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自分で仕入れた商品を、自分で売るのが楽しい。まるで八百屋なローソン

 全国にあるローソンのオーナー・クルーに、マチとご自身との関わりをインタビューする企画「#マチのほっとステーションをつくるひと」。
 
 今回は、愛知県の新城市でローソン新城庭野店を経営するオーナー、松井義明さんにインタビュー。新城庭野店は、全国でも珍しい「八百屋みたいな」ローソンとして、SNSでも話題になるお店です。松井さんに、野菜を通じたマチ、お客様への想いを聞きました。


代々受け継いできた松井商店と、ローソンの看板を掛け合わせた店舗経営

本日はよろしくお願いします。松井さんは、このお店の三代目だとか。ローソンを始めるに至った経緯を伺えますか?

 もともとは松井商店という名前で、祖父が戦前から始めたお店でした。当時はお店ではなくて、配給場ですね。精米所だったので、最初はお米からスタートして、お酒やらなんやらと。

その松井商店の土台を持って、ローソンに。ということですか?

 ローソンの前は別のチェーンの看板を掲げていたのですが、18年前にローソンに加入しました。前のチェーンでは、ほぼ個人店みたいなもので、仕入れも販売も全部、自分たちで実施していたんですね。でも、この辺りも過疎化が進んで、問屋さん減ってきたりして、仕入れが難しくなってきた。お客様に満足いただける十分な商品を置くために、ローソンに加盟しました。昔から利用してくださっているお客様は、今でも松井さんのお店、って言って来てくれますね。

なるほど、時代の流れということですね。

 量販のお店が流通の主流になってしまったので、問屋さんに問い合わせしても在庫がない。そんな状態に  なったら満足に商売できないですからね。昔はこの辺りも八百屋さんなんかがあったりしたのですが、個人で経営しているお店はどんどん閉まってしまって。

そんな状況を見て、野菜の取り扱いを始めたということですか?新城庭野店は、野菜を多く取り扱うお店として有名だと聞きましたが。

 野菜はローソンを始める前から取り扱っていましたね。個人店からの流れもあって、自分で仕入れて値を  付けて売る。それが好きなので。でも、最初はこんなに大規模ではなくて、お店の一角で小規模に始めただけでした。はじめは売れないと思ったんですけどね。それでもはじめてみると、お客様からだんだんと品揃えの要望をいただくようになって、あれもこれもと仕入れていったら取り扱う野菜の種類が増えていって、いつの間に店頭にバッと並ぶようになってしまいました。


地のものにこだわった野菜は、自分のお店らしい並べ方で販売

最初に扱ったのはどういったものか覚えていますか?

 この店が7月に開店したので、夏商材としてスイカの玉売りから始めました。そこから梨を扱って、冬にかけて野菜が出てきたので、そこから野菜を入れて、という感じだったと思います。

夏野菜は扱わないのですか?

 扱わないことはないのですが、数は多くないですね。青果市場に行って仕入れているのですが、基本的には地元のものを多く扱っているので。愛知県は、夏場は野菜があんまりないんですよ。キャベツなんかが有名ですが、愛知県は冬の野菜が多いかもしれませんね。

地元へのこだわりは、やはり地元のご出身だからですか?

 それもあるのですが、基本的にうちの野菜は、青果市場で買い付けているんですよね、自分で。そうすると、必然的に地のものが集まってくる。スーパーは、色んなルートから仕入れて、お店に必要な数を並べるんですね。それで、足りないものを地元の市場から卸して、追加で並べていく。
うちはコンビニなので、そこでは勝負していない。市場で自分が良いと思ったものを仕入れて並べる。そんな感じです。冬はキャベツや白菜、ワラビなんかも扱っています。

先程、店先の野菜を見させていただいたのですが、どれも安くて大きい。やはり、地のものにこだわるから安いのですか?

 うちで仕入れているのは、地のものの中でも、いわゆる一等品と言われるものとはちょっと違って、見た目が少し悪かったり、キズがあったり、大きさがマチマチだったり。そういったものをたくさん仕入れて置いているんですね。味は変わらないですよ、一等品と同じようにおいしい。でも、大手のスーパーさんでは見た目的に扱えないものだから単純に安いんです。それを箱で売ったり、袋詰めしたり。
 シニアの方でも元気な方が多いので、野菜や果物も丸のまま、しっかりと料理して全部食べちゃう。店先で見えるように、箱や袋でバッと並べて、目に飛び込んでくるようにしています。

確かに、店先の野菜がアイキャッチになって興味を惹かれます。

 最近では、近所の待ち合わせ場所になったりもしているんですよ。「野菜のローソンで待ち合わせね」なんて言われていたりして(笑)。人参10kgや三ヶ日みかんを箱に入れて店頭で品揃えしているので、お客様からは「車にすぐ積めるので便利だね」といった声をいただくこともあります。

そうすると、お店には入ってくれないということもあるのではないですか?

