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4500年前の志(こころざし)を引き継ぐ

日めくりルーヴル 2021年3月21日(日)
『書記坐像』紀元前2600〜2350年頃

1000年〜2000年前に 人間がどのように生活していたのか。
3000年〜4000年前は この地球がどんな景色だったのか。
人類はいつ、どのようにして生まれたのか…。
インターネットで調べると、いろいろな情報を読むことができ、場合によってはCG画像を見ることもできます。
それだけではありません。太陽までの距離、他の惑星の位置、地球の重さまで。現代では様々なことが解明されているのですね。
でも、それって本当ですか?誰も見たことがないのに…。

地球は、もっと大きくて(←物理的に)何でも思うがままにできて 永遠を生きる何者か(やはり神様⁈)によって 実験的に作られた箱庭なのではないでしょうか? そして私たち人間は、ただの実験用コマなのかも知れません。
もしこのまま人間が好き勝手して行き詰まってしまったら、全部をグチャッと握りつぶしてやり直し。また何千年もかけて社会を作り上げさせる遊びなのではないでしょうか?
そうだとしたら、地球の存在や過去の歴史だって そのお方によって造られた単なる設定のひとつ。宇宙の神秘について考えたり、はるか昔の人類に思いを馳せることに 何の意味があるのでしょうか?

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2019年10月に訪れたルーヴル美術館の古代エジプトエリア。ケースの中に本日のカレンダーの作品がありました。1850年にスフィンクスの参道近くで発見されたこの人物について、名前、称号、生きていた正確な時代について何も分っていないそうです。

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あぐらを組んで、背筋をまっすぐに伸ばした彼は、発言者の言葉をひと言も聞き漏らさず記録しようとしています。あぐらを組むことで腰布がピンッと張られ、書記台の代わりとなっていますね。左手はパピルスの巻物を持ち、右手で筆を握りしめている形をしています。賢そうな目、薄い唇 … 身分の高い人なのかもしれません。
それにしても色が鮮やかなのに驚かされました。オークルの赤色をした全身に、白色の腰布、そして髪の毛と目の縁の黒色が全体をキリリっ✨と引き締めています。高さ53.7cm、幅44cm、奥行き35cmの小柄な人物は、与えられた役目に誇りを持ち、目的を成し遂げられるよう真剣に取り組んでいます。
現代人に発掘され 美術館のケースに入った彫像なのですが、そこに崇高な精神が宿っているように感じました。

そして、その瞳には水晶が嵌め込まれています。
近づいてその澄んだ瞳をのぞき込んだ瞬間に、彼に私の愚かな邪念をすべて見透かされてしまいました。少したじろぎました💦。

4500年ほど前のエジプト、高い志(こころざし)を持って真摯に自分の役目を全うしようとする人物がいたのです。そこに疑いの余地がないことをガツンと思い知らされました。
現実を生きているはずの私の存在の方が怪しく思えるほどでした。

古代エジプトエリアでは、はるか昔のはるか遠い地で人類が生活し、そこに芸術が存在していたことを、奇跡的に残された品々が物語っています。愛らしい形や色の遺跡には迷いがなく、まっすぐな思いが伝わってきました。
『ルーヴルからの贈り物』より

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『書記坐像』の人物がそうであったように、私たち人類は自らの志(こころざし)を持ってそれからの4500年を生きてきたのです。
たとえ万物の支配者が地球という名の箱庭で遊んでいるのだとしても、
人類という実験用のコマに試練や快楽を与えて眺めているのだとしても、
私たちにできることは、いろいろな機会に感謝しながら真摯に向き合って最善を尽くすことだけしかないのですね。
『書記坐像』が持つ水晶の瞳に見つめられても、狼狽えることがない自分でいられるように。まっすぐに生きていきます。

<終わり>

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