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そしてそれは時に、人生を変える


NYへきて興味を持ったことのひとつに
障害を持たれる方への観劇サポートの手厚さがある。

ブロードウェイのほとんどの劇場、
オペラハウス、コンサートホール等で、
難聴の方へ
聴覚障害をもたれる方へ
弱視力の方へ
視覚障害をもたれる方へ
車椅子を必要とされる方へ
自閉症をもたれる方へ
身体的、認知的、感情的な障害をもたれる方へ
のサポートが行き届いている。

全ての人の尊厳を尊重すること。
[全ての人が人として生き、存在していることをかけがえのない価値として大切にすること]
全ての人が平等に、快適に、独立性も持って生きる権利を持っていること。
ブロードウェイは、
障害に関係なく、誰もが舞台芸術にアクセス出来る必要があるとしている。

音声ガイドや、手話通訳、字幕サポート、、
自閉症をもたれる方が観劇される際は
不快に感じられるかもしれない音や、ストロボライトの低減など調整が加えられる。
公演中、席を離れる必要がある方の為に専門家が常に現場にいてリラックスできるエリアを作っている。

また、最近ではアプリを使って様々な国の言語の字幕をみながら観劇する事も出来る。
[日本語に対応しているミュージカルも沢山ある]

宝塚歌劇団も2021年6月から公式に鑑賞サポートタブレットの貸し出しをスタートさせたが、
日本ではまだまだサポートの行き届かない劇場が多い。

手話の様に踊りたいという気持ちがいつもあった。
踊りが言葉の様に、
目で言葉が聞こえるように。
目で音楽が聞こえるように。

私がこう意識していた理由のひとつに祖父の事がある。
祖父は耳が聞こえなかった。
しかし私が宝塚へ入団したことをとても喜び、観劇に来てくれた。
初舞台を踏んだ2008年の事である。
ちょうどその頃PSPに字幕を流す事が出来るソフトが開発され、
これを使って宝塚を観劇出来ないか。
仲間と共に劇場に問い合わせてくれたのだ。
前例のない事に、最初はあまりいい返事をもらえなかったとの事だが、約3週間にわたって交渉を重ね、どうにか実現できる方法をと劇場も手を尽くして下さったそうだ。
そして史上初!PSP字幕付き、宝塚観劇を叶える事が出来た。

その時の事を、祖父と一緒に観劇された方は
本当に感動して、泣きました。
と語っていた。

字幕観劇を実現させるにあたり、当時は沢山の苦労があったのだという。
字幕を流す早さ、タイミングなど、
観劇当日まで試行錯誤を重ねてくれたそうだ。

台本が掲載されているル・サンクが発売されていたため、事前に芝居の台詞を入力する事は出来たが、
ショーの歌詞は全て掲載されていない為分からないままの所があったり

劇場から、
万が一、他のお客様からのご意見が多くなった場合はPSPの利用が出来なくなる可能性もある。と言われていたので
[私達の座席近くの皆さまへ]という説明書を作って開演前にご理解頂いたり、と

そこまでして観劇に来てくれた事が本当に嬉しかった。

ようやくと言うべきか。
それから13年経って、公式に鑑賞サポートタブレットの貸し出しが始まり、ぎりぎり、私の在団中にそれが実現した事も祖父に報告したい。
孫を想ってくれたおじいちゃんの気持ち、行動力が、宝塚をもっとたくさんの方へ楽しんで頂けるきっかけとなった事を心の底から誇りに思う。

最近ではライブ配信があり自宅からも舞台を観られるようになり、より多くの方に楽しんでもらえるようになった。
これも本当に素晴らしい事だと思う。

しかし欲を言えば、私は
劇場でしか感じられない何かがあると感じているのだ。
聞こえなくても、
見えなくても、
全てが分からなくても、
その場に参加してこそ感じるものがある。
舞台は客席の皆様も含め、その場にいる全員で作るものだからだ。
人の身体を通して発されるメッセージ、
その瞬間だけ味わえる一体感に心を動かされる。
そしてそれは時に、人生を変える程大きな衝撃を与えるのだ。

舞台は何の為にあるのだろう。
シンプルに、
障害をもつ、もたないに関係なく、全てのお客様に楽しんで頂いて、幸せな気持ちで帰って頂く為にあるのではないだろうか。

どうか生の舞台を劇場で沢山の方に観てもらいたい。経験してもらいたい。

これから先、もっとサポートが進んで

世界にただひとつの宝塚

日本にしかない宝塚

人生を変えるパワーのある宝塚が

もっと沢山の方の毎日を彩る事が出来たらと願う。当たり前に。全ての方々に扉を開き、誰もが安心して観劇できる日がくる事を信じて。

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