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<モネ展> は自由に楽しむべし!

上野に立ち寄る用事があり、ちょうど2時間ほどの空き時間があったので <モネ展>に行こうかどうしようか、迷って迷って迷いました。

「行っておこうかな」。。。
どうしても行きたい美術展、というわけではなかったのですが、とても人気がある【印象派】の巨匠=クロード・モネの展示会。会期末は大変な混雑が予想されるので、チケットが入手できなくなる可能性もあります。今のうちに行かなければ後で後悔するかも知れない。
そしてとても心惹かれる宣伝フレーズ、
 ◉ “60点以上の作品は100%がモネ”
 ◉ “モネの「連作」絵画に焦点を当てた”
 ◉ “第一回印象派展(1874年)=【印象派】誕生から150年周年”
太字部分のキーワードにとても興味があるのです。

「いやいや。行かないよ」。。。
今回の入館料は、大人(平日)2,800円(土日)3,000円、そして小中学生まで入館料が必要なの⁈。
いくら日本人に絶大な人気を誇る 巨匠=モネ だからといって、ちょっと強気すぎませんか?。こんな暴利がまかり通れば、年々上がっていく入館料に拍車をかけることになるではないですか!。
「モネ」ならいくらでも払うと思ったら大間違いですからね!

と小さな反抗心を持っていたのですが、公式HPで出展作品の所蔵元を見ていたら、
シュテーデル美術館、クレラー=ミュラー美術館、ジュネーヴ美術歴史博物館、デン・ハーグ美術館、モナコ王宮、スコットランド・ナショナル・ギャラリー、ボイスマン・ファン・ベーニング美術館、クライスラー美術館、コロンバス美術館、メトロポリタン美術館、ブダペスト国立美術館、リヨン美術館、ワシントン・ナショナル・ギャラリー、アムステルダム私立美術館・・・。
本当に世界各国の30館以上から集めた作品なのですね。
輸送費や人件費を考えだけでも、それはそれは大変な費用がかかったものと想像できます。
そして来日作品の中には、今回を逃すと絶対に観ることのできない作品もあるはず・・・。

うーーーん。やはり見ておくべきでしょう。
「よし、行こう!!」

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注意)これから先を読む方は、どうか最後(せめて後半)までお読みください。

上野の森美術館で10月20日から開催中の <モネ展 〜連作の情景〜>。

「美術展を一番落ち着いて鑑賞できるのは、開幕して3週間〜1ヶ月経った頃である」という自論を持っているのですが、今回訪問したのは美術展がスタートしてまだ一週間しか経っていないとき。
やはり、落ち着いて鑑賞できませんでした(涙。

入館したのは平日の15時だったのですが、会場は大勢の若い人たち(20代-30代)で埋め尽くされていました。美術展の展示室というより、話題のイベント会場に紛れ込んだような・・・。
作品の前で立ち止まっておしゃべりする人も多く、
「すごーい。本物って、本当に絵の具が盛り上がってるんだねー。写真撮りたい!。これは撮っちゃダメなの?。ショックぅー。」
「ちょっとこの絵、乱れすぎだよねー。失恋でもしたか、モネ!」
皆さん、とても自由なのです。

そして最後のスペースは、ほぼ全て写真OK!ということで、作品の前にはカメラマンの列ができていました。
カメラマン同士はとてもマナーが良く、一人が正面で何枚か撮影するのを他のカメラマンたちは邪魔せずにじっと待っています。撮影を終えると次のカメラマンが正面に立ちカメラを操作してパチリ✨→ そしてまた次の人に絶好のポジションを譲る・・・といった具合。
作品をゆっくり鑑賞したい人は、カメラマンの合間を縫って、
「すみません。ちょっとだけ作品を観せてください」
となぜか頭を下げる始末(涙。
きっと、SNSで情報発信することを楽しむ人たちにとって、開幕したばかりの <モネ展> はとてもお洒落でタイムリーな話題なのかも知れません。

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素敵な作品はたくさんありましたよ。

<モネ展>公式HPより

しかし「これ!」という目玉作品がなかったような気がします。
どの美術館もモネの “傑作” を容易に外部に貸し出したりしないため、有名な作品を借りるのは至難の業なのでしょう。
100% モネ作品” の展示会だからといって、オルセー美術館のモネ作品が飾られたスペースに立った時の ‘光に包まれた幸福感’、マルモッタン美術館のモネ部屋で ‘ちょっと泣きそうになったあの高揚感’ を期待していると、少し物足りなく感じてしまうのです。

