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Cluster短編イマーシブミュージカル「Song of EDEN」後記

※本記事には「Song of EDEN」のネタバレをふんだんに含みます。

まだ観ていない方はぜひ、アーカイブをご覧になってからお読みください。



Cluster短編イマーシブミュージカル「Song of EDEN」無事に終演致しました。

いろいろとゆっくり思い出しながら今、画面に向かっています。

Clusterイベント&配信のサムネイル


◆セリフのすきま


あまり深くは語らない、短いお話でしたが、皆さんどのような解釈をされたでしょうか?


ちょっと作中で語りきれなかったことをここに書き残してみようと思います。

もちろん解釈は自由ですよ!これは一例として受け取ってください。答えは舞台の上にあったものだけです。舞台の上になかったものは自由に想像してみてください。むしろ面白い解釈がある方はぜひ教えてください。見たい。

お付き合いいただける方は、ぜひ続きをどうぞ。


扉の向こうは……(撮影:ばくだん)


Song of EDENは自分と向き合う物語です。

主人公には何の不思議な力もないし、誰かを助けることも、世界を救うこともしません。

対峙するのは悪役ではなく、自分自身の心の弱い部分、自分に価値があるのかという疑い。

それは時に、舞台を邪魔する「彼」として、観客に見える形で具現化されます。


「彼」は本来は弱く小さい姿をしています。しかし弱さを認めたくない、攻撃されるのが怖い、という思いから大きくて恐ろしい姿になり「私」にステージを思いとどまらせようとします。

女神の後押しによりなんとかその場をやり過ごすことはできましたが、「私」の心には「歌えなかった」というわだかまりが残っています。


だけど迷う心だけでなく「歌いたい」「後悔したくない」という気持ちも確かにありました。自分との対話を乗り越えてその気持ちに気がつきます。

……いや、ここは本当は自分との対話ではありません。

突然現れたもう一人の自分、これは実は「私」から「歌いたい」という言葉を引き出すために、AIたちが姿を変えたものでした。(言葉は魂、といいますよね。言葉にできることは実現できる、とも)

「私」はそのことには気づいていませんが、しかしAIたちの言葉によって見事自分の迷いを克服します。


「彼」はもう一度出現し、自分自身に「歌う意味はあるのか」と問います。「私」は迷うことなく歌いながら、同時に自分の中にあった疑いの心を救済していきます。虚勢を張って、自分を守っていた姿の「彼」は、本来の弱々しく自信のない姿になっていきます。

最後に弱い姿の「彼」は空に消えていきます。でもそれは、弱さが消えたわけではありません。排除すべき部分として存在した弱さも自分の一部として認めたことで、一つの心に統合されていったのです。


「聞いて。私、あなたのために歌うから」



ここでいう「あなた」とは、「彼」(=自分自身)だけではありません。

自分以外の、全ての人にこの歌を届けたい。その中に、「私」の歌声を必要としてくれる人がいるかもしれない。その人の救いになれるなら、どうか気づいてほしい。「私」はここで歌っているよ。


自分自身に、心を開く


パン屋の店長(EDENの女神)は、「私」が歌いたいことにずっと以前から気づいていました。

パフォーマー側から見れば、そういうのってわかるものですよね。ああ、このお客さんは本当に歌が好きなんだな、とか。

なので店長は、EDENに住むAIたちを「私」のもとに差し向けます。ちょっとした"ルールの改変"をもって、現実世界にEDENを少しだけ侵食させ、その魂を解放すべくEDENへと導いたのです。

(なぜ店長にはそんなことができたのでしょうね?実はそのあたりはあまり考えてません。ただ、私は現実世界とVRの世界は遠い場所ではなく、地続きだと思っています。そのお隣からちょっと訪れる者があっても不思議はありません。現実とVRの間に国境はないしね)


EDENの光に包まれながら「私」が歌う。そっと優しく見守る、AIたち、女神、そして自分自身の一部である「彼」。

もう「私」は、二度と「彼」と出会うことはないでしょう。自分を守るために切り捨てたかった弱さを、もう切り捨てなくてもよくなったから。

もう、大丈夫


最後に見つめ合う「私」と店長。

「私」はやっと、店長と女神が同一人物であることに気づきます。でも最初から全部知っていた店長は、ただ静かにニッコリ。



以上がこの「Song of EDEN」の語りきれなかった部分です。

皆さんに伝わってほしいのは「他の誰でもない自分を必要としてくれる誰かがいるかもしれない」「弱い自分がいてもいい」この2つだけです。他の部分は全て、どう想像していただいても構いません。ぜひ、自由に考えてみてくださいね。



