ありがとう、 コービー。
今朝、目が覚めてスマホを開くと同時にそのニュースは飛び込んできた。
私が寝ぼけているのだろうと思い、一度スマホを閉じた。
もう一度開く。
Kobe Bryant dies in helicopter crash with 13-year-old daughter Gianna.
「コービー・ブライアント、13歳の娘ジアーナと共にヘリコプター墜落事故死」
日本時間の私たちが目を覚ます数時間前の出来事だった。Kobeがコーチを務めるユースバスケチームの試合へ向かうヘリはLA郊外で墜落し、搭乗していた9人全員が亡くなった。
状況がつかめない私は弟ふたりにメッセージを送った。ひとりはLA、ひとりは東京に住んでいる。
メッセージと言っても言葉が見つからないので「Kobe」とだけ送ると、即座に「I know damn」と「Ya we're pretty sad over here」とそれぞれ返ってきた。
それ以上のやりとりはできなかった。
子供の頃、私たちはいつも「パープル」と「ゴールド」を着ていた。
弟たちの部屋の壁という壁は、Lakers選手のポスターに覆われていた。歴史に名前が残るスタープレイヤーたち、カリーム(Kareem Abdul-Jabar)、マジック (Magic Johnson)、シャック (Shaquille O'Neal)、そして若手の天才プレイヤー、コービー・ブライアント (Kobe Bryant)。
LAの人間にとってLakersは最大のプライドで、街全体がLakersの成績に一喜一憂した。
高校卒業直後にNBAデビューを果たしたKobeは、4年前にNBAを引退したばかりの41歳。名前は本当に「神戸」から来ている(正確に言うと「神戸牛」から)。引退後、子供たちを中心とするセカンドキャリアを歩み始めたところだった。
ショックが広がる中、Lakersの本拠地「Staples Center(ステイプルズ・センター)」では音楽界のビッグイベント、グラミー賞の授賞式が始まっていた。LAのダウンタウンに位置するアリーナにはファンが集まり、LA中の電子掲示板がKobeの写真に変わった。
Kobeは「バスケ」を越える存在だった。日本人選手で言うと、イチロー選手のような存在。
グラミー賞の司会をつとめたアリシア・キーズは授賞式の冒頭でこう話した。(映像は下です)
Here we are, together, on music's biggest night, celebrating the artists that do it best.
「今夜は音楽界にとって最も大切な夜、アーティストたちを祝うセレブレーションです」
But to be honest with you, we're all feeling crazy sadness right now. Because earlier today, Los Angeles, America, and the whole wide world, lost a hero.
「でも恐らくみなさんも、とてつもない悲しみを感じているのではないかと思います。今日、ロサンゼルス、アメリカ、そして世界の人々がヒーローをひとり失いました」
And we're literally standing here, heartbroken, in the house that Kobe Bryant built.
「そして私たちは今、まさに「コービー・ブライアントが立てた家」に立っています」
The house that Kobe Bryant built.
Kobeが建てた家。本当にそうだった。
KobeのNBAデビューが1996年、Lakersが長年ホームとしていた近くのForum(アリーナ)からStaples Centerに移ったのが1999年。引退までの20年間、コービーはレイカーズを、そしてステイプルズ・センターを離れることはなかった。
Kobeが作った「家」に私たちは通い、彼とチームを応援し、優勝に沸き、悔し涙を流し、小さなボールを目で追いかけ続けた。パープルとゴールドのユニフォームを着て、キャップをかぶり、Kobeがコートに立てば、自分たちまでなんでもできそうな気持ちになった。
そのステイプルズ・センターのステージでアリシア・キーズと久々の登場のBOYZ II MENが名曲「It's So Hard To Say Goodbye To Yesterday」を歌った。
客席に座る、主役であるはずのアーティストたちもほぼ放心状態。今年のグラミー賞は、Kobeへのトリビュートとなった。
* * *
また本日行われた全てのNBAの試合では、選手たちも先輩でありヒーローへの追悼を捧げた。
試合開始のジャンプボールに勝ったチームは24秒間ボールを止め、ペナルティーを受けた(通常は24秒以内にシュートを打たなくてはいけない)。相手チームにボールが渡ると、また24秒間、ボールは止まった。
背番号24のKobeとのお別れだった。
一日立ったがまだ信じられないというのが正直なところだけれど、思いつく言葉はやっぱり、Thank you Kobe。
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