すると、"例えば2021年の殺人事件発生総数は日本が874件であるのに対し米国は13,537件、強盗事件は日本が1,138件であるのに対し米国は121,373件"と、人口比を考慮してもアメリカが圧倒的に高い。
埼玉県も同じように危険な街なんだろうか。だとすれば、条例の可決の前に犯罪や虐待事案に対応できる職員の増強をするべきだ。もちろん、待機児童も待機学童もなくし、現状の教職員負担も増やすことなく、共働きやシングル家庭の家計収入も維持する施策全て実施のうえで。それもできないでいる社会の不備を棚上げにして個人に責を負わせるのはおかしい。
そして、放置するのは虐待だ、と騒ぐ前に、本当に深刻な虐待はなぜ起きるのか、について考えてほしい。
条例案どおり地域住民が子どもだけで遊んでいるのを見かけたら通報となれば、おそらく通報の嵐になり、窓口がパンクする。そして、本当に深刻な虐待事案に気づけなくなる。
もちろん親も気が休まらず、監視状況下でストレスが溜まり、目に見えない場所での子どもへの虐待が増える可能性もある。
現状ですら、児童相談所が十分に対応しきれず、職員も疲弊している、という話のほうがよく耳にする。親への生活支援や相談支援の強化、地域での居場所づくりや共助の促進、そういう発想にならず、なぜ地域での相互監視を強め、親を孤立させ、子どもの成長機会すら奪うものを出してくるのか、とても理解しがたい。
このまま条例案が通るなら、埼玉県からは子育て世代はかなりの数が流出する。現実的に暮らせないか、暮らすこと自体不便になるからだ。
子育て世代の半分以上は共働き世帯で、世帯収入もそれなりにあり、何より働き盛りな世代でもある。地域にもなくてはならない存在のはずだ。
そこがごっそりいなくなって、稼ぎ頭も子どももいない街がお望みなら、それはそれで仕方がない。私は、子どもにも親にも優しい街で子どもを育てたい。
どうか、見直されますように。
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