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へレーネが愛した ‘心にしみる’ 画家たち

先日訪れた <ゴッホ展〜響きあう魂 へレーネとフィンセント>。
前回はゴッホの「功績」について投稿しました。
しかし、へレーネが愛したゴッホ以外の画家の作品も、投稿せずにはいられないほど素晴らしかったので iPadを開きました(ペンを取りました)。

今回の<ゴッホ展>は、

①【ロビー階】ゴッホ以外の芸術作品
②【1階・ゴッホ 】オランダ(素描)→ オランダ(油彩画)→ フランス時代
③【2階・ゴッホ 】アルル時代 以降

ゴッホ以外の作品を鑑賞した後に、ゴッホの作品を時代順に見て行く構成になっています。

しかし私は、ゴッホ「アルル時代」以降の油彩画を自分のペースでゆっくり鑑賞するため、朝一番の時間枠を予約して、
まず 、③【2階】へ。ほとんど誰もいない展示室でじっくり鑑賞。
それから、 ②【1階】→ 再び③【2階】とゴッホ作品を堪能し尽くしてから、
最後に、①【ロビー階】へレーネが愛し収集した「ゴッホ以外の芸術家たち」を鑑賞したのです。

いやぁ〜。この展示会構成と鑑賞順番は、今回の私にピッタリ!
お陰で これまでよく理解できなかったゴッホの魅力に気づくことができました。
そしてゴッホのあとで観る「ゴッホ以外の芸術家たち」の素晴らしかったこと!。こちらも普段は気がつけなかった魅力に酔いしれたのです。
とても心穏やかに会場を後にすることができました(笑)。

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展示会場で印象に残った作品について「出展作品リスト」に ‘ひと言Memo’ を走り書きしているのですが、今回の ‘ひと言Memo’ は、知らず知らず全て “ゴッホに比べて…” の前提条件がついているようです。

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◉ジャン=フランソワ・ミレー 『グリュシー村のはずれ』(1854年)

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Memo:「ふるさと・家族への深い愛情、感謝が伝わる」

ミレー が 自分の生まれた村の美しい情景を描いています。
ミレー だけが持つ、景色に描き込まれた精神性を感じる一枚でした。

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◉パウル・ヨセフ・コンスタンティン・ハブリエル『それは遠くからやって来る』(1887年頃)

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Memo:「繊細な景色。 心にしみる!」

この作品、好きです。
ハブリエルさん、これからもよろしくお願いします。

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◉アンリ・ファンタン=ラトゥール『静物(プリムローズ、洋梨、ザクロ)』(1866年)

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Memo:「洗練された静けさ。上品で抑えた色彩の調和」

ゴッホ作品を鑑賞した後のラトゥールは格別です(笑)。
ラトゥールの描く 花・果物や女性たちは、カンヴァスに静かに、しかし確かに存在しています。
まるで本物⁈
いいえ、ラトゥールのまなざしと筆運びで描かれたモデルたちには、実物を見ている時には感じられない愛おしさがあります。「繊細な」花々、「丁寧に育てられた」果物、そして「匂い立つような」女性たちは気品に溢れているのです。

ゴッホの対極にいる画家がラトゥールとスーラ(後述)ではないでしょうか。
これまでのnote投稿で、ラトゥールの作品や奥様のことについて少しだけ触れたことはありますが、画家アンリ・ファンタン=ラトゥールについてしっかり資料を読んだことはありません。近いうちに勉強してみたいです!

