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勝手に愉しむ❗️<その12> 〜 「線と写真」 アングルからドガへ〜


The NATIONAL GALLERY, LONDON  〜「線と写真」アングルからドガへ 〜
   <ロンドン・ナショナル・ギャラリー展> 

開催が延期されている<ロンドン・ナショナル・ギャラリー展>。
入手できる情報をもとに予習しながら一人で勝手に愉しんでいます!

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【第7章 イギリスにおけるフランス近代美術受容】③
 ー French Modern Art in Britain ー

アングルの出展作品 “アンジェリカ”(冒頭写真・左)。ロンドン・ナショナル・ギャラリーの所蔵となる前、これをドガが購入していたと書きました。
冒頭写真・右はドガ『画家の自画像』(1855年)です(今回出展なし)。

これまで ドガに特に強い興味があったわけではなかったので💦
▶︎バレエの踊り子や馬を描いた作品が多い
▶︎たくさんの彫刻やパステル画も制作している
▶︎印象派に分類されるけれど、他の印象派画家とはちょっと違うかな
といった程度の情報しか持ち合わせていませんでした。

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まずは第7章で観ることができる作品から始めます。
◉出展番号「56」エドガー・ドガ『バレエの踊り子』(1890−1900年頃)

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バレエの練習中でしょうか、片足を上げてアラベスクのポーズを取っていますが、皆さんちょっとバラバラですね。手前の踊り子はトーシューズの紐を締め直しているところ。一瞬の動きを完璧にとらえることを追求し、部屋全体の様子ではなく ほんの一部分を切り取った構図。まるで「あっ、この瞬間を収めたい!」と慌ててシャッターを押したスナップショットのようです。
やはり光の変化を追い求めて一瞬の時を描こうとした印象派と共通しています。
“ドガはきっとマネのように筆が早く、気に入ったシーンを即興的に描いたのだろうなぁ”、と勝手に思っていました。

しかし ドガは古典名画を愛し、思いつきや偶然を嫌った画家だったそうです。
戸外で仕上げるなんてもってのほか、アトリエでデッサンを繰り返し繰り返し描き、さらに推敲に推敲を重ねる画家。 … 意外でした。

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今回は資料を参考にして、興味あるポイントだけを年表風にまとめてみました。
エドガー・ドガ(1834−1917年)
◆パリの裕福なブルジョア家庭に生まれる
  →40歳の時に父親が亡くなるまで、自由に美術に打ち込めた。
◆21歳 尊敬するアングルに、
線を引きなさい、たくさんの線を。そうすれば良い画家になるだろう」
と助言をもらい これを忠実に守り続けた
◆22歳、約3年に及ぶイタリア旅行に出発
  →初期ルネサンスの名画を研究し 古典主義的な規律と理知的な訓練を積む  
  →旅行中の23歳、ギュスターヴ・モローに出会い親交を結ぶ
◆28歳 ルーヴルで偶然マネと出会い 若い画家や文筆家と交流するようになる。
◆30代半ば、浮世絵の ‘大胆な構図’ に影響を受ける
◆36歳、目の異常に気づく。この頃サロンと決別する
◆40歳 第1回印象派展に10点を出品する
  →その後、第7回を除いてすべての印象派展に参加することになる。
◆52歳 第8回印象派展に15点ほど出品
  →この頃にゴーガンと親交。
◆61歳 お金に困っていたゴーガンの作品8点を購入
  →この頃 小型カメラで写真を撮影することに夢中になる。
◆83歳 死去。

ドガのことを自分なりにザックリ捉えると、
古典主義的な基礎と精神で 線を描く(アングルより)
+ 自分だけの武器を鍛え上げる(モローより)
+ 近代生活を映し出す新しい絵画を目指す(マネより)
+ ‘意外な切り取り’ や ‘思いがけない構図’(浮世絵より)
+ 無作為の効果を狙う(写真)…。
ふむふむ🤔

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アングルとドガについて調べていると、いずれにも写真に関する言及がありました。
当時の写真は現像に時間がかかり 仕上がりもぎこちなかったそうですが、対象を忠実に表現する点で将来は脅威になりうると感じていたはず。
アングルは当初「写真を禁止せよ」と政府に訴えていたほど敵視していたのですが、作品『泉』は モデルを写真撮影させて制作に利用したそうです。

画像2
ドミニク・アングル『泉』

ドガも当初はどちらかと云えば写真に否定的な態度だったのですが、次第にスナップショット的な絵画を取り入れたり、制作時に写真を利用していた可能性があるそうです。そして自らの写真や友人の写真を撮影して残しています。

特に注目したいのは ドガについての記録の中に
「自らが所蔵するアングル作品と、アングル美術館が所蔵するアングルのデッサンを<写真で複製>していた」という記述があること。
もしかしたら「自らが所蔵するアングル作品」とは、前回の投稿で触れたアングルの “アンジェリカ” かも知れない!と勝手に興奮しておりました。

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長くなりました💦
次回は、ドガが 第8回(最後の)印象派展に出品した頃から親交を結ぶようになったゴーガンについて投稿したいと思います。

        <その12・終わり>

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