犯罪被害者等給付金と過失犯

犯罪被害者等給付金は、過失犯は対象外

 犯罪被害者等給付金(犯給金)について、一度記事にしています
 そこでも書いていますが、犯給金の対象犯罪行為で重症病を負った方や、亡くなってしまった方のご遺族となりますが、その犯罪行為は故意犯に限られています過失犯は対象となっていません(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(、以下「犯給法」といいます。)第2条第1項括弧書き)。
 被害者からみれば、加害者が故意であっても過失であっても被害の大きさは変わらないのに、なぜ故意犯に限定されているのでしょうか。

過失犯が対象外となっている理由

 過失犯が対象から外れているのは、過失の場合は範囲が広く、対象となるかどうかの判断が難しい事案が多くなるためとされています(平成18年10月24日警察庁犯罪被害者支援施策「経済的支援に関する検討会」第8回議事要旨)。
 たとえば、「100年に一度の強烈な台風で屋根が飛んで通行人がケガをした」場合、災害による被害と考えることが多いです。しかし、実は屋根が老朽化していて飛びやすくなってるのを家の人が放置していた、となると過失によるケガの可能性も出てきます。
 明らかな過失犯というのもある一方で、過失と言えるか判断が難しいケースも少なくないのです。

 また、過失犯の多くは交通事故ですので、その場合は自賠責(もしくは政府保障事業)が使えます。犯給法の補償は自賠責や労災を参考にできていて、犯給金は自賠責や労災より小さいのが通常ですので、自賠責が使えるのであれば犯給金は不要となります。犯給金が自賠責より小さな補償でいいのかというところは問題だと思っていますが。
 その他、労災として補償を受けられる場合もありますし、過失について広く賠償責任を補償する賠償責任保険も普及してきていますので、そうであれば、犯給法で過失犯についても補償する必要性は低いと考えられています。

それでも過失犯に犯給金は不要ではない

 ただ、それでも犯給金を必要とする事案はあります。賠償責任保険が普及してきているといってもまだまだですし、加入を強制できるのかという問題もあります。近年自転車保険が条例で義務付けられるようになってきましたが、自転車保険では自転車を含む交通事故以外は対象とならないことが多いです。
 特に、過失犯の中でも故意に近い「重過失犯」については、保険等の対応も難しい場合もでてきますので、ぜひ加えてほしいと個人的には思っています。

 ※追記 2020年10月に大阪の商業ビルから高校生が飛び降り自殺を図った際、路上にいた通行人が巻き添えで亡くなった事故で、高校生を容疑者死亡のまま「重過失致死」容疑で書類送検したとニュースがありました(2021年1月7日読売新聞オンライン)。
 こうした事故の場合、重過失でも過失犯ですから犯給金は支給されません。もう少し、法の隙間を埋める法改正がなされることを望みます。

以上