メキシコの国民的なお祭り「死者の日」の伝統を体験した日の思い出
日本人がメキシコと聞いて主に思い浮かべるのは、なんだろうか。
残念ながらまずは治安の悪さと、マフィアの話だろう。次点でタコスやテキーラといったメキシコ料理。ルチャリブレやサッカーなどのスポーツの話題も持ちあがりそうだし、最近はリゾート地として有名なカンクンに行ったことがある人も多いかもしれない。だがメキシコ文化を形成する上で重要な伝統文化について知っている人は当然ながら少ない。
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6年程前、私はメキシコに語学留学をしていた。日本とはまるで違う様々な景色はそれまでの人生で見た何よりも新しく刺激的だった。
・メキシコのどこのお土産屋にもある、骸骨グッズ達
メキシコ滞在で最も印象に残ったのは「死者の日」と呼ばれる祭りだ。毎年11月1日と2日に、死者の国から現世に帰ってくる故人たちを、家族や友人と迎える行事だ。日本のお盆をイメージすると分かりやすい。メキシコ全土で行われる国民的行事で、10月に入ると街では祭壇を用意し花や食べ物を備える。最近ではピクサー映画の「リメンバーミー」でこの行事を知った人も多いだろう。
今回は死者の日を盛大に祝うことで有名な村「ミスキック(Mixquic)」に訪れた時の思い出を書きたいと思う。
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ミスキックはメキシコシティ中心部から2時間ほどの郊外の村だ。地下鉄の12番線で終点の「トラウアック」まで行って、そこからバスに乗り換えると村に着く。ミスキックやトラウアックなどの地名はスペイン人の入植前からある先住民族の言葉が由来で、外国人からしたら覚えるのに苦労する。
一応首都メキシコシティの一部ではあるのだが、やはり2時間の旅程を経ていく村の雰囲気は田舎っぽさが漂う。
着いてすぐにこのお出迎え。この着飾った骸骨の女性は、カトリーナと呼ばれ死者の日のアイコンとなっている。死者の日にはこのカトリーナのメイクをした女性が、街を闊歩してる。
・メイクもポーズも決まっている
村には屋台が立ち並び、食べ物・お菓子・雑貨・花・骸骨グッズなどあらゆるものが売っている。屋台が並ぶとやはり日本の縁日を思い出して、ワクワクしてしまう。海外の屋台を見るのはその国の生活を間近で見ている様で、とても楽しい。
・アーチ中央下のメッセージには「伝統は生き続ける」とある
日本のお盆と似ていると言ったが、大きく違う点がある。それはお墓に派手な装飾を施し、夜になると家族が集まりそこで飲み食いをする人が多いという点だ。墓地一杯に敷き詰められたマリーゴールドは異国感満載で、その鮮やかな色合いに目を奪われる。一方で墓の前に置かれた本物の骸骨の前で食事をする風景は、少しぎょっとした。信心深い家庭は、故人の骨を洗ってやったりするそうだ。
日が暮れ、夜になると人が増えてくる。一緒にいった友人とはぐれそうになったくらいの混雑ぶりだが、祭りとなるとこれくらいの方が雰囲気が出て良いのかも知れない。屋台の呼び込みにもより力が入っていた。長丁場を想定して、腹ごしらえと乾杯を済ませた。屋台で食べるタコスはいつも美味しいし、外で飲むミチェラーダ(グラスの縁に唐辛子と塩を塗り、レモンを混ぜたビール)はメキシコを感じるには最適な飲み物だ。
再び墓地へ向かう。死者の日の雰囲気を一番味わうには、キャンドルが灯された墓地を見なければならない。
外の屋台の賑やかな雰囲気とは打って変わった幻想的な風景があり、心を奪われる。この美しい光景はメキシコ生活で一番印象に残ったものの一つだ。今後も忘れることは無いと思う。家族を想うという思想はどこの国にも存在する事を目にした時は、こみ上げるものがあった。
夜も更けたので帰路に着く。相変わらず人はごった返していたので、夜通しこの祭りを楽しむ人も多いのだろう。昔からの伝統を味わう事が出来、この土地に脈々と受け継がれている物の一端を見られたことは、本当に貴重な体験だった。屋台は遅くまでやっているので、再びタコスをつまんで帰る。出迎えてくれたカトリーナは目を光らせて観光客を見送っていた。
・今にも動きだしそうだ
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メキシコという国は、スペイン人入植前はアステカ族やマヤ族といった先住民族が文明を築いていた。現在のメキシコ人の多くはそれらの混血であるが、死者の日のもそうだし、地方に行けば先住民族から受け継がれた伝統的な工芸品や料理、風習を見ることが出来る。当たり前だがどんな国にも伝統があり、それを体験した時にはその国の事をより深く知る事が出来るだろう。
残念ながらメキシコは先述の通り、治安の悪さが気になり進んで行きたい人は少ないかもしれない。しかし、照り付ける太陽の下で陽気な人々と会話をし、安くて美味しいメキシコ料理を食べればたちまちこの国が好きになってしまうだろう。そして死者の日のお祭りを過ごせば、誰もがメキシコの虜となってしまう事を私はこれからも力説していくのだろう。
※追記:お出かけ体験型メディア SPOT さんの「楽しかった思い出の記事コンテスト」にて「ディズニー賞」を頂くことが出来ました。とても嬉しいです。
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