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SUVの人気を考察する

画像は、トヨタのWEBサイトからの引用です。
(引用元 : https://toyota.jp/news/suv/?padid=carlineup_suv
人気が高いクルマの車型は、時代と共に変遷してきましたが、現在人気が高いのがSUVです。例えば、トヨタではSUVのラインナップが最も多く、10車種に達しています(RAV4とRAV4PHEVは同一車種としてカウント)

国内で人気が高い車型は、概ね以下のように推移してきました。

1980年代 :
ソアラやマークⅡ三兄弟を始めとするハイソカーと、プレリュードやシルビアなどのスペシャリティカーが大人気

1990年代 : 
パジェロを始めとするクロカン四駆と、エスティマやオデッセイなどのミニバンが大人気

2000年代 : 
フィットやプリウスなどエコカーが大人気

2010年代 : 
タントなど軽自動車のスーパーハイトワゴンが大人気

2020年代 : 
SUVが大人気で軽自動車から大型車まで、数多く誕生!

世界市場でもSUVは大人気で、ロールスロイスやベントレーを始めとするラグジュアリーブランドもSUVをラインナップしています。
スポーツカーメーカーも、ポルシェを皮切りにアストンマーチンやランボルギーニ、マセラティに加えて、ついにフェラーリもプロサングエで参入しました。

クルマのカッコ良さ

何故SUVがこれ程の人気を集めているのでしょうか。
推測される理由のひとつが、カッコ良さと実用性の両立。
昔から「カッコ良いクルマ」はサーキットを走るレーシングカーでした。
背が低い=空気抵抗が少ない=速く走れる ということから、レーシングカーはボディが薄く車高も低くなっています。
かつて、スポーツカーやスポーツカーっぽい背の低いスペシャリティカーや4ドアハードトップが人気だったのは、背が低いとカッコ良いという価値観からだと思われます。

一方、ダカールラリーに代表されるクロスカントリーラリーも人気が高く、砂漠を疾走する姿はカッコ良い。市販車ベースで参戦しているランドクルーザーもカッコ良いけれど、本格的なものは燃費が悪いし取り回しも大変。
個人で所有するクルマにはそこまで必要なくて、乗用車と同等の燃費や取り回しの良さが欲しい。
それに加えて4人がゆったり乗れる室内空間があって、荷物もたっぷり積みたい。

そんなニーズにピッタリハマるのが、SUVではないかと思います。

クルマの室内高

かつての4ドアハードトップは、背が低くてカッコ良いけれど、室内高が低くて後席は我慢を強いられました。
しかし、SUVは背が高くてもカッコ良く、通常のセダンより室内高が高くてゆったりしているので、カッコ良さを求めるのに我慢は不要。

参考までに、クルマの室内高は、セダンが概ね1,100mmくらい、SUVが1,200mmくらい、ミニバンが1,300mmくらいが一般的で、軽自動車のスーパーハイトワゴンだと1,400mmくらいとなります。
運転手はセダンの室内高でもあまり気にならないけれど、同乗者は室内高が高い方がゆったり快適に過ごせると思います。

加えて、目線が高いと運転がし易いし、SUVの多くはボンネットも視界に入るので、路肩へ寄せるなどの取回しも良好。

すなわち、実用性とカッコ良さを両立させているのが、SUVだと言えそうです。

SUVのネガティブな要素

SUVのネガティブな要素は、走行抵抗の大きさに起因する効率の悪さです。
まず、車重。車高が高く車体の体積が大きくなることから、車重が重くなります。同一プラットフォーム同系列車種のセダンとの比較では、例えばカローラセダンのハイブリッドAWD車が1,440kg、カローラクロスのハイブリッドAWD車では1,510㎏と4.8%重い値となっています。
また、空気抵抗はいわゆるCD値という係数×前面投影面積なので、背が高いSUVはCD値が小さくても掛算で効いてくる大きな面積により空気抵抗が大きくなります。同じくカローラでは、セダンが幅1,745mm、高さ1,435mmなので、幅×高さは約2.50㎡。カローラクロスだと、幅1,820mm、高さ1,620mmなので幅×高さは約2.95㎡となり、前面投影面積が18%ほど大きい値となります。
更に、SUVのタイヤはセダンより大径で太く、同じくカローラではセダンの上級グレードのタイヤが 215/45R17 なのに対して、カローラクロスの上級グレードでは 225/50R18 となり、幅で10mm、外径で約50mmの違いがあります。
すなわち、SUVはクルマの走行抵抗の3大要素である、車重と空気抵抗と転がり抵抗の全てがセダンに劣っています。

SUVは実用的でカッコ良いけれど、燃費性能にはネガティブな要素ばかり、ということです。

まとめ

自動車メーカー側の視点でも、SUVは通常の乗用車とプラットフォームを共有できるので生産設備はそのまま使用可能だし、世界的に進む電動化に対しても、床下のバッテリースペースを確保しやすいので適しています。
しかも、通常のセダンより付加価値が高く、10~20%程度高い値付けでもお客様に喜んで買っていただけます。
すなわち、ユーザーとメーカーの双方にとって嬉しさがあるのがSUVというボディタイプなので、世界的な人気は今後も継続していくと考えられます。

しかしながら、「燃費が悪くなる要素ばかり」というSUVの物理的なネガは自動車による環境負荷が問題視されている今の時代において、見過ごすことはできません。

今後は、SUVのネガを少しでも消していくことが求められていくのではないかと予想しています。


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