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スナックわかばに想いを寄せて

ごきげんよう! 春陽漁介です。
11月27日で舞台『ビギナー♀』の配信も終了いたしました。最後まで楽しんでいただきありがとうございました。
最近は、舞台が終わっても配信アーカイブが残っているのでいつまでも終わらない気もしてしまいますが、これで本当に全公演が終わったわけで。とても寂しいです。
パンフレットなどの公演グッズはBASEにてまだ販売しておりますので、ぜひ覗いてみてください。

さて、前回は双柳大学バドミントンサークル「ビギナー♀」メンバーをご紹介しました。配信中の更新が全く間に合いませんでした(すみません……)が、今日は「スナックわかば」の濃すぎる大人たちをご紹介。どうぞお付き合いください。

それでは、スナックわかばに想いを寄せて。


橋口 杏奈(はしぐちあんな)役:榊木並

楽しかったあの頃を見つめる杏奈

5454での榊は主に、爽やかな悪態で笑いを取りながら、作品のテーマを提示しつつ、エネルギッシュに物語のピークを作り、必要だったらメッセージを語り……
などという過重労働っぷり。
今作は、手練れの大人たちがたくさんいてくれたこともあって、いつもの榊より「見せない表現」をたくさん観れました。
これまで培ってきた芝居の幅を抱えながら、語らない芝居を維持する榊の新しい技を見ましたし、今後が一層楽しみになりました。
写真には、罪を犯したのかとも思える表情。過去の眩しさをそれほど深刻に見つめる眼差しに貫禄を感じます。


横田 理枝(よこたりえ)役:谷田奈生

毎日ネギ2本食えよ?

身長178cmの高身長と独特のテンポ感を持つ谷田さんは、これまで5454ではいなかったキャラクター性。
5454は、会話スピードが速いのが特徴でもあるのですが、谷田さんにオーディションでテキストを読んでもらった時、丁寧さというか、なんでもない台詞に引きがあるというか……野球で言うところの、球持ちの良さを感じました。相手の台詞をガッチリ受け取りつつそっと返す能力が優れている。いや、そんな説明で表現出来るほど単純なものではなくて……。なんとも不思議な感覚でした。
スナックわかばで行われるとんでもないスピードの雑談の中に、「楽しく見える大人たちにも色々あるよね」感が充満していたのは、そんな谷田さんの能力によってもたらされたものです。
少ないシーンからドラマを感じさせてくれた谷田さんですが、写真のように相手役を普通に笑わせてしまう遊び心も持っていて。演劇の面白さを体現する素晴らしい俳優さん。


菊池 美穂(きくちみほ)役:西野優希

THIS IS IT

2度目の5454出演となる西野さん。
前回出演してくれた『カタロゴス~「青」についての短編集~』でも榊と抜群の相性を持って作品を引っ張ってくれたわけですが、今作はさらに自由度が増し、劇団員ばりに作品を支えてくれました。
西野さんの、小さな体と大きなエネルギーのギャップ、一度見たら忘れられない顔と声、大胆なアクションが出来るメンタルと細かなリアクション技術などなど、3年前にも惚れた魅力を惚れ直しました。
写真は、大人たちがワチャワチャと感情高まるシーンの締め。稽古場で「ただ終わらせるのも勿体無いからマイケルで終わらそうぜ」というふざけた演出を思いっきりやってくれる優しい西野さんです。
「困ったら美穂」という具合に、中心で盛り上げもしてもらったし、ちょっと外側からのツッコミも任せたし、物語の展開も担ってくれて、とても頼りさせていただきました。


柴 梢(しばこずえ)役:大塚由祈子

滲み出るジェラシー

5454初出演の大塚さんですが、基礎稽古でもシーン作りでも、常に大きなエネルギーで座組みを牽引してくれて、チームワカバのみんながパワフルなキャラクターに仕上がっていけば、周りに負けないパワフルな梢を作ってくれたり、と頼り甲斐のある俳優。
大塚さんは、常に何かと戦っている気がします。バトル漫画のごとく、戦うことで繋がりを深くしているんだと思います。
そんな大塚さん自身が持つキャラクター性から、杏奈のライバル的ポジションが出来上がり、好戦的なチームワカバというのも構築されました。試合シーンにて二刀流で孤軍奮闘する姿は、僕が抱く大塚さんのイメージそのもの。最初は笑って見ていましたが、最終的には直視してはいけない気さえする戦闘兵を完成させてくれました。
そんな兵士が見せる乙女心が写真の表情。長い時間が生み出す安心感と不安という、大人の恋愛模様を魅せてくれました。


萩沼 カズキ(はぎぬまかずき)役:真辺幸星

鈍感な男

5454のプロ客演であり、5454を最も理解し、愛してくれる男。それが真辺くん。
僕が少し悩んでいるのを察知すると真っ先に話を聞きに来てくれたり、出ていないシーンをずっと楽しそうに観てくれたり、キラキラした目で感想を伝えてくれたり。劇団に寄り添い、作品に寄り添い、共演者に寄り添い、観客に寄り添い……そういう基本姿勢があるからこそ、誰かに寄り添う役のハマり方は異常なレベル。
今作でも相手役を輝かせる能力を遺憾無く発揮してくれて、チームワカバの外堀をガッチリ守ってくれました。
一枚の写真からでも笑い声が聞こえて来るよう。ずっと変わらない楽しげで温かなこの笑顔がみんな大好き。公演が終わった今もカズキの笑い声が、色褪せずに耳に残っています。カズキはきっと今もスナックわかばに入り浸っているんだろうなぁ。芝居が終わった後も、その役がどこかでしっかり生きているように感じさせるのも真辺くんの俳優としての魅力です。