 そんなこともないですよ。野菜を置いているからこそ売れるものもあります。分かりやすいのは浅漬けの素、あとは煎りゴマなんかも売れますね。意外なのは、ワラビのアク抜きに使う炭酸水(笑)。ワラビ置くなら炭酸水も置かないと、ってことで大きいサイズを仕入れたりして。

マチの生活を支える松井商店ですね。

 いえいえ。近くには大きなスーパーもあるし、ドラッグストアもある。だから、生活を支えていると言える程ではないかもしれません。うちはローソンと野菜、その両方の掛け合わせで使っていただいている感じです。
 店のすぐ前が大きな道路になっているのですが、新城から豊川や豊橋といった市街地に向かう途中にある。やっぱりみなさんが知っているローソンの看板があって、最初はコンビニでお買い物しようと思って、立ち寄っていただけるんですね。そこで、店頭にたくさんの野菜が並んでいて、「なんだろう、このお店は」というように気にかけていただいて、地の野菜に触れていただく。そんな感じです。


こだわりの目利きが、お客様とのコミュニケーションのきっかけに

通常の商品に加えて、野菜の仕入れ・陳列もしなければいけないのは大変ではないですか?

 朝6時にお店に来て、まちかど厨房のお弁当を作るところからスタートですね。今日みたいに暑い日はカレーが売れるので、いっぱい作りました(笑)。市場が7時15分からなので、その前に出発して市場に行って、商品を積み込んで帰ってくるが9時半頃ですね。そこからお昼前までに一度並べて、お昼を挟んで、午後にもう一度並べ直して。それを毎日やっています。

毎日!それは大変ですね。

 野菜並べているのは趣味みたいなものですから。とにかく楽しくて。

野菜のおすすめ、セールストークなんかも松井さんがご自身でやられるのですか?

 私の目利きで買っているので、私がお薦めするこが多いですね。というより、並べている時に、野菜や果物を見ているお客様がいらっしゃると声をかけます。

やっぱりお薦めの仕方は、地のもの・安い・おいしいの三拍子ですか?

 お客様においしいかと聞かれたら、「置いてあるものは全部おいしいですよ」とお伝えしています(笑)。 安いということは、値札を見ていただいたら分かるので、それでお薦めすることはあまりないかもしれません。それよりも、旬のものであること。そしてどういう味なのか、っていうのをお客様は聞きたいはずだと私は思います。例えば「文旦」はグレープフルーツをちょっと甘くした味ですよ、とかそういうのが。
 自分で「これは良さそう、置きたい」と思ったものであれば、普通のスーパーでは扱わなさそうな、見たことない果物なんかも市場から持ってくるんですね。今置いているものだと、ジャバラ。のど飴になっていたりして、花粉症にも効くって言われたりしている果物ですね。食べられないんですよ(笑)。でも、お客様から「これ食べれますか?」と聞かれて、これは食べられないのですが、しっかりと絞ってお湯で割って、蜂蜜なんかを入れると飲みやすいですよ。とおすすめしたり。

それは興味あります。私もジャバラは見たことないですが、買ってみたくなりました。

 どんな味で、どうやって食べるのか。そういったことをおすすめするようにしていますね。こういうのはポップに書いてもなかなか読んでくれない。自分で目利きして、自分で仕入れているものですから、自分の言葉でしっかりと伝えた方が、お客様にも伝わると思います。

今後、5年後、10年後に向けてチャレンジしたいことはありますか?

 5年後もこの仕事をちゃんと続けていきたい、というのが一番ですね。昔は、市場に入れる人って決まって いるのですが、どんどん減ってきて、昔は100人いたのが今は40人くらいになってしまって。今は市場もとにかく人を増やしたいみたいです。やっぱり朝から市場に行って、仕入れて、自分たちの手で積み込んで、というのは大変なので、熱意のある人じゃないとできないですからね。
 地の物やあまりスーパーでは見かけないような珍しい野菜や果物にも美味しいものがたくさんあるんです。これからもお客様の期待には応えたいですし、面白い商品もどんどん提案したい。なので、とにかく頑張って続けたいという気持ちです。

松井さん、ありがとうございました。