オペレータ冥利に尽きる・コールセンター就業のススメ
わたしは20歳の頃クレジットカード会社のコールセンターでオペレータとして問い合わせ業務に従事していました。はじめからそういった仕事をしたかった訳ではなく都合がよかったのです。
何の都合がよかったかといえば、当時は学生でシフトで休みたい日に休めて高単価の仕事であり、おまけに雨風までしのげて座ってられるという仕事は割がいいと思えたからでした。当然、まともなオフィスワークの経験もなかったので、ある意味ではオフィスワークのデビューまで果たすことができました。
コールセンター内の役割は明確で、事業所責任者としてマネージャ、現場管理者のスーパーバイザー、問い合わせ対応者のオペレータです。そして、私の雇用主はコールセンターベンダーなので就業先の顧客企業(クレジットカード会社)が直接的な"お客様"となる訳です。マネージャもスーパーバイザーやオペレータもコールセンターベンダー所属です。オペレータが困ったときに頼りにするのはスーパーバイザーです。スーパーバイザーもオペレータを頼りにして定常業務以外のこともお願いすることはあります。
クレジットカード会社でのオペレータ業務は、実に多様性がありました。個人や法人会員からの問い合わせはもちろんのこと、カード利用内容の問い合わせ、請求、契約、更新、盗難紛失や審査状況の確認まで多岐にわたります。さらには警察や弁護士からの照会連絡もあります。まさに総合窓口です。そして、クレジットカードには大別して二つあり、ひとつはクレジットカード会社が独自に発行しているプロパーカード、提携先と発行している提携カードです。この提携カードこそクレジットカードのコールセンター業務の難易度をあげる要素のひとつです(笑) なにせ提携カードの種類は1,000くらいありますから提携カードごとに特典や特長が違いますし、手続きの方法も異なることがあります。
しかし、そういった複雑な業務をこなすからこそ、高単価でしたし、電話対応のテクニックや話法、ひいては交渉能力まで鍛えあげられるのです。1日の業務で多いときは80件の問合せ対応をします。平均でも1日50件の問合せ対応となります。一年で12,000件以上、言い換えれば12,000人以上と話します。なかには手強い問合せもありますし、高度な折衝が求められるクレームもあります。見方を変えればコミュニケーションの訓練なので人と話すこと、しかも姿が見えない相手との電話でのやり取りは、わたしにとってこの上のない財産となりました。
もともと性格的なことや人に教えるという機会にも恵まれてきたのでクレームの類いは苦ではありませんでした。わたしは一般のオペレータでしたがクレーム収束率は99.9%、スーパーバイザーからも相当頼りにされていました。スーパーバイザーの主な仕事のひとつは、問い合わせ対応におけるクレームに関する業務です。これが結構たいへんなのです(笑) そのようなたいへんな業務をオペレータが対応してくれたらどんなに助かることでしょう。その甲斐あってコールセンターベンダーのお客様であるクレジットカード会社のお偉いさんからも一目置かれる存在となることができました。
わたしが従事していたコールセンターのスーパーバイザーたちは、本当に優秀な人ばかりだったなぁと思います。何より人間性が豊かで優しい人ばかりでした。わたしは当時から人間観察が趣味みたいなものでしたから優秀なスーパーバイザーたちの仕事ぶりもよくみていました。複雑な事柄の整理の仕方、指示の出し方、お客様企業との折衝方法、メンバー育成における教え方や教え方の違いなどバラエティにとんだものでした。そんな彼ら彼女らの仕事ぶりを学び、自己のキャリアの糧になったことは言うまでもありません。
わたしは就職氷河期世代なので大学卒業後、しばらくは就職活動はせずに資格を取るために予備校へ通っていました。なのでコールセンターでの仕事は継続したのですが、そのコールセンターがお客様企業であるクレジットカード会社の事情で他県へ移転することとなり、他のコールセンターベンダーで働くことにしました。そこで役に立ったのはスーパーバイザーたちの仕事を観察していたこと、クレーム対応に強かったことです。他のコールセンターとはメガバンクのコールセンターです。オペレータで応募したのですが、わたしの職務経歴書をみた当時のマネージャから「ぜひ、スーパーバイザーとして採用したい、どうか引き受けてほしい」とお願いされました。当然わたしは快諾しました。なぜ快諾しのか?理由はかんたんで自信があったからです。しかもスーパーバイザーで採用された方が給与もいいですから断る理由などありません。
メガバンクのコールセンターは、クレジットカード会社での経験とは一段も二段も違ったものでした。それでも即戦力としてスーパーバイザー、なかでもリーダーシップを発揮して100名超のメンバーを牽引して実績をあげ、メガバンクの方々からも信頼される人材であることを示せたのは、クレジットカード会社でのオペレータ経験や優秀なスーパーバイザーたちの仕事ぶりを観察できたことが大きかったです。
オペレータとして従事していたからこそ、5万件以上の問い合わせ対応、数多くのクレーム対応、スーパーバイザーの観察に集中して見取り稽古ができたのです。これらのことは、心理学者であるA.バンデューラが述べる自己効力感を高める4要素のうち2要素を満たすものです。
即ち、ひとつは直接の成功体験(行為的情報)、もうひとつは代理体験(代理的情報)であったと言えます。自己効力感は未来の自分に対する自信です。自己効力感を醸成できたことは、まさにオペレータ冥利に尽きると実感するのです。コールセンターでの困難な対応は、わたしを強くしてくれました。メガバンクのお客様相談室・職員(行員)が対応できない預金者もわたしへ連絡がくるようになったときは、プロとして、さらなる自信へとつながりました。加えて、マネジメント能力も獲得することができていましたのでキャリアアップの礎となったことも幸運でした。
メガバンクでのコールセンターマネジメント経験でのエピソードはまだまだ尽きないのですが、オペレータ冥利に尽きるというテーマでしたので今回はここで終えたいと思います。次回は、デキるオペレータに関する記事を投稿しようと考えています。わたしがみてきたデキるオペレータたちは本当にバラエティにとんでいます。物腰のやわらかさ、クオリティ&スピード、オジサマキラーと言われたオペレータなど様々です。
ときどき彼ら彼女らはどうしているのかなぁと思うことがあります。ホントに素敵な人たちでした。(感謝)
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