桑井 橙子(くわいとうこ)役:岡元あつこ

必殺スマッシュ

5454初出演ながら、今作一番の人気キャラクター橙子を生み出し、チームワカバでも座組みの姉御としても、大きな精神的支柱として君臨してくれました。
「最近はシリアス専門だからコメディはブランクあって心配」
オーディションに来てくれた時から再三言ってましたが、「どこがだよ」と突っ込まざるを得ないコメディエンヌっぷり。台本初見から完璧な音と間で台詞を発してくれて、僕が知っている俳優の中でもトップレベルのコメディエンヌです。もちろんシリアス芝居も上手いのですけど、岡元さんで笑いを取らないのは勿体無いと感じちゃう。
作品に向き合う姿勢もとても謙虚で誠実です。岡元さんから見たら至らない部分もたくさんあるであろう僕の言葉に熱心に耳を傾けてくれて、当たり前のことなのかもしれないけど、稽古中から一切を手を抜くことがない。今作で一番先輩の岡元さんがその姿勢でいてくれたことで、楽しくも締まった稽古期間になりました。
選んだ写真は、やっぱり橙子の必殺スマッシュ。強さと美しさ、カッコ良さと面白さが詰まった最高の一枚。


松木 明実(まつきあけみ)役:樋口みどりこ

束の間の青春

樋口さんも5454初出演。アイドルながら本気のコントが話題のつぼみ大革命で活躍し、俳優としての才覚もあるという多才な樋口さんは、多面性のある女性という印象です。多才な人だからこそ、場所や相手によって違う自分を持っていて、その普段の樋口さんの立ち振る舞いから明実という役が構築されました。
スナックで働く自分と母親としての自分。
息子を支えたい自分と誰かに支えてもらいたい自分。
そして、青春を取り戻したい自分。
同じ自分なのに、荒波の中を生きていく上で変化せざるを得ない心を、とても繊細に抱えてくれました。
写真は、作品中の中でもほんの少しの間だけ見せる屈託のない笑顔。ヤマトの前ではしっかりと母性があふれるのに、過去諦めてしまった無駄を楽しんでいる姿がまるで学生のようでなんとも愛らしい。


橋口 楓(はしぐちかえで)役:岸田百波

姉を解きほぐす妹

こちらも5454初出演の岸田さん。驚異の自然体を持っている俳優で、全く演技を感じさせない。声も身体も緻密にコントロールしてるのに技術を全く感じさせない。あまり使わないようにしてる言葉ではありますが、芝居が上手い俳優というのはこういう人を言うのだと思います。
稽古場でも素晴らしく勉強熱心。オーディションの時から千秋楽まで、ずっとノートに何やらメモっていて、些細なことでも常に気付きを大切にしてる俳優なのだと感じました。そりゃ上手くなるわ。
写真は、姉妹の穏やかな時間。榊の自然体と岸田さんの自然体が混ざり合って、ずっと見ていられる感覚。テンションの高いシーンではないのに、観客の集中力が最大限に高まる凄いシーンでした。
ベンチに座る前のバドミントンをしながらの会話も最高でしたね。岸田さんのバドミントン経験者としての能力と会話能力があってこそ出来たシーンです。


小林 茂雄(こばやししげお)役:大竹散歩道

揺蕩う男

チームワカバも最後を締めるのは、やはりこの男でしょう。
大竹さんも5454初出演ではありますが、完璧な佇まいで観客の笑いを生み出してくれました。
とても器用な俳優で、どんな役どころでもはめてくれる信頼感ある大竹さん。だからこそ、ただ居るだけの男に観客が違和感を持たずに見ていられて、喋り出した時の待ってました感に応えられたのだと思います。こういう役は、ズルいと言われがちだけど、ちゃんとズルく出来たのは凄いこと。だって相当ハードル上がるわけですから。大竹さんが持つ、脱力感と力み具合の完璧な塩梅によるものです。
写真のように、舞台上で周囲の話に耳を傾け続ける姿は、普段の大竹さんそものも。相手を緊張させない柔らかな物腰があり、発達した共感力で話し手を気持ちよくさせてしまう。聞く力がある俳優がしっかりと観客に愛されるというのは、演劇を作っていて感じる大きな喜びの一つです。


以上、9名がチームワカバメンバーです。

改めて思い返すと、俳優それぞれが自らキャラクターを作ってくれたのだなぁ、と感謝の気持ちでいっぱいです。
こんな魅力的な俳優たちが集まってくれていなかったら、「子どものままの大人たち」で終わってしまっていたところです。それぞれが人間性を大切にしてくれたおかげで、物語上でさほど描かずとも大人の難しさを感じられました。
あぁ、またスナックわかばに集まって騒ぎたい。

スナックわかばの完璧なポジショニング

次回はついにすすぎの高校演劇部のご紹介です!
今年中には更新したい所存。お待たせしてしまいますが、どうぞお楽しみに!
引き続き「スキ」やコメントもお待ちしております。

春陽漁介

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