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M-1グランプリ2023を終えて~令和漫才浪漫譚~

今年も熱い戦いが終わりました。
「爆笑が、爆発する」を掲げて始まった今年のM-1グランプリ。
個人の感想等を含めて、今年から大きくルールが変わった敗者復活戦から振り返っていきたいと思います。
※点数はあくまでも敗者復活戦における100点満点の採点
※便宜上採点していますが、全ての芸人さんをリスペクトした上で、エンタメとして個人的な採点を行っておりますのでご理解を。
※敬称略


≪Aブロック≫
ロングコートダディ 92
ママタルト 91
ヘンダーソン 90
ニッポンの社長 86
20世紀 85
ぎょうぶ 84
華山 83

ロコディ、ママタルトどちらでも納得の勝ち抜きだと感じました。ヘンダーソンでも納得ではありますが、もっと良いネタがあると感じましたし、ラストイヤー補正は多少なりともあったのかなと感じました。ここは上位3組が抜けていたと思います。

≪Bブロック≫
エバース 95
ナイチンゲールダンス 94
オズワルド 90
トム・ブラウン 89
スタミナパン 87
鬼としみちゃむ 82
豪快キャプテン 80

エバース、ナイチンは接戦。この2組が抜けて強かったです。オズワルドはここ数年強い新ネタを作れてないので数年M-1は充電期間を入れても良いのかも。あと4組は飛び道具感が強すぎて好みが分かれるでしょうね。その中ではスタミナパンのソーラン節歌ってみたは凄かった。

≪Cブロック≫
シシガシラ 94
バッテリィズ 92
ダイタク 90
フースーヤ 88
ななまがり 87
ドーナツ・ピーナツ 85
きしたかの 82

シシガシラは見てる人の想像力を駆り立てる妙技。バッテリィズは去年の準々決勝と同じネタだがスケールダウンが否めない。ダイタクももっと別のネタがあったんじゃないかなあ。フースーヤは個人的にはハマりません。ななまがりはキモさの胃もたれを起こしてしまうかなと。

各グループを勝ち抜いたのはヘンダーソン、ナイチンゲールダンス、シシガシラの3組でした。
この中で選べというのなら個人の好みを優先するならシシガシラ。決勝向きなのはナイチンかなと思いました。

ここで、毎年個人的に作成している「M-1馬柱」を見ていただけると幸いです。



敗者復活の有力と思われる5組を選出したのですが、見事3組全て入っていました。
ここからはM-1本戦を振り返っていきたいと思います。

≪決勝≫
1番手 令和ロマン:90点
まさかのトップバッターでしたが、くるまの分析力があればある程度のカバーは出来ると思っていました。ノンストップでお客さんを引き込むしゃべくり漫才は見事にはまったと思います。普通にやるより客席は沸くと思うので、審査員としてもそこを評価せざるを得ないのではないかと感じました。

2番手 シシガシラ(敗者復活組):87点
ただのハゲではなく知性を感じさせる新しいスタイルのハゲ漫才をオールドルーキーが繰り広げる珍妙さ。ただ決勝で披露したネタはそこまで目新しさは無く、盛り上がりどころでも上がりきらないまま終わってしまった感じがありました。ネタ選びという不利がある以上これはしょうがないですね。

3番手 さや香:93点
彼らが比べられるのは他のコンビではなく去年の自分たち。それを超えられたかというと微妙ではあったかなと。それでもほぼ喧嘩と言われるほどの熱量は分かりやすく見てる側には伝わりますし、途中のボケツッコミの入れ替わりも相変わらずスムーズで面白かったですね。

4番手 カベポスター:89点
構成力を極限まで突き詰めるのが彼らの武器。それ故に最初の笑いまでが遅いのは末脚を活かす為に致し方がないこと。ただ今年のネタは中盤から後半にかけての盛り上がりが欠けてしまったかなと。去年のネタをこの順番でやっていたら…と思わずにはいられませんでした。

5番手 マユリカ:91点
今まで見てきたマユリカの中で一番面白かったです。二人の熱量と声量・質の対比が見事にハマってましたし、最後の溜めて溜めて吐き出したところで大きな笑いを作ったまま締めたというのもバッチリだったなと。

