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花壇がだんだん欲しくなる

 わたしは、ホームセンターの入り口に並ぶ植物たちを物知り顔で眺めている。うちにも花を飾ってみてはどうかと考えてから、すぐに現実的じゃない気がした。プランターから溢れた土と落ち葉。花瓶の周りに散っている花弁が容易にイメージできたからだ。
 でも、こうして園芸好きな人たちに混じって見てまわるガーデニングコーナーの雰囲気はいいものだ。晴天の空をより鮮やかに思わせ、僅かな風だって「これくらいが適温だ」と知ったような気にさせる。
 肩を寄せてなにやら話す老夫婦。奥さんはにこやかに花を選び、旦那さんは難しそうな顔をしながらも同じ歩幅で歩いている。わたしも真似して、少し難しい顔をしている。それからまた歩き、ホームセンターの中に入った。
 花瓶が売っていた。細長い形。一輪挿しというのだろう。近くにはそれに似合うような花をばら売りしている。造花のコーナーもスペースがある。こういったものも人気があるのだろうか。
「これならば、わたしにも維持できるだろうか? 駄目なら捨てればいいよな」と思う。飾る前から捨てることを考えるなんてやっぱり植物を飾る人間じゃない、たぶん。
 たぶん、花を写真で撮ったとしてもホコリの被った写真立てが棚の上に並ぶだけなんだろうと思う。ホームセンターの入り口で想像する花壇が丁度良さそうだ。百円位なら入館料を払ってもいいくらいだ。


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