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ハマスホイが求めた世界

<ハマスホイとデンマーク絵画展>、今回は本題のハマスホイ作品についてご紹介します。

2️⃣ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864−1916年)********

___「ヴィルヘルム・ハマスホイの絵は常に静けさを纏う。派手な色彩はどこにもなく、人物がいたとしても、ひっそりと、一人静かに佇んでいる。その室内を太陽が覗き込む。そこでは過ぎ去りし日々が語られ、陽光は自ずとその輝きを和らげる。(中略)ハマスホイの絵には夏も冬もない。それは憂いを帯びた、はるか昔の、遠い、遠い彼方にある、こことは別の世界のものである」__
1906年に開催された展覧会のレビュー(図録より)

まさにその通り!そして私にはこれ以上の表現でハマスホイの作品を言い表せません。
そこで、彼が影響を受けた作家を通してハマスホイに近づいてみよう!と思います。

【印象派】
ハマスホイは21歳の時に妹の肖像画を発表して画家としてデビューします。
◉『若い女性の肖像 画家の妹アナ・ハマスホイ』(1885年)*今回の展示会には出展されていません。

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落ち着いた色彩と静謐な世界観。ハマスホイがすでに自分の画風を確立していることがわかりますね。その際立った個性は当時から唯一無二のものだったようです。

しかし彼が生きた1864−1916年は、まさに印象派をはじめとする新しい流れによって美術史が動き出した時期。1891年に結婚したハマスホイは新婦イーダと共に半年ほどパリに滞在しています。
そのときに見た印象派の影響を受けなかったのでしょうか。

彼がパリから母親に宛てた手紙にこんな一文があります。
「お母さんは私が自立したスタイルを失うことを畏れる必要はありません。それは全くの杞憂です。(中略)パリに来る前にはいろいろ新しい着想があると聞いていたのですが、実際に来てみるとそれほどではないようです。私は新しい芸術よりも“古い芸術”からより多くを学ぶでしょう。」

時流に流されることなく自分の中にある何かを守っていこうするハマスホイの意志があらわれていますね。

【フェルメール】(1632−1675年)
ハマスホイが手紙に書いた “古い芸術” の一つを見てみましょう。
室内画で思い出すのがフェルメールをはじめとするオランダ17世紀の風俗画です。

図録など資料を読んでいると、確かにオランダ17世紀の室内画はインスピレーション ソースだったようです。しかしハマスホイは、友人の画家たちとは異なり 風俗画の持つ「センチメンタルで家庭的な」性質を排除しました。それによって彼の描き出す室内は生活感に乏しく謎めいた雰囲気を高めているのです。

【ホイッスラー】(1834−1903年)
ハマスホイの中で、学生時代からホイッスラーは重要な位置を占めていたようです。
ホイッスラーは、色彩と形態の組み合わせによって調和のとれた画面を構成することを重視しました。「絵画は現実世界の再現ではなく、色彩と形態からなる自立的な芸術だ」という考えを持ち、ときには地味でモノトーンに近い色彩を用いることで、”光と色彩の効果を追い求めた“ 印象派の作風とは一線を画しています。
ハマスホイの言葉「絵というものは色が少なければ少ないほど色彩的な意味において最高の効果をもつのではないか」と通じるところがあるような気がします🤔
◉ホイッスラー『灰色と黒のアレンジメントー母の肖像』(1871年)*展示会には出展されていません。

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↓ ◉ハマスホイ『画家の母親』(1886年)*今回 出展していません。

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なるほど🤔と勝手に納得しました。

【シャヴァンヌ】(1824−1898年)
ハマスホイは1888年、1897年コペンハーゲンで開催されたシャヴァンヌ展に刺激を受けたそうです。
シャヴァンヌですか…ちょっと意外でした。
↓ ◉こちら国立西洋美術館にあるシャヴァンヌ『貧しき漁夫』(1881年)

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壁画装飾家であったシャヴァンヌはタブロー画とは違う壁画本来の機能と特質を生涯をかけて追求したといいます。静謐な安定性が求められる壁画装飾の世界。なるほど、なるほど🧐

今回の展示会場に、実際にハマスホイ邸の壁に飾られていた絵がありました。ハマスホイが部屋の壁に飾った絵は少なかったというので、選ばれた一枚であると言えます。
◉コンスタンティーン・ハンスン『果物籠を持つ少女』(1827年頃)

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抑えた色調、立体感や奥行きを抑えた やや平面的な画面は 静けさと夢幻的な雰囲気に満ちています。そして少女の堅い表情によって 見る者の感情を移入させすぎない距離感を保つことができます。
壁画装飾に求められる静謐な安定性ってこういうことでしょうか?ハマスホイが愛した作品、私も大好きです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今回 いつもとは違う角度からハマスホイ作品にアプローチしてみました。
核心に迫れた訳ではないのですが、フワッとイメージを掴むことができたような気がします。
知識と表現力が不足しているため 自分の理解も曖昧で、また自分が感じたことを上手く伝えきれないのが少しもどかしいです。…頑張ります。
                                                    <終わり>

ありがとうございます😊
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3年前から美術鑑賞が趣味になり、2年前に仕事を辞めて美術館で働いています(注:キュレーターでも正規の職員でもありません💦) 2019年に滞在したパリのこと、美術に関する情報や日々のアレコレを投稿しています。
コメント (2)
ヴィルヘルム・ハマスホイとその周辺の流れ、解説ありがとうございます。
asano chiakiさま 少し調べ始めたら楽しくなりました😊読んでいただきありがとうございました💕
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