へレーネもラトゥール作品を特別に愛したそうですよ。

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◉ジョルジュ・スーラ『ポール=アン=ベッサンの日曜日』(1888年)

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Memo:「スーラだけの世界別次元の静けさ」
久しぶりにスーラの描いた、誰も寄せ付けない異次元の世界に迷い込みました。

点描・視覚混合の手法で描かれた新印象派と呼ばれる作品は数あれど、スーラの作品は何かが違います。
スーラの死後も新印象派の理論を極めたシニャックの作品は、色が鮮やかに見えるだけでなく、景色が生き生き・キラキラ輝いているように感じます。
スーラ、シニャックに影響を受けた新印象派・他の画家たちも、手法は同じなのですが、それぞれの画家の感情や個性を感じ取ることができるのです。

しかしスーラは、永遠に時が止まったような、どこか遠い惑星の風景であるかのような不思議な世界を描き出しています。彼の作品を前にするとき、いつも “無音”。「しーーーーーん」という “無音” の音が聞こえてくるようです。
へレーネは手紙にこう書いています。

スーラは、芸術の精神的高みに到達しようとして点描技法を生み出した人です。彼はモノを静かに、より深く見るために、カンヴァスに点を重ねるようにして、色を塗りました。彼は素晴らしい精神の持ち主であり、成功者です。それは理論的にではなく、心からそうしているからです。」
親密すぎず、洗練されすぎて難解だということもありません。静けさのなかの静けさがあり、特別です。(AERA『ゴッホ展』より)

1859年生まれ、1891年31歳で亡くなったスーラ。
1853年生まれ、1890年37歳で亡くなったゴッホ。
同じ時代を生き ともに早逝した二人は、制作活動に強烈な情熱を傾けました。
しかし、描き出した作品は全く違うモノ。かたや激しく かたや誰よりも静かに…。
どちらの作品も愛し、収集したへレーネさん。お見事です!

おまけ)
これまでスーラについて投稿したうちの一つに、『点描のフレーム』があります。今回の展示作品に点描のフレームを見つけて、嬉しくて小躍りしました。

↑ この投稿をするために、関連資料を読んでスーラのことを理解した「つもり」になっていたのですが、まだまだスーラの魅力を解明できていません。
また勉強したいです。

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◉アンリ・ヴァン・ド・ヴェルド『黄昏』(1889年頃)

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Memo:「点描…だけど鮮やかさを目指してない?好きな色合い

新印象派の様式で描き始めたヴェルドは、ミレーやゴッホの作品を見て影響を受けていたそうです。
しかし1892年には描くことをやめ、その後は建築家とデザイナーとして大成功したそうですよ(図録より)。

今回展示されていたヴェルドの『黄昏』について、へレーネは「魅惑と詩情で満たされた見事な解釈」と語っています。
私の胸に染み入る『黄昏』。哀愁を感じます、そしてこの作品好きです。

◉ヨハン・トルン・プリッケル『花嫁』(1892-1893年)

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Memo:「だれ?不思議な世界。好き」

ヴェールの花嫁の右横には、十字架上のキリストの姿が描かれています。宗教的かつ神秘的な作品ですね。
プリッケルは象徴主義的作品を描いていたのですが、『黄昏』を描いたあと 建築家に転身したヴェルド(前述)の影響を受けて、プリッケルは装飾美術の制作に集中したそうです。

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以上、お気に入りの作品について “ひと言Memo” を “note備忘録” へと記録させてもらいました。

特定の画家の作品だけを展示した<◯◯展>や、
特定の美術館所蔵作品から 企画・開催者がテーマを設定した<◯◯美術館展>は、美術の勉強になって大好きです。
一方、個人コレクターのコレクションを垣間見られる<◯◯コレクション展>は、ただただ楽しいです。
今回の<ゴッホ展>はそのどちらの要素もあって大満足でした。

クレラー=ミュラー美術館のHP(日本語)を覗いてみたら、今回来日していないゴッホ作品はもちろんですが、私の好きなスーラ作品、私の好きなモンドリアン作品などなど…。あるわ、あるわ。凄いです!
約20,000展のコレクションのうち、7,000点以上の作品の検索(日本語なし)ができますよ。

へレーネ・クレラー=ミュラーは、
強い精神力を持って制作に情熱を傾け、自らの信念や感情を作品に表現した画家を愛したのではないでしょうか。
私の感性を揺さぶり、“心にしみる” 作品が多いような気がしました。

訪れたい美術館のリストに「クレラー=ミュラー美術館」と書き加えました。

<終わり>

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