見出し画像

「蝶のしわざ」第一話


  『ガッシャーーン』

・・・遠くから何かが崩れ落ちる音がした。


その音と共にハッとして目が覚めると、
私は一人、血のついたダブルベッドに横たわっていた。


「えっ?何・・・?これ。」



ーーー深夜四時過ぎの事である。


私はその前日、心身共に酷く疲弊していた。
人生にも、仕事にも、私生活にも、恋愛にも、自分にも。


全てにおいてもうラクになりたいと、気を紛らわすため、
呑めもしないブランデーを一気飲みした。


私は元々お酒は強くないが、この日は憤懣やるかたなく、
一番 度数の高いお酒を飲みたかった。



ブランデーを飲み干した後、私は段々と自分の
目の前の意識が朦朧とするのが分かった。

それもその筈だ。本来、ブランデーと言うのは
氷や水割りで濃度を薄めて飲むのが基本だが、


私はボトル直瓶そのまんま、ラッパ飲みしたのだから。
しかも初めて口にした、一番度数の高い、
お酒の王様 ブランデーを。


ものの数分後 私は酷い眠気に襲われ、
そのままベッドに横になり深い眠りについた。



   そして、目が覚めるとこの光景である。



周囲を見渡すと、目の前のテーブルには、
飲み干したお酒の空瓶が置かれていた。


・・・何なんだ?これは夢なのか、それとも、
長く続く悪夢でも見ているのだろうか。


しかし、私は生きている。
恐る恐る、自分の頬をつねった。

神様お願い、どうか、長く続く悪夢であってくれ。


「・・・痛っ!!」



どうやら、これは夢じゃない。現実だ。



私は恐怖のあまり、言葉を失った。それはそうだ。



今まで心地よく眠っていたと言うのに、

夢から覚め起床すると
血だらけのベッドに横たわっていた。


だなんて・・・


まるで ホラー映画でよく見掛けるであろう、
被害者が何者かに襲撃され、血を流し

見るも無惨にかえり果てた姿で
発見される殺人現場のワンシーンがふと、
脳裏を過ぎった。


それと全く同じ状況が、現実世界で起きているだなんて、
恐怖の他の何物でもないのだ。





私は真っ先に、自分の胸やお腹に手を当て、
血痕の原因となる傷口を探し当てた。


・・・あれ?傷口も何も見当たらない。
一体、これはどういう事だ?


ますます謎は深まり、私は一気に頭が真っ白になった。





血痕まみれのベッドから起き上がり、
一旦冷静にならなきゃと思い、
頭が真っ白になりながらも深い息を吐いた。


どうやら、血痕の正体は私ではないようだ。


・・・しかし、この部屋には私一人しか居ない。




もしかして、事件に巻き込まれたのだろうか?




そんな恐ろしい事考えたくもないのだが、困った事に、


夢の記憶はあるが、起きていた間の記憶が一切ないのだ。


となると急がば回れで、早いうちに通報しなくてはならない。
私は急いで枕元に置いてあった携帯を手に取り、電話のボタンに110番を打った。








続く・・・



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?