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勝手に愉しむ❗️<その11> 〜「アンジェリカ」アングルからスーラへ〜

The NATIONAL GALLERY, LONDON
<ロンドン・ナショナル・ギャラリー展> 

開催が延期されている<ロンドン・ナショナル・ギャラリー展>。
入手できる情報をもとに予習しながら一人で勝手に愉しんでいます!

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【第7章 イギリスにおけるフランス近代美術受容】②
     ー French Modern Art in Britain ー

特設サイトで公開されている 第7章の出展作品リストです。
 ◉アングル『アンジェリカを救うルッジェーロ』
 ◉コロー『西方より望むアヴィニョン』
 ◉シェフェール『ロバート・ホロンド夫人』(<その10>で紹介済み)
 ◉ファンタン=ラトゥール『ばらの籠』
 ◉ピサロ『シデナムの並木道』
 ◉ルノワール『劇場にて(初めてのお出かけ)』
 ◉ドガ『バレエの踊り子』
 ◉モネ『睡蓮の池』
 ◉ゴッホ『ひまわり』
 ◉ゴーガン『花瓶の花』
 ◉セザンヌ『プロヴァンスの丘』『ロザリオを持つ老女』
以上 12点。新古典主義から始まってポスト印象主義まで、豪華なラインナップですね。
【冒頭の写真は左・アングル『24歳の自画像』(1804年)、右・スーラ(1888年撮影)いずれも今回出展ありません】

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日本人もよく知っている画家ばかりなので、特集雑誌やWEB上でも多くの作品の解説が掲載されています。
ということで、私は 連想ゲームのように作品を観ていきたいと思います。

スタートはスーラ(今回出展ありません)の作品です。
『グランド・ジャッド島の日曜日の午後』で有名な新印象主義ジョルジュ・スーラ(1859−1891年)が、19歳の頃に描いたのが
『アンジェリカ(アングルの模写)』(1878年)(「スーラ」TASCHENより)

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以前 スーラの資料を読んでいる時にこの作品を見つけて、アンジェリカのポーズと表情がなんとも印象的で頭に焼きついていました😅
スーラは芸術を志し国立美術学校(エコール・デ・ボザール)で、アングルの弟子であったアンリ・レーマンの門下に入り 古典的な教育を受けたそうです。
スーラも最初は「線こそが芸術の基本、色彩は副次的なものである」という教育を受け入れていたのですね!この作品もアングルの模写ですからね。

そして、今回の展示作品がコチラ。
出展番号「50」ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル『アンジェリカを救うルッジェーロ』(1819−39年)

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おおーっ!アンジェリカがここにいました❗️

16世紀の叙事詩『狂えるオルランド』に出てくる物語で、生贄として海の怪物に捧げられるアンジェリカを、ルッジェーロが助けようとする場面。
アンジェリカの描写は、古代彫刻のように理想的な美しい姿態をしている ”アングル裸婦“ (←勝手に命名)です。しかしどこか人工的で少し首が太くて目つきが独特です…ちょっと怖い💦
怪物から逃れようともがいているはずのアンジェリカですが、動きが消失し全てが凍りついたような印象で画面がバラバラ、統一感に欠けると当時は不評だったそうです。

アングルが最初にこの題材を描いた作品(ルーブル美術館所蔵)は、1819年のサロンで『グランド・オダリスク』と共に展示され、1855年にはパリ万国博覧会に出品されたそうですよ❗️
その後 この主題でいくつかのバージョンを描いたのですが、そのうちの一つが縦型の縮小されたバージョンの本作(ロンドン版と呼びます)です。
最初の作品であるルーブル版(左)と比較してみましょう。

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実物のサイズは、
左のルーヴル版(1819年)は 175×190cm
右のロンドン版(1819−39年)は 47.6×39.4cm、縦長で小さいのですね!
背景の岩場や怪物の描写こそ違いますが、アンジェリカの表情やポーズは同じように見えます。批判されてもアンジェリカの描写は変えない!アングルのこだわりがココにあったのかも知れませんね。

若いスーラが「アンジェリカ」を模写したは エコール・デ・ボザール時代だというのですから、おそらくルーヴル版でしょう。
ルーヴル美術館で「線」を重視しながらアングルの「アンジェリカ」を模写する若きスーラ。想像するだけで少し興奮します😤

さて、出展作品(ロンドン版)は、1894年にエドガー・ドガによって購入されています!あらま、ドガが持っていたのですね。
ということで、アングルとドガの関係については次回へ。

                             <その11・終わり>

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