◆「お前に歌の力はあるのか?」



「竜とそばかすの姫」主人公のすずは、恵(竜の正体)とその弟の知を救います。苦しみから解放された恵はもう竜として悪いことをすることもないでしょうから、結果的に竜に怯えていたUの人々も救うことになります。

「私」は誰も救いません。しいて言えば自分自身を認め、救済します。

女神に手を差し伸べられて


すずは並み外れた歌唱力を持ち、Uに現れた直後から爆発的に人気になります。多くの人の心を動かします。まさに歌の力です。

「私」にはそのような描写はあまりしておりません。「EDENでひそかな話題」とアナウンスが入る程度です。


何者かになってしまったすずに対して、何者でもないままの「私」。

さて、そんな「私」に、歌の力はあるのでしょうか?

皆さんはどう思われますか?


私はいつも、自分の個人ライブをする時に「お客さんが3人でもいい、来てくれた人のために歌う」と決めています。

はっきり言って私は、プラットフォームによってはまだまだ知名度がない方です。一晩で3万人を動員するライブ!なんて1回もできたことありません。(やってみたいですね)

それでも、来てくれた人に少しでも「楽しかった」というプラスの感情をお返しできたら合格だと思っています。ゼロじゃなければ、積み重ねていけるから。

それこそが歌の力だと思っています。


「私」の歌もきっと、どこかにいる、必要としている誰かのもとへ届くことでしょう。


ここで歌っているよ



◆「Song of EDEN」ができるまで



「竜とそばかすの姫」をオマージュしたオリジナルストーリー

歌・映像・演技・ワールド・パーティクルで魅せる

VRエンターテインメント

(2022年9月4日)


イベント用のDiscordに上記のコンセプトが書き残されていました。

10月頃までかけて物語の概要やワールドのイメージを作成。その後少し期間を空けて12月頃から、シナリオ担当のぽっちゃりL女えるちゃんと何度も打ち合わせを繰り返し、1月くらいまでかけてほぼ今の物語が完成しました。


それに並行してワールドの制作も進んでいき、3月頃にはEDENの大樹(先代)、パン屋や主人公の部屋、ダンスホール等がほぼ出来上がりました。

こんな景色がほしいという情報を絵で伝え、パーティクルやアニメーションで想像以上のものが返ってくるというやりとりが続きました。


それからなんやかんやあって(他のいろいろなイベントがあったりして)今年の7月。


そろそろ決めねば……と思い、Discordで相談しつつ本番の日と、それに向けたお稽古の日が決まりました。

ところが7月中、大幅に体調を崩しほとんど動けなくなりました。内心ものすごく焦っていましたが、他にできることもなく、8月上旬に決まっていた東京でのライブ出演に向けて必死に療養しました。

そこを乗り越えてから、本格的に本腰を入れることになりました。


どうしてもやりたくて入れてもらった演出
「壁を突き破って飛び出てくるクジラ」


9月の中頃にお稽古が開始し(体調のことがなければ本当はもっと早くから始めたかった)そこからはもう怒涛の日々。毎日シナリオとにらめっこして、お稽古で出た問題点をどうにかしては反映させていきました。実は当日の本番30分前までセリフが変更されたりしていました。ううっ……


この9月と10月は本当に一瞬で過ぎてしまいました。一週間前になっても「え、ほんとに来週なの?」「明後日本番?うそでしょ?」なんて言っていました。何かするたびに他にもしたいことが生まれ、何か解決するたびに新しい問題点が顔を出し、時間がどれだけあっても足りない!(イベンターあるあるですよねw)


そんな中でもどうにかこうにか、11月の4日、本番!

「EDENの人々」という役である皆さんにご参加いただき、ようやく「Song of EDEN」は完成しました。


終演後の集合写真(撮影:むぎせんにん)


◆おわりに



ご観劇いただき本当にありがとうございました。


本番中も終演後も、素敵なコメントや感想をたくさんいただきました。今後も是非お待ちしております。何度でも観ていただけたら嬉しいです。

この舞台が皆さんの心に何か残せたならば、主催としてこれ以上の幸せはありません。


そして最後になってしまいましたが、本当に何度伝えても伝えきれない感謝を、至らないところだらけだった私に最後までついて来てくれたキャスト&スタッフのみんなへ……本当にありがとう!



2023.11.6 L*aura💫バーチャル世界の歌姫ローラ


公演のポスター





◆おまけ



歌姫Projectなんですが、準備期間の寝不足な深夜に「演劇をやるときだけ『カソウ劇団EDEN』という名前にしようかな〜」とか考えてましたが、起きてから「カソウ舞踏団さんのパクリやんやべえ」となって、誰かに伝える前に自分で却下しました。気づけてよかった……

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