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画壇の明星・変わらないゴッホの魅力

古本屋さんで見つけた1951年〜1954年の月刊誌『国際文化画報』の特集記事
【内外 画壇の明星】について投稿します。

今回は『国際文化画報』1951年(昭和26年)6月号を読みました。

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【トップ記事】は、憲法記念日。1951年5月3日に開催された憲法4周年の式典に出席された昭和天皇陛下・皇后陛下のお写真に、“憲法万歳!” の見出しが踊っています。
“万歳” の対象となる日本国憲法は、2021年の今も全く変わっていないのです。
急成長を遂げて来た日本の70年間で、‘大きく変わった’ もの、全く ‘変わっていない’ もの…。面白いですね。
変わるべきもの、守るべきもの。。。憲法の授業を思い出します。

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さて特集記事【内外 画壇の明星】 第2回目はフィンセント・ファン・ゴッホです。紹介文には次のようにあります。

ウアンゴッホはオランダの生んだ偉大なる画家で、その特異性な色彩独特の筆致描画で有名である。これは彼の数奇を極めた生活と晩年精神病にさいなまれて自殺した悲惨な生涯とを思い合わせて見ると、そこに関連性を発見するのである。

ウアンゴッホ…カタカナ表記、いい線いってますね。
特異性な色彩」ってどんな色彩?
独特の筆致描画」の独特ってどんなの?
どんな「関連性を発見」したのでしょうか?
…とツッコミどころ満載(笑)。おそらく入手したゴッホについての文章を “ギュッと” まとめて日本語訳したのでしょう。
ある程度 ゴッホについて知っている2021年の我々は「何となく言いたいことはわかる」のですが、当時の人たちは「 ??? 」だったのではないでしょうか。
それでもいいのです。
「何じゃぁ、これは⁈」と衝撃を受けてくれたら大成功。
ゴッホという画家、そして彼の作品を見ることができるだけで素晴らしいことです。拍手👏👏👏。

しかし どうしても気になるのが、掲載されているゴッホ作品の写真。
私がインターネット上で “チョチョイっ” と入手した画像(上の段)と
雑誌に掲載されている写真(下の段)を比べてしまうと…。

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肖像画に至ってはこんな感じです。

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もしかして絵の上手な編集者がいて、現地で模写しましたか⁈ と疑ってじっくり見ると、やはりゴッホの作品です。
写真を写真で撮影することを繰り返したのか、全体的にボヤーッとしてしまっているようですね。ゴッホ「独特の筆致」を見て取ることは難しそうです。

もし、日本に居たのではこの写真(下の段)しか見られないとしたら…。
2年前 ロダン美術館(パリ)で『タンギー爺さん』(肖像画一番左)を観ている私は、
「こんなもんじゃないんだ。名作はこの目で見ないと何もわからないんだ!』と苛立ちに似た感情を覚え、すぐにでも旅立ちたくなるでしょう。
前回投稿した特集記事の梅原龍三郎氏が、全ての役職を捨てて何度も渡欧した気持ち。よくわかりました。

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それにしても現代社会を生きる我々は、本当に本当に恵まれているのですね。自宅であっという間に世界中の名作を、実物に近いクリアな画像で鑑賞できます。
場合によっては、実物ではわからない詳細な画像までをもプロの解説を交えて鑑賞できるのです。

70年で ‘劇的に成長’ した情報通信技術に感謝、感謝、感謝。

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今回は【ファッション】のページもご紹介します。
1951年6月号は水着です。

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あら。素敵!。現代の海水浴場に登場して何の違和感もないどころか、むしろレトロで可愛いかも知れません。パレオつきで体型をカバーするなど機能面でもマル◯。
ファッションの流行は繰り返す、とよく聞きますが、ファッション界が追及しているオシャレ魂は、この70年で ‘変わっていない’ のかも知れませんね。

紹介文にはこうあります。

毎年のことながら、移りかわる流行に備えて早くも1951年型の水着や海浜着の品定めが、映画の都ホリウツドで行われ、有名なデザイナーが意匠を凝らした新型が発表されました。女性の最小部分を包んだ、申譯(申し訳け)的なビキニ型の水着は、やはり一時的減少でそれこそ原子爆弾的反響を呼んだに過ぎず。
今年はやはり女性の真の美と健康を発揮する永久型のデザインに重点が置かれたものと思われます。材料は木綿地が多くプリントものや浴衣地で仕立てて御覧になったら如何でしょう

「水着や海浜着の品定め」とは、水着のファッションショーのことですね。
どうやら前年に流行った「申し訳程度に女性の最小部分を包んだ」というビキニ型の水着、そちらをちょっと見たくなりました(笑)。
そして海浜着は「浴衣地」などを使って 家庭で「仕立てて」いたのですね。今では考えられません。
【ファッション】のページ、こちらも注目していきます。

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【内外 画壇の明星】特集の第2回はゴッホでした。
そういえば、本日9月18日から東京都美術館で
<ゴッホ展ー響きあう魂 ヘレーネとフィンセント>
がスタートします。ゴッホの絵画作品 28点が来日しているそうですよ。
画家「個人の」展示会回数としてはゴッホが最多なのではないかしら?と思うほど日本でも人気があるゴッホ。
国際文化画報の記者の言葉を借りるなら、
「その特異性な色彩や独特の筆致描写」、「数奇を極めた生活」と「自殺した悲惨な生涯」が、今も昔も ‘変わらず’ に私たちを惹きつけて止まない魅力となっているのかも知れませんね。

<終わり>

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