6番手 ヤーレンズ:95点
楢原のなぜかストンとハマるウザい役柄から繰り広げられる手数の多い割に中身のないボケを、中和するかのようにソツなく処理する出井のツッコミ。隙間隙間にも笑わせる小ボケが散りばめられているので、4分があっという間に過ぎてしまいました。

7番手 真空ジェシカ:94点
唯一無二の世界観。世の中の全てをボケに出来る才能。ただ、それをニッチな方向にしすぎると審査員には届かないという点で苦労があるんだろうなと思いました。中盤からのボケは圧巻でした。個人的には彼らにしては分かりやすいネタだなと感じました。

8番手 ダンビラムーチョ:86点
歌ネタというのは老若男女に伝わりやすく、かつ深く考えないでも笑えるという利点はあったかと思います。ただ、やはり選曲が審査員にウケるかどうかという点でやる前からあった不安が的中した感じでした。

9番手 くらげ:87点
女心が分からないネタで一気に頭角を現して数年が経ちましたが、システムとしてはそこまで変わってないんですよね。何でお前が知ってるんだよ、という裏切りの笑い。丁寧に振って単語の順番をしっかり練っているなという印象。ただミルクボーイに似てると言われる懸念はありましたね。

10番手 モグライダー:88点
ともしげがどうトチろうが芝の操縦力一つでそれが笑いになる。そういう意味でもピンかパーの結果しか出ないだろうと思っていました。ともしげの仕上がりが良すぎたというのは見やすさ的には良かったんでしょうが、爆発的な笑いには繋がらなかった印象ですね。

さてここまでの個人的な順位としては
ヤーレンズ 95点
真空ジェシカ 94点
さや香 93点
マユリカ 91点
令和ロマン 90点
カベポスター 89点
モグライダー 88点
シシガシラ、くらげ 87点
ダンビラムーチョ 86点
でした。最初に基準として令和ロマンに90点をつけたことによって、80点台が5組と例年より多くなりました。
こればかりは仕方がないですね。

≪最終決戦≫
1番手 令和ロマン
1本目とは打って変わってコント漫才。令和元年の単独でやったネタが源流で、21年にフォーマットそのままに題材を変えて今年完成させてきた感じですかね。本当に彼らは引き出し何個あるんだと驚かされますし、お笑いをとことん分析し尽くした結果生まれた新時代の漫才師ですね。

2番手 ヤーレンズ
こちらは大きくフォーマットを変えないというか、自分たちの強みを存分に活かしてきましたよね。ネタ自体は去年の敗者復活でやったものですが、1本目ハマった以上ここは変える必要もないですしね。そりゃウケるよなと。

3番手 さや香
まさかの原点回帰。新山ボケスタイルで中身をガラッと変えてきた。正直戸惑いが強すぎて、言ってることがスッと入って来なかった人も多いと思う。信念を貫いたと言えばカッコ良いが、あくまで大会として評価を下すとするなら脱落と言わざるを得ない。

個人的には2本合わせ技ならヤーレンズ。トップバッターというのと引き出しの多さなら令和ロマン。この2組なら納得でした。
結果としては接戦の4-3で令和ロマン。新時代の若手漫才王者誕生となりました。

≪全体を振り返って≫
最初にも言いましたが、「爆笑が、爆発する」とテーマを掲げた中では正直「全体的にほんの少し物足りない」大会になったのは否めないのかもしれません。それはM-1のレベルが下がったとかではなく、漫才師全体の底上げだと思います。準々決勝敗退組、敗者復活組でも決勝に上がれたんじゃないかというコンビはたくさんいました。決勝で振るわなかったコンビも実力が無かったわけではなく、順番だったりチューニングのちょっとした誤差もあったんじゃないでしょうか。
そしてもうミルクボーイのような存在は現れない大会になってしまったんじゃないでしょうか。これだけ事前情報に溢れ、漫才師も増え、大会が迫るにつれてヒートアップする予想や応援。
もちろんそれらには良い点、悪い点共にあると思います。それらは個人が思い思いに考える自由があるわけです。そしてそれをどこまで吸い上げるかは運営が考えることですから。それの一つに敗者復活戦のルール改正があったのだと思います。
M-1には進化を続けてほしい。それを見続ける我々も良心を持ってM-1を、漫才を、お笑いを愛し続けていきたいと、改めて感じました。
8540組の漫才師、そしてそれを支えたM-1運営の皆様方。
今年も本当にお疲れ様でした。

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