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 “連作に焦点を当てた“ という面白い取り組みに大いに期待していました。

<モネ展>公式HPより

うんうん。素敵ですね。
これほどまでに違う表情を見せてくれる「ウォータールー橋」を題材にして、モネが風景ではなくその時間とき、空気そして光を捉えようとしたことがよくわかります。
ただ、これら作品が描かれた時期、時間、状況などの解説が欲しい!
どうも今回展示している作品の位置付けといった企画展全体の文脈が掴みにくい。今回展示のストーリーは?学芸員の思いは?伝えたいことは?
企画展・・・ということで どうしても何らかのストーリーを求めてしまうのは、よくない傾向かも知れませんね。しかし、今回新たな発見や驚き、共感や感動はなかった気がします。

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そして宣伝に使用した “第一回印象派展から150周年” のフレーズはどこに関連付けられているの?。
確かに章立ては「第1章 印象派前後のモネ」「第2章 印象派の画家、モネ」となっているのですが、単に大きく分類してそれに見合う分類名を付けたにすぎないようにしか思えません。
“第一回印象派展から150周年” というのは単に人を呼ぶためだけに後からこじつけた話題作りのワードだったのかしら?

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と感じていたのですが、ちょっと待って!!!。
(ここから後半です)。

何もわかっていない素人の私が何を偉そうに語っているのでしょうか。
このところ、主催者や学芸員の描いてくれたストーリーに乗っかって全体の文脈を感じることで理解が深まることも多かったので、ついつい調子に乗っていました。
そうでした。
資料を読んで少しだけ知識が増えたからといって、私は所詮 趣味で絵画鑑賞を楽しんでいるど素人。知ったかぶりせずに常に純粋な目を持ち続けることが私の目標だったはずじゃないの!
目の前にあるひとつ一つの作品と対峙して、自分がどんなふうに感じるのか、その作品を純粋に楽しむことを忘れてしまったの?

うんうん、そうでした。
今回の展示会も、四の五の言わずに一つ一つの作品をしっかり感じることにしましょう。
「これがこの美術展のストーリーです」というのがわからない代わりに、わたし自身が 自分の “モネ・ストーリー” を作ってみましょう!

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危ないあぶない。もう少しで自分を見失うところでした。
慌てて人の波をかき分けて、会場の入り口まで戻りました。
よし、もう一度スタートです!

展覧会最初のコーナーには、ジヴェルニー睡蓮の池をモチーフにした体験型インスタレーションが設置されています。
最初に入った時は、人だかりに驚いて素通りしていました。

<モネ展> 展示会場より

キラキラした池に浮かぶ睡蓮の葉の上を歩いてみます。広がる波紋と水の音、葉の上から水面に足を乗せる感覚が楽しい!。子どものように遊んできました。

そして作品も・・・。
移りゆく時間の中で変化していく光を捉えようと、そのときその時の感覚でサササッと運んだだけのように見えるひと筆ひと筆、そしてその色の載せ方…。
そのなんとも的確で緻密なことか。例えば。

<モネ展>公式HPより

東京富士美術館所蔵『プールヴィルの断崖』のカンヴァス左下部分にご注目!
浅い岩場にある 潮だまりの表面に映った断崖が、小さなさざ波に揺られています。
この小さなさざ波。
実際の作品に近づいてみると、子どもが水色のクレヨンでいたずら書きしたようにしか見えないのですよ!

また「連作」はやはり、とても興味深い。

<モネ展>公式HPより

二つの『エトルタ』。
季節や時間、そして天候、雲、日差しや気温の違いが生み出す光と影。風が作り出す波の描き分け・色の置き方。
近づいて、離れて・・・いつまでも観ていられます。

とか、とか。
ひとつ一つの作品に向き合うと、いろいろな発見や驚きがありました。
100%モネ作品はやはり圧巻でした。

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前半の戯言たわごとを撤回します。
今回の <モネ展> は先入観や思い入れを持たず、素直に感じて自由に楽しむべし!

そうだとしたら、
「本当に絵の具が盛り上がってるんだねー」
「ちょっとこの絵、乱れすぎだよねー。失恋でもしたか、モネ!」
のお姉さんたち。
あなたが正解です!

<終わり>

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