最近の記事

何度も読み返したい世界の短編小説たち

 これから挙げる作品のリストには、偏りがあることをあらかじめ認めざるを得ない。このリストにはチェーホフもなければ、ヘミングウェイも宮沢賢治もいない。タイトルにあるように、これらの作品群は、現時点の私の個人的な参照点であるとともに、行き詰まったときに道を照らしてくれるガイドのような作品たちなのだ。泣く泣くこのリストから切り落とした作品もいくつかある。ラープチャルーンサップ「観光」、小島信夫「アメリカン・スクール」、芥川龍之介や残雪、テッド・チャンの諸作品など、深い感銘を覚えたも

    • 政治家の合理的な選び方はあるのだろうか

       安倍政権に対するインテリ層と大衆の評価の乖離 安部政権ほど知識人から蛇蝎のごとく嫌われた政権が、日本の政界史にどれほどあったのだろう。現代日本の代表的な知識人の多くが、安倍政権に批判を続けてきた。政治学者の白井聡が、安部前首相の退任会見に松任谷由実が寄せた共感の言葉に、SNSで「早く死んだほうがいい」と投稿したことが、大炎上したことも記憶に新しい。  にもかかわらず、安部政権は大衆から盤石の支持を得て、長期政権を完走した。これは奇妙なことだ。思い返してほしいが、小泉政権以

      • 世界文学と日本文学の関係性

         世界文学=大きな(超国民的な)コンテクスト 小説家ミラン・クンデラは『カーテン』において、次のように語っている。  ある芸術作品を位置づけることができる、二つの基本的なコンテクストがある。自国民の歴史(これを小さなコンテクストと呼ぼう)か、その芸術の超国民的な歴史(これを大きなコンテクストと呼ぼう)かの、どちらかだ。  「世界文学」とは、この「大きなコンテクスト」に位置づけられる文学作品の一群を指す。作品の重要度は如何なる文脈(コンテクスト)において眺めるかによって、異

      何度も読み返したい世界の短編小説たち