巻菓子は時代と国境を越える
日めくりルーヴル 2020年8月19日(水)
『巻菓子のある静物』(1630−1635年)リュバン・ボージャン
御中元で頂いた <ヨックモックのシガール>を初めて食べた時、仰天しました。
バターやバニラの甘い香りにうっとり。繊細に巻かれた薄いラング・ド・シャ生地の中はナント空洞ではありませんか‼︎
質より量を求めていた幼い私の「お菓子概念」に革命が起きた瞬間です。
(↓ 写真はヨックモックのホームページから)
な、なんだ、コレは!なんと贅沢な食べ物でしょう。
口に入れて、思い切りボリボリ噛み砕いたり、
上あごと舌でサクッと軽く崩したり、
噛まずに溶けるまで口の中で転がしてみたり。
時には袋から出した1本を口に加えて、煙草の真似事をして遊んだり…。
楽しい、そして美味しいのです。
お気に入りは、巻かれたロールを下の歯で小刻みに剥がしながら、生地の薄さと ‘クルクル‘ を時間をかけて堪能する食べ方。職人が慎重に焼き上げ、丁寧に巻き包んで完成させた作品を丸裸にしていく、ちょっとイケナイ感じにワクワクしました。
それまで経験したことがない形状と食感に酔いしれたのです。
1本また1本と、母親に止められるまで何本も食べ続け、「シガールは100本でも食べられる!」と変な自慢をしてました。
本日の日めくりカレンダーは、
『巻菓子のある静物』(1630−1635年)リュバン・ボージャン
17世紀フランスの宗教画家 リュバン・ボージャン(Lubin Baugin)。初めて名前を知りました。
これは現存している静物画4作品のうちの1つだそうです。
テーブルには藁で包んだ瓶とワイングラス。そしてお盆に乗っている紙のように薄く焼き上げられた葉巻状のお菓子が、静かに描かれています。
ルーヴル美術館に展示してあったはずですが、私は全く記憶にありません💦
しかし、この小さくて静謐な作品を見逃さなかった人物がいます。
ヨックモックの創業者 藤縄則一氏。
軽い口当たりと繊細な口溶けの商品を開発するため クッキー生地を薄く焼き上げたのですが、非常に壊れやすいという難問に悩んでいた藤縄氏。
この作品を見てヒントを得ます。
割れやすいクッキーの強度を高めるための形状は、ボージャンの描いた葉巻状『巻菓子』だったのですね。
1636年、ボージャンがイタリアに出発する前に描かれたこの作品は、1954年にルーヴル美術館が取得しました。
そして1969年に<シガール>がこの世に生まれたのです。
一つの芸術が、330年以上の時を経て また新たな芸術品を誕生させたのですね。
無性に<シガール>が食べたくなりました。
<終わり>
追記
今年10月25日、東京・南青山に「ヨックモックミュージアム」が開館します。
展示される500点以上のピカソ・セラミック作品は、ヨックモックグループが30年以上かけて収集してきたコレクションだそうです!
ずっと美術と関わってきた企業なのですね。