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『バベルの塔』を再発見!

日めくりルーヴル 2021年3月28日(日)
『バベルの塔』(1594年)
ルカス・ファン・ファルケンボルフ(1535年頃–1597年)

本日のカレンダーは『バベルの塔』。
旧約聖書「創世記」で語られる【バベルの塔】は、私が最初に興味を持った聖書のエピソードです。

自ら天地宇宙を創造し 人間(アダムとエヴァ)を創造した神。人間と契約を結んで救いを約束するのですが、契約に背く者には厳しい裁きを下します。
原罪を犯した人間に対して→【楽園追放】
人類の繁栄と共に秩序が乱れてくると→大洪水【ノアの箱舟】
人間たちの驕り(おごり)に対して→言語の混乱【バベルの塔】。

ウィルス感染症の脅威に晒されている現状は、人類の驕りに対する神の裁きではないか…。信者ではない私でさえ ふと考えることがあります。

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『バベルの塔』といえば、何といってもピーテル・ブリューゲルの作品。
現存する作品は、その絵画のサイズから、
左が “大バベル”(1563年・ウィーン美術史美術館)、
右が “小バベル”(1568年・ボイスマン・ヴァン・ベーニンゲン美術館)
と呼ばれているそうです。

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私が4年前<バベルの塔展>(東京都美術館)で見たのは右側の “小バベル” 。
それまで全く興味がなかった私を、一瞬にして美術鑑賞の世界に引き込んだ特別な作品です。

450年以上大切に守られた絵に近づくと、想像していたより小さめの額に大きな大きな塔がそびえ立っている。圧倒された。
その絵を見た瞬間、魅了されてしまった。この絵が描かれた時代背景、絵の主題、画家の意図など全てを知りたいと強く思った。
塔を建設している一人の愚かな人間となって神の裁きを受け、足元が崩れて奈落の底に落ちていく自分を、いつの間にか想像していた。(note投稿より)

この瞬間から、わたしの美術鑑賞は4年間続いているわけですし、それどころか西洋美術に対する情熱はますます加熱し、読む本、聴く音楽、フリータイムにやる事が美術中心になり、その結果 生活スタイルが大きく変わったわけです。『バベルの塔』の前に立った瞬間に、私の “やる気スイッチ” が入ったのですね。それ程 不思議な力を持った作品です。画像で見るだけでも胸がザワザワします。

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さて、本日のカレンダーはブリューゲルと同時代の画家ルカス・ファン・ファルケンボルフ(Lucas van Valckenborch) が描いた『バベルの塔』(1594年)。
何とも発音しにくいお名前…💦。
ファルケンボルフ家はフランダースで最も著名な芸術家の家族で、三世代にわたる14人の芸術家が記録されており、ルカスの他に、兄のマルテン長老とその息子=フレデリクとギリスが重要な人物だったようです。

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ルカスは1560年代にも『バベルの塔』を描いているのですが、この作品はブリューゲルの『バベルの塔』を目にした後の1594年に再度描いた作品。塔の建設を命じたとされるニムロド王らしき人物が画面左下に描かれているなど、“大バベル” に影響を受けているのかもしれませんね。
何とも長閑な景色の中に描かれた「塔」。わたしは絵本を見ているような穏やかな気持ちで微笑ましく眺めることができます。

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もっと『バベルの塔』が見たい!と思っていたら、素敵な本を発見しました。

『バベルの塔』86作品を収めた絵画集!早速 読み放題(無料)で入手して、何度も何度も見ています。
(以下、ぎゅっと凝縮した乱暴な画像掲載をお許しください)

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紹介したのはほんの一部。ルカスをはじめとするファルケンボルフ家の方々の作品も複数あります。そして巻末には、ブリューゲル “大バベル” を25分割に割って各々1ページの大画面で掲載した魅力的なページもありました。
いやぁ〜、楽しい😊。
【バベルの塔】エピソードの どの段階を、どのように捉えて描いた作品なのか…、想像しながら見ているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。

①「さあ、煉瓦とアスファルトを用いて我々の街と塔とを建てよう!」
世界各地に住むように命じられていた人間が集まり、新しい技術を用いて建設を開始。
②「塔の頂を天に届かせて名をあげるんだ。消え去ることのないように!」
思い上がった人間による「天まで届く塔」建設の試み。
③静観していた神が怒りを露わにすることを予感させる気配。
④神により言語を乱された人間は混乱し、塔の建設をやめて世界各地へ散らばっていく。

神をも恐れぬ人間に対する教訓画として最もよく描かれるのは、②と③の場面。楽しむだけではなく、自分にも潜む「驕り」についてしっかり感じ取る機会にしなければいけませんね。

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今回 多くの作品を画像で鑑賞し、改めてブリューゲルの独自性と、彼が与えた影響の大きさに驚かされました。ブリューゲル以降の『バベルの塔』は、ブリューゲルが作り上げた概念から脱却できていないように思えます。
エピソード【バベルの塔】の代表作品は間違いなくブリューゲル『バベルの塔』。そして私にとって特別思い入れのある この一枚については、たくさんの資料を読み込んでしっかり勉強したいので、また別の機会に投稿します。

今日はもう少し『バベルの塔の物語』絵画集を見て楽しむことにします。
そして世界中の『バベルの塔』を展示する<バベルの塔展>の企画書を書くことにしましょうか(笑)。

<終